発表要旨(2017年度大会)
ネギの露地栽培を取り上げてLCAを実施し、圃場ごとに異なる施肥管理や収穫量が環境負荷量に及ぼす影響を把握した。埼玉県深谷市のネギ農家への現地調査から取得したデータを分析した。結果として、ネギの露地生産に伴うGHG排出量では、単位面積当たりまたは単位収量あたりで2-3倍程度の差があることが分かった。
大豆モヤシを種々の温度で栽培し、イソフラボンとオリゴ糖を定量した。イソフラボンは、生育過程で種子と比較して3倍に増加した。オリゴ糖は1/10に減少したが、20 ℃栽培で残存量が多かった。オリゴ糖分解阻害剤を添加しても胚軸は伸長したことから、大豆モヤシの成長にオリゴ糖が必須ではないことが示唆された。
ペン型の日射測定器と全方位型の光合成光量子密度(PPFD)センサーをマンゴー群落内に設置し、日射量の減衰状況を測定した結果、第1伸長節上部の日射量を100 %とした場合、第2伸長節で60 %程度、第3伸長節では40 %以下に減衰することが明らかになった。また、減衰割合は日射量よりもPPFDの方が大きくなる傾向が示された。
園芸用パイプハウスを対象として、材料・幾何学的非線形性を考慮した有限要素解析を行い、雪荷重による塑性領域を含めたハウスの崩壊過程を再現し、その崩壊メカニズムについて考察した。また部材接合部境界条件や種々の補強方法、荷重条件による崩壊性状の差異、終局耐力の算出から現行の設計指針の妥当性を検討した。また、既往の二次元フレーム解析との比較から妻面と桁行直管による三次元効果を示した。
園芸用パイプハウスを対象として、材料・幾何学的非線形性を考慮した有限要素解析を行い、風荷重による塑性領域を含めたハウスの崩壊過程を再現し、その崩壊メカニズムについて考察した。ここでは変形に伴う風圧係数分布の変化を解析に組み込むため、数値流体解析と構造解析とを静的に連成させた繰り返し解析を行い、実被害性状を再現することに成功している。種々の補強方法の効果についても検討を行った。
日本の国土面積は、全世界のわずか0.28 %である。にもかかわらず、災害被害金額は実に11.9 %に上る。食糧生産拠点として財産であり宝でもある既存の施設を守ることがまず肝要だ。ハウスの強い、弱いはちょっとしたことで変わる。少し手を加えることで、強度は格段に上げることができる。
採光性改善を目的として構造、部材の改良を行った木質製園芸用ハウス(改良型木骨ハウス)の採光性及び内部環境を評価した。採光性は軽量鉄骨ハウスと同等以上(鉄骨比101 %)であることが示された。また内部環境の指標とた夏季のWBGT指数は軽量鉄骨ハウスよりも2.8 ℃低く、作業快適性に優れることが示唆された。
公称目合いが0.2~0.8 mmの無色と赤色の防虫網を供試した。縦方向が0.2 mmの目合いでは、タバココナジラミの侵入はなく、目合いが大きくなるほど直線的に侵入率が増加した。また、赤色防虫網は無色防虫網よりもタバココナジラミの侵入を抑制する効果がみられた。
- A09
目合いの異なる防虫網がタバココナジラミの侵入抑制に及ぼす影響
- 石井雅久(農研機構 農村工学部門)・山田麻佑子・清水美緒(日本大)・久保田健嗣(農研機構 中央農研)・土屋遼太・森山英樹・奥島里美(農研機構 農村工学部門)・都甲洙・佐瀬勘紀(日本大)
目合い0.2~0.8 mmの防虫網を供試し、タバココナジラミの侵入率を調査した。目合いが小さな防虫網ほど侵入率は低かったが、0.3 mm目合いでも侵入は認められた。
園芸施設向けの加振機能を有する防除網を提案し、その性能を評価した。実験の結果、提案した防除網は、既存防除網と比較して、コナジラミ類の通過率を半減しつつ、換気能力を維持できることを確認した。
遊休施設内において温泉排湯熱を利用したヒートポンプシステムを構築し、サツマイモの水耕栽培を行った。本研究では、これまでに構築した階層分離式水耕栽培装置を改良し、栽培ベッドの地中加温に加え、養液ベッドの冷却装置を追加し、その導入効果について報告した。
地域木質資源を構造材に利用したハウス(木骨ハウス)内に入射する日射量の計算を行った。散乱日射は一様散乱モデルと準直達日射を考慮したモデルを扱い、両モデルともに比較的精度良く推定できた。ハウス内全天日射量の屋外に対する割合は年平均61.4 %であった。
ソーラーシェアリングにおけるパネル下の光環境と作物収量について調査した。ソーラーパネル下の年間平均光量子量は7 mol m-2d-1であり、作物栽培は可能なレベルであった。また、ショウガの収量は慣行比95 %となり、農地転用の条件をクリアする結果が得られた。
中山間地域の棚田跡地を活用した石垣蓄熱ハウスを活用し、新たな園芸モデルの構築を試みた。標高の異なる石垣蓄熱ハウスの特性を比較し、暖房負荷軽減効果等を試算することで、立地条件に応じた栽培品目の検討が可能となった。
建設が簡便な半地下ハウスをつくば市に建設し、内部環境を実測した。12~2月の半地下ハウスの夜の気温は外気より平均で4.4 ℃高かった。日射透過率は0.50だった。測定データから放熱量、換気量を推定した。
農業用水の熱源利用に関する導入適地マップの開発を目的として、熱交換量の評価手法を構築しモデル地域に適用した。その結果、熱交換量は冷暖房ともに上流ほど大きく導入に適していることが明らかになった。また、土地改良区へのヒアリングより、農業用水熱の活用ニーズはあるが社会実装には課題があることが明らかになった。
- A17
開水路へのシート状熱交換器の設置方法と熱交換特性
- 後藤眞宏・奥島里美・三木昂史(農研機構 農村工学部門)・高杉真司・舘野正之・小間憲彦(ジオシステム)・木村繁男(小松短大)・小松信義(金沢大)
農業用水路などの開水路へのシート状熱交換器の設置方法について検討した。この結果、シート状交換器とエキスパンドメタルを一体化する方法により、熱交換量を大きく低下させることなく、熱交換器の約半分の費用で設置でき、さらに水路内流況への影響も少ないことが明らかになった。
- A18
熊本地震後における園芸施設の農業用地下水の水質調査
- 石井雅久(農研機構 農村工学部門)・古賀伸久・井原啓貴(農研機構 九沖農研)・田中誠司(熊本県宇城地域振興局)・奥島里美・森山英樹・土屋遼太(農研機構 農村工学部門)
平成28年熊本地震後における園芸施設の農業用地下水の水質変化の状況を、熊本県内5市、15地点を対象に調査した。その結果、多くの地点では水質の変化はなかったが、沿岸部や内陸部の一部では塩分濃度の上昇や水質が変化した地点があった。
導入コスト低減を目指して栽培用水確保が必要な圃場に、地下水を脱塩するRO装置を自作し導入した。導入後原水ECが3から5 mS/cmに上昇し、RO水製造量は減少した。
- A20
ナノファイバーを素材とする多層断熱資材の熱貫流係数の比較
- 川嶋浩樹(農研機構 西日本農研)・杉田博志(ナノマトリックス)・與那覇耕伸・河野彰良(東京インキ)・堀昌司(FPS)・井野晴洋(京都工繊大)
温室における冷暖房負荷を軽減する多層断熱資材の軽薄化を図るため、ナノファイバーを中綿とする多層断熱資材を試作した。従来の多層断熱資材と比較して、大幅に軽薄化され、十分な断熱性を有すると考えられた。
燃油費低減対策として、熱貫流率の小さい高断熱資材(布団資材)をハウスの保温性能の向上のために取り入れている。近年、軽量化を図った国産品が開発され始め、性能も十分ではあるが、普及初期段階であり施工事例が少ない。本報告では、平張りで片寄せ方式を採用した場合の施工方法と運用・評価を行い、改善策の提言を行う。
- A22
小規模ハウス向け薪ボイラーの暖房特性と薪投入量の検討
- 千葉彩香(岩手農研)・山田修(岩手農研/岩手中央普及セ)・石村眞一・小国克也(石村工業)・水戸谷剛・赤堀卓央・佐藤良・田上栄司(東日本機電開発株)・太田祐樹・有馬宏(岩手農研)
園芸用薪ボイラーについて、薪重量から燃焼時間を予測する目安及びハウス内外気温差から薪必要量を判断する目安を明らかにした。
実証農場において搾乳、生乳冷却、家畜管理などの電力エネルギー利用調査および試作導入したCO2ヒートポンプによる生乳の熱回収システムの導入効果について検討した。システム導入前後を比較すると年間投入エネルギー量は39 %(71 GJの削減)、同ランニングコストは14 %(124千円の削減)、CO2排出量は20 %(3830 kg-CO2eqの削減)の削減が可能であると試算された。
自動給餌機と餌寄せ機の導入が自動搾乳システムの利用性に及ぼす影響を調べた。牛群の平均搾乳回数、平均日乳量、平均搾乳速度には大きな変化はなかったが、失敗回数は減少し、リリース回数も1回増えた。給餌、餌寄せの回数増加により、搾乳ピーク時間帯の待機頭数は減少し、全体に日内で平準化した。
- B03
養豚農家の密閉縦型堆肥化装置排気中のアンモニア回収と利用第1報-気中アンモニア濃度の日内変動およびアンモニア回収装置の処理性能の検討-
- 小島陽一郎・中久保亮(農研機構 畜産部門)・天羽弘一(農研機構 革新工学センター)・川村英輔(神奈川県)・石田三佳・阿部佳之(農研機構 畜産部門)
本研究では、養豚農家の密閉縦型堆肥化装置から排出される排気中のアンモニア(NH3)ガスを除去・回収することを目的とした。その結果、1661 ppmの排気中NH3ガスを除去し、窒素濃度6.18 %の回収液が生産された。
堆肥の発酵状況に応じて通気のON-OFF時間を変動させるON-OFF時間変動型制御による間欠通気式堆肥化システムの実証開発を行い、その評価を実規模試験にて検討した。その結果、長時間の高温と高い水分減少率から、適切な堆肥製造が可能であり、且つ、電気代及びCO2の大幅な削減が可能であることが示された。
開放撹拌発酵方式を用いた造粒方法は、発酵過程で造粒を行う方法であり、製造コストが安い上、製品が粒状であることから、散布時にブリッジを起こしにくいというメリットがある。しかし造粒条件が明確ではなく安定した製品を作りにくい問題がある。本研究では、安定した造粒を可能にするため、ロータリー刃形状及び原料水分が鶏ふんの造粒に与える影響について小型造粒機を用いて検討した。
2次空気量を多くする改良を行ったバーナーに、汚泥堆肥と木チップをそれぞれ167.5 MJ/hの合計335 MJ/h供給し、空気供給量と排ガス特性の関係を明らかにする試験を行った。その結果、火炎温度720 ℃、CO濃度61 ppmを達成したが、NOx対策が必要であることがわかった。
- B07
小規模循環型酪農のためのバイオガスユニットの開発と実証試験
- 矢野晃輔・井原一高・豊田淨彦(神戸大)・弓削太郎(レチェール・ユゲ)・Suchon Tangtaweewipat(Chiang Mai Univ.)・梅津一孝(帯畜大)
畜産施設においてバイオガスを生産および利用する取り組みが広がりつつある。本研究では小型のバイオガスユニットを試作し、実証試験により温度維持方法とバイオガス生成速度を検討した。
敷料が多量に含まれるソリッド状のフリーバーン方式の排せつ物を湿式メタン発酵と堆肥化で処理するシステムを開発するため、排せつ物をメタン発酵消化液等で溶解させた後の固液分離特性を調べた。処理量がスラリー排せつ物と比較し1 m3h-1程度下がるが、固形分は副資材を用いずに堆肥化可能な含水率まで落とすことが可能であり安定的にふん尿のECを低下させることができた。
家畜糞尿中の抗生物質耐性菌の存在が問題となっており、嫌気性消化による処理が検討されている。本研究では中温メタン発酵による乳牛糞尿中の耐性菌低減における残留抗生物質の影響について検討した。10 mg/LのCTC添加による顕著な影響は認められなかった。
本研究は微生物燃料電池の有機物除去性能に着目し、ベンチスケールの装置(容積5 L)を用いて、有機物除去性能が高く、汚泥の発生量が少ない微生物燃料電池を開発することを目的とした。馴養2週間目(4300 Ω抵抗接続時)において、廃水ごとのBOD除去率の平均は、養豚廃水で64.7 %、野菜ジュース工場廃水で80.0 %、ビール工場廃水で89.6 %となった。
乳牛ふん尿メタン発酵消化液分離固分の敷料利用時の衛生状況について大腸菌を指標に調査した。その結果、①固分の大腸菌数は分離直後の103から4回切返しでほぼ検出限界以下となった。②牛床敷料の大腸菌数は試料の約9割が103~105であり、大腸菌数と水分割合には、気温の上昇した5、6月に正の相関が認められた。
LPCV方式の閉鎖型次世代牛舎において初期コスト低減に向け、使用する換気扇台数を約40 %減らした場合の防暑効果を検討した。その結果、猛暑ではなかった2016年の夏季においても既存の開放型牛舎と比較し、呼吸数の低減と乳量の増加が認められた。
エアカーテンとモニタを開閉制御により冬期舎内気温を温和な状態に保つ換気システムが導入された。暑熱期換気回数は10回/hと少なかったが舎内気温は自然換気牛舎と同じであった。寒冷期舎内気温は外気温の影響なく約5 ℃以上で最低気温も1 ℃以上で制御された。換気量は2回/hと少なかった。開閉設定温度により冬期換気量の増加が可能であった。
畜舎内バイオエアロゾル濃度制御に用いる広範な舎内空間を測定可能なエアロゾル簡易センサーの開発に向けてチャンバー試験での光透過型及び光散乱型センサーの検討を行った。光透過型はエアロゾル濃度検知が困難であったが、光散乱型は光散乱角度105°の条件で粒径0.3~10.0 μmのエアロゾル濃度を検知可能であった。
豚は発情により体表面温度が変化する。本稿ではサーモグラフィによる豚の計測から、体表面温度の自動抽出を試みる。可視画像から機械学習による認識器を構成し、豚認識に必要な特徴量を自動取得した。さらに、抽出した豚領域から熱画像を併用した豚の輪郭抽出により、体表面温度の自動取得を行うことができた。
本研究ではコロナ放電により、エチレンの分解試験を行った。副産物であるオゾンを分解し、活性酸素を生成するUV-C照射を併用することで、オゾン濃度低減とエチレン分解効率向上を図った。エチレン分解効率はUV-Cランプを併用した印加電圧6.2 kVが最大となり、残留オゾン濃度もUV-C無照射に比し低減した。
本研究ではコロナ放電によりプラズマを発生させてPenicilium Italicumの殺菌を試み、印加電圧ごとの殺菌効果の評価を行った。乾燥操作を行った菌を空中に浮遊させ、殺菌装置内に流入させ、電極に5~8 kVの電圧を印加しプラズマに曝露した。印加電圧5 kV以外では生菌数が有意に減少し、殺菌効果が認められ、7 kVの時に最大の殺菌効果が得られた。
近赤外線分光分析法によりエダマメの遊離アミノ酸含量とスクロース含量の評価を試みた。その結果、従来示されている検量線は現行機種(InfratecNOVA、FOSS)でも適用できることが示された。次年度以降の生産現場での評価の際にはBiasの調整をすることで、より精度高く測定できると考えられた。
市販オリーブオイルの蛍光分光特性から、トコフェロール、クロロフィル、脂質酸化物のスペクトルピークが確認され、それらによるエクストラバージンオリーブオイルとピュアオリーブオイルの識別および酸化進行の検出の可能性が示された。
各国の外食産業及びそのセントラルキッチンなどを訪問して、主に一次加工や調理場での加工技術の実態を視察するとともに、関係者から求められている技術ニーズの把握や現場責任者や消費者が求めている改善点などについての調査を行ない、現状と課題を明らかにした。
乾式ジェットミルと湿式メディアミルを組み合わせて平均粒子径サブミクロン(600 nm前後)の米粉製造条件を見出し、乾式粉砕したマイクロスケール米粉(平均粒径: 6~111 μm)とは吸水性や消化性が大きくことなることを明らかにした。
トウモロコシ子実の米麦大豆用循環式乾燥機による乾燥試験を行い、現状でトウモロコシ子実を生産する際に参考となる情報を提示することを目的とした。その結果、除水量1 kgあたり消費熱量は5.5~6.0 MJ/kgで、文献値と同等であった。大豆用の水分計を使う際はしわ粒防止機能により点火しない場合があり、小麦設定でのタイマー運転であれば途中での設定変更が不要となる。
我が国小型籾摺り精米製品の途上国BOP市場での普及は社会的意義が高い。従ってシンプルなデザインと構造で生産コストを削減する「簡易傘の発想」と、現地調査によるユーザの価値観やニーズの理解、「デザイン推論」モデルとユーザ・シミュレーションによるコンセプト共創が、プロダクトデザインの基本となる。
園芸栽培施設における地表伝熱量を体系的に把握することは、施設園芸の更なる省エネ化のため重要である。本研究では、4県9ハウスでの地表伝熱量の観測データの比較を通じて、栽培形態や立地により地表伝熱量の大きさが異なることを示した。今後、更なるデータの収集と解析を進め、立地や栽培形態に応じた地表伝熱量の評価手法を新たに提案することを目指す。
省エネルギーや農産物の高品質化の観点から、潜熱蓄熱材(PCM)の農業分野への用途拡大は有効と思われる。本研究では実際の栽培環境における蓄放熱特性を把握し、効率的な設置のための基礎資料とするため、栽培環境と同一の温度条件の下、潜熱蓄熱材(15 ℃で相変化)の設置方法別の蓄放熱状況を調査した。
徳島県特産春夏ニンジンのミニパイプハウス栽培では、温度管理が難しく安価で正確に測れる温度センサが望まれている。日射量センサを兼ねた小型太陽電池を用いた独立電源により日射量に応じたファン駆動制御を行い、低価格で放射の影響を抑えて温度測定精度を向上させる方法を検討し、実験結果からその効果を確認した。
トマト栽培パイプハウスにおける、夏季の高温対策として、ファン、天井カーテンおよび一流体ミストを利用した環境制御を検討した。高温時にミストを適切に噴霧することで、ハウス内温度の低下効果によりトマト収穫量が増加した。また、冬季の保温対策として、放熱が大きな天井部のみを3重被覆とした場合の保温性能を確認した。
夏季のホウレンソウ施設栽培を対象に、自動環境制御温室と手動制御温室において、熱収支の比較を行い、自動環境制御温室の昇温抑制効果を検証した。その結果、遮光及び葉面散水、細霧冷房などによる昇温抑制効果は自動環境制御温室の方が大きく、全栽培期間の平均温度は、手動管理温室と比較して、自動環境制御温室が有意に低くなった。
循環扇を5台または3台、温室内に配置し、暖房デグリーアワーと重油消費量の関係を循環扇なしと比較した。その結果、循環扇を使用した場合の重油消費量は、17~21 %増加した。温室内の平均気温が高くなったことが主な要因であると考えられる。
防風ネット背後の木骨ハウスの風圧係数を風洞実験で求めた。風上側側面の正圧抑制のため、木骨ハウスと防風ネットの距離は木骨ハウス棟高の1.5倍程度が望ましい。実験に使用した防風ネットに関しては、防風ネットの高さは棟高に近い方が風上側屋根面における負圧の緩和が期待できる。
促成ナス栽培において竹チップマルチ設置による畝土壌の保温効果を評価するため、CFDツールによる畝土壌地温分布の予測方法を検討した。その結果、CFDツールは竹チップマルチを設置した畝土壌地温分布を予測するには有効な手段であり、ナス株元付近の畝中央部上面に竹チップマルチを設置する場合、保温効果が高い適正な設置量は5 t/10 aであることが推定された。
農PO一重1層の400 m-2トルコギキョウ栽培ハウスの温度、灯油消費量、日射量等を測定・分析し、被覆面積当たり暖房負荷係数3.75 W/(m-2∙K)を導いた。さらに、バイオマス(バイオガス、作物残さ固形化燃料、木質チップ)の燃焼熱利用で暖房を行う同型ハウスの団地を想定し、設定する化石エネルギー削減率の条件を満たすための団地の規模、木質燃料の必要供給量等を推計した。
夏季の温室内は人体への熱負荷が大きく、熱中症になりやすい。熱中症予防対策の1つに吸汗速乾性衣服の着用がある。そこで夏季の温室内で一定の作業負荷を作業者に与え、衣服素材及び形状が作業者に及ぼす影響について検討した。その結果、吸汗速乾肌着は綿肌着よりも快適性が高く、女性用のブラタンクトップはワイヤータイプよりも着用感評価が低いことが明らかになった。
- P11
バイオマスボイラーによるハウス暖房システムの開発-プログラムリレーZENによる自動制御-
- 山下善道(農研機構 東北農研)・竹倉憲弘(農研機構 中央農研)・金井源太(農研機構 東北農研)・薬師堂謙一(農研機構 九沖農研)・安東赫(農研機構 野菜花き部門)
ロータリーキルン式バーナーを核とした温水タンクを備えるバイオマスボイラーによるハウス暖房システムを構築し、安価なプログラムリレーZENによる制御を検討した。熱交換器温度、温水タンク上部・底部温度を基に木質ペレットの燃焼制御、並びにハウス温度制御を目的とした放熱器による温風制御が可能であった。
- P12
バイオマスボイラーによるハウス暖房システムの開発-システムの概略と暖房試験結果-
- 竹倉憲弘(農研機構 中央農研)・山下善道・金井源太(農研機構 東北農研)・薬師堂謙一(農研機構 九沖農研)・安東赫(農研機構 野菜花き部門)
ロータリーキルン式バーナーを核としたバイオマスボイラーによるハウス暖房システムを開発した。本システムは温水タンクを備えたハウス暖房システムであり、システム一式で同時に複数ハウスを暖房することで効率を上げられるとともに温水供給量で暖房負荷の変動に対応できるため、小型バーナーでハウス暖房が可能である。
X線CTによる青果物の品質評価を検討するため、青果物の貯蔵試験を行った。CT画像から輝度値を抽出した後、輝度値のヒストグラムの特徴量と青果物の品質を比較すると相関がみられた。その結果、X線CTによる青果物の水分量や硬さの評価が可能となった。
4種のコンテナを用いてイチゴを香港へ海上輸送し、コンテナ選択が輸送後の果実品質に及ぼす影響を検討したところ、果皮色等においてコンテナによる差異が認められたが、損傷程度等においては差異が少なく、比較的多様なコンテナが利用可能であることが示唆された。
本研究は、イネを例に個葉光合成速度を測定し、光飽和点の有効性を検証するとともに、葉群光合成算出と日影解析から想定される乾物生産量の推定および、発電量の関係からソーラーシェアリング導入による農家の収入と農作物への影響を明らかにすることを目的とする。
畜舎の暑熱対策としてPVパネル設置の効果を把握するために、PVパネルの有無による屋根面への放射量や温度の変化について、屋根模型を用いた観測実験を行った。結果として、PVパネルを設置した試験区の屋根裏面の温度は、対照区に比べて5 ℃程度低かった。
営農型太陽光発電設備において、モーター駆動による太陽光パネル角度自動制御システムを開発した。METPV-11データベースによるシミュレーションの結果、①月1回のパネル角度制御と比較して、②週1回のパネル角度制御、③1時間毎のパネル角度制御、④1時間毎のパネル角度制御および曇天時パネル水平制御において、発電量はそれぞれ0.3 %、6.6 %、8.4 %増加した。
- P18
ステンレスパイプに付着した牛乳汚れの離脱と表面粗さとの関係
- 高藤穗里・井原一高(神戸大)・John Schueller(Univ. of Florida)・豊田淨彦(神戸大)・梅津一孝(帯畜大)・Hitomi Yamaguchi(Univ. of Florida)
乳製品製造業においてステンレスパイプは多用されている。しかし付着する牛乳汚れの頻繁な洗浄は環境負荷増大を招くことから、エネルギや洗剤に頼らない洗浄性向上が求められる。そこで、洗浄要素のうち被洗浄表面の粗さに着目し、表面粗さと洗浄性の関係を調べた。
チーズの熟成プロセス中に起こる様々な化学変化を複合的に捉えるために、蛍光指紋と近赤外吸収でチーズのモニタリングを行った。2種類の光測定をそれぞれ別に主成分分析した結果、主成分得点プロットには熟成度合いの違いが反映されなかったのに対し、情報を合わせて正準相関分析を行ったときは、正準2に熟成度合いを示す可溶性窒素割合の影響が現れた。
高齢化社会向けの機能性食品開発のために、培養を対数増殖期及び定常に分けて、EuglenaにALA及びEPA、DHA油をエステル化して炭素源(魚類脂肪酸、荏胡麻脂肪酸)として与えた。定常期に荏胡麻脂肪酸を基質にしたEuglenaの培養液からALA、EPA、DHAを同定できたが、魚類では、検出されなかった。
冷凍パン生地内氷結晶を新しい賞味期限の指標として評価するために、極低温ミクロトームイメージングシステムにより食パンの標準的な材料の配合による4段階のミキシングのファイナル生地を用い、-10 ℃と-20 ℃で24週間保存しながら、氷結晶を計測した。
アイスクリームのテクスチャーを解明するために、重量オーバーラン(重量OR)を測定、極低温ミクロトームスペクトルイメージングシステムによりミクロからマクロ気泡を計測し、その体積比による体積ORvを求め、アイスクリーム内のOR計測をした。
冷凍米飯の長期保存における品質を評価するために、極低温ミクロトームスペクトルイメージングシステムより、-20 ℃、12ヶ月間保存しながら1ヶ月毎に、氷結晶を計測した。氷結晶は、ミクロ(1.8 μm)から米粒の胴割れ箇所の水分浸透で生成されたマクロ(548.1 μm)まで計測された。
豚は呼吸器感染症により行動パターンの変化が報告されている。本稿では、カメラから行動パターンを判別し、その変化から健康状態の推定を目的とする。7種類の行動パターンを定義し、2週間の間手業で1日30分間の判別をした。結果として定義した7種類の行動パターンが観測され、より長時間の観測の必要性が確認された。
八幡平市内のビニールハウス堆肥舎に設置された鉄筋コンクリート製堆肥化槽にて、材料温度、堆肥舎気温・相対湿度、側壁・底面温度、材料の上面放熱、日射を測定し、熱損失を評価した。その結果、「堆肥舎」の熱損失は、夜間では「屋根のみ」の7割に抑制され、日中では同半分程度に抑制されていた。夜間は保温・防風の効果、日中はさらに日射の効果によるものと考えられる。
植物は光合成を行うことにより、根から様々な有機化合物を生産する。植物利用型微生物燃料電池とは、微生物がこの有機物と土中の有機物を分解する過程で生じる電子を電気エネルギーとして回収することで電気を生成するもので、本実験ではどのような植物の働きかけが微生物の活動の幇助を行っているのかを確立させ、発電の実用化を目的とするものである。
微生物燃料電池は、微生物が有機物の分解過程で生じる電子を回収し電気を得ることから、廃水処理との併用が考えられている。本実験では、乳酸菌や酪酸菌といった相性の良い発酵微生物を用いて、発酵力の強さを生かして発電効率の向上を目指した。結果、各菌を複合した方が単体よりも代謝反応が促進された。また、本実験で使用した乳酸菌は発電菌である可能性が示唆された。