発表要旨(2016年度大会)
全7農場の様々な形状の離乳豚舎を対象に空気衛生指標となる病原ウイルスを探索するため畜舎内の空気を採材して遺伝子解析を行った。飼養密度や豚舎構造に関わらず糞便由来の豚アストロウイルス、豚サペロウイルス、豚テシオウイルスは複数の農場で検出された。特に豚アストロウイルスと豚サペロウイルスは検出率が高いことから空気衛生指標ウイルスに適していると考えられた。
本研究では、堆肥発酵熱を利用して得られた温水を冬季の乳牛へ給与することの効果を明らかにするため、実規模施設での給与試験を行い、以下の知見を得た。1) 実験期間において、温水給与条件では、吸引通気排気により約15 ℃昇温した水を給与した。2) 温水を給与することによって、冷水給与条件に比べて、実験期間を通して実乳量が1 %の危険率で有意に増加した。
吸引通気式において、堆肥化ステージごとに通気を変えた条件で堆肥化過程を比較することを目的とした。評価項目を総合的に判断した結果、通気量30 L/(m3∙min)で1週目が連続通気、2週目が通気160分、休止80分の間欠通気、3・4週目が通気40分、休止200分の間欠通気という条件が最も良いと結論付けられた。
実用規模研究用として2000年から運転を行っている酪農学園大学BGPを対象に、エネルギー生産に関わる実測データを整理し、築16年目を迎えたBGPの運転経過を報告するとともに、エネルギー生産における懸案事項を明らかにした。
家畜糞尿に残留する抗生物質耐性菌の低減手法として嫌気性消化が検討されている。本研究では乳牛糞尿に残留する抗生物質が耐性菌低減に与える影響を検討した。その結果、残留セファゾリンは嫌気性消化中の耐性菌の選択的増殖に影響を与える可能性が示された。
- A-6
畜産廃水からの抗生物質除去のための永久磁石を用いた磁気分離装置の開発
- 高取恵里・井原一高・豊田淨彦(神戸大)・立嶋正勝(NEOMAXエンジニアリング)・酒井保蔵(宇都宮大)・梅津一孝(帯畜大)
永久磁石磁気分離装置を試作し、畜産廃水に含有する抗生物質の磁気分離を行った。SUS440C球を使用し0.6 Tの磁場を印加した条件において、最も高い抗生物質除去率が得られた。SUS440C球は飽和磁化が高いことから磁場勾配が拡大し、除去率向上に貢献したと考えられる。
窒素の測定では、近赤外分光法を用いた測定により十分な精度での定量分析が可能であること、リンの測定では近赤外分光法及びインピーダンス法を用いた測定により、十分な精度での定量分析が可能であること、カリウムの測定ではインピーダンス法を用いた測定により、行程の判断が可能であることが示唆された。
- A-8
道東酪農場の環境負荷と経営の実態-飼養密度と余剰窒素の許容値から考える-
- 佐々木美穂・津島小百合(北海道クボタ)・干場信司・猫本健司(酪農大)・加藤博美(北海道大)・前田善夫・森田茂(酪農大)
道東に位置する2町村の酪農家を対象とし、施肥標準を基本として、余剰窒素と単位圃場面積当たり飼養可能頭数の許容値を定め、これにより酪農家を4グループに区分し、経営実態の特徴を明らかにして提言を行った。
冬期間の牛舎内を温和な状態に保つため舎内温によりエアカーテンとモニタを開閉制御する新換気システムが導入された。牛舎内の気温は外気温の低下などの影響を受けることなく約5 ℃以上で維持され、最低気温も3 ℃で制御された。しかし、舎内湿度、炭酸ガス濃度が高く換気量が少なかったことから、エアカーテンとモニタの開閉温度設定を適切なものとする必要がある。
LCA手法を用いて閉鎖型プッシュ&プル横断換気牛舎を利用した酪農生産システムの温室効果ガス排出量を明らかにした。建設段階のGHG排出量は、横断換気牛舎で578 kgCO2e/(頭・年)、従来型牛舎で343 kgCO2e/(頭・年)であった。夏季の横断換気牛舎での換気扇利用に伴う電力由来のGHG排出量は、従来型牛舎に比べて2倍程度であった。
- A-11
都市型酪農場に設置したバイオガスユニットのスタートアップ
- 井原一高・矢野晃輔・豊田淨彦(神戸大)・弓削太郎(弓削牧場)・Suchon TANGTAWEEWIPAT(Chiang Mai Univ.)・梅津一孝(帯畜大)
各地で点在している少量のバイオマスのエネルギー化を目的とし、加温と攪拌機能を備えた発酵槽容積8 m3のバイオマスユニットを試作し、都市型酪農場でのスタートアップを試みた。
臭気規制の厳しい地域への堆肥脱臭の導入を促進するため、堆肥脱臭の微生物機能の強化・安定化、処理水噴霧による2次処理を検討した。アンモニアの硝化には高温硝酸菌添加堆肥やし尿汚泥堆肥の添加(5 %)が有効であった。溶液噴霧による2次脱臭処理では、オゾン水や乳酸100倍希釈などでアンモニアが18~63 %程度低減されたが、臭気センサーでは効果が見られなかった。
当研究室で開発した通気量自動制御堆肥化システムの使用が堆積物内部の反応に及ぼす影響を明らかにするために、堆肥内部の温度分布を解析した。その結果、システム利用による適切な通気量の設定は慣行の連続通気区よりも堆肥の温度分布を均一、且つ高温度に維持させ、それが有機物分解率や水分減少率の増加を引き起こす効果があることが明らかとなった。
堆肥の発酵状況に応じて通気時間のON-OFFを変動させる新たな間欠通気式堆肥化システムを開発し、その最適設定を検討した。その結果、新たな間欠通気式堆肥化システムは、制御の設定方法によって60分ON、60分OFFの間欠通気よりも堆肥の安全性、温室効果ガスの抑制、悪臭の低減、送風機稼働による消費電力の低減で優れていることが明らかとなった。
市販の塩ビパイプに小孔を多数開けて、ローダー等の機械を簡易に利用できる構造に改造した通気パイプを肥育牛ふん堆肥に刺突して堆肥化した結果、堆肥の水分の蒸発には差はなかったが、有機物、特に易分解性有機物の分解が促進され、堆肥温度が上昇した。
未利用の竹材から、野菜の栽培畝土壌の地温を上昇させる資材の開発を目的として、竹チップ堆積物の発酵温度に及ぼすチップ粒径(スクリーン径)および混合する副資材の影響を検討した。その結果、スクリーン径が小さい竹チップほど堆積中の発酵温度が高い傾向がみられ、副資材として米ぬかを20 %程度混合すると、石灰窒素の混合および竹チップのみに比べて高い発酵温度が得られることが明らかとなった。
我が国の施設園芸は化石燃料に大きく依存しており、近年の木質ペレット燃焼装置が市販されてきたがペレット燃料価格が高いという問題点がある。そこで、ハウス暖房機用の木質チップ定量供給装置を開発し、ロータリーキルン式バーナーで安定的に1000 ℃以上の燃焼温度を維持でき、排ガス中の一酸化炭素濃度が20 ppm程度、NOxも100 ppm程度と安定燃焼ができた。
微生物燃料電池において、より出力が得られるアノード電極の素材を見出すために5種類の金属繊維とそれらを炎酸化させたものについて検討した。従来型と比較し、出力密度はステンレス鋼、酸化ステンレス鋼が高く、コストを削減できる素材はステンレス鋼、酸化ステンレス鋼、酸化銅、42インバー、酸化42インバーであった。
80頭規模の閉鎖型プッシュ&プル横断換気搾フリーストール牛舎(次世代閉鎖型 Low Profile Cross Ventilation 牛舎)を栃木県のメガファームに建設し、従来の開放型牛舎の暑熱対策との比較実証試験を行った。従来型よりも有意に熱負荷は軽減され、呼吸数の低下、乳量の増加が認められ、夏季の暑熱負荷に有効であることが示された。
微生物燃料電池のアノードは微生物から電子を受け取る電極であり、アノード素材の改良は出力向上に直結する重要なテーマである。本研究は、高出力な装置の開発を目指し、様々な素材のアノードを検討した。その結果、炎で酸化させたステンレス鋼アノードは既存のアノード(カーボン系)よりも高い発電性能を示すことを発見したので報告する。
ユリ栽培ハウスにおいて、水平方向に埋設した採熱チューブを熱源とするヒートポンプの、夜間冷房の能力などについて検討した。その結果、採熱面積を栽培面積の3倍確保した場合は20 ℃設定の夜間冷房を問題なく行うことが可能であり、処理前後の地温変化も小さく実用性が高いことが示された。
東北地方沿岸において、空気熱源および水熱源(地下水・地中熱)ヒートポンプの暖房特性を比較した。夜間の気温が低い場合、空気熱源ヒートポンプは室外機で除霜運転が頻繁に起こり、室内機の吹き出し温度が変動したが、地下水熱源および地中熱源のヒートポンプは安定的に暖房することができ、寒冷地での優位性を確認できた。
宮城県亘理町において、従来のパイプハウスと新設の大屋根型温室の室内環境とエネルギー利用特性を比較した。パイプハウスは氷点下の気象条件でも、大屋根型温室と比べて低コストでイチゴの生育適温に制御できるが、夜間の気温や日中のCO2濃度は大屋根型温室よりも低下するため、イチゴの生育や収量に影響を及ぼしていると考えられる。
- B-4
夏期高温期における大型フェンロー型温室の高温抑制に関する検討
- 石井雅久(農研機構 農村工学部門)・今村香織(大分県農林水産部)・木村真美・玉田直正(大分県南部振興局)・森山英樹・奥島里美・林真紀夫(農研機構 農村工学部門)・佐瀬勘紀(日本大)
大型温室において自然換気、遮光、細霧冷房を組み合わせた高温抑制技術を検討した。妻窓の開放は周辺の気温を低下させるが、その効果は妻窓からの距離とともに減少し、気温は風下に向かって上昇した。一方、細霧冷房は自然換気よりも気温が低く、気温むらも小さかったが、外気温以下にはならなかった。
スリークォーター型温室のコンクリート基礎部から熱が漏れており、基礎部に発泡スチロールを張り付け断熱強化を図ることで、暖房コストを削減できることが明らかになった。本法はコストパフォーマンスに優れるため、経営上の導入メリットが得られると考えられた。
多層断熱資材を活用することによって温室暖房時のヒートポンプによる消費電力量および灯油燃焼式暖房による消費燃油量は慣行被覆資材より35 %以上削減できた。温室内の光量はやや減少したが、トマトの収量に影響はみられなかった。
酸化ステンレス鋼アノードを組み込んだ微生物燃料電池を対象とし、実汚水を含む様々な培地による発電について検討した。実汚水である畜産廃水からの発電が可能であることがはじめて確認された。酢酸やタンパク質を多く含む培地は発電に適しており、脂質を多く含む培地は発電に適さないということが示唆された。
微生物燃料電池のカソードにカーボンペーパーを使用した時の最適な白金触媒添加量について検討を行った。その結果、最大出力密度が最も高いのは、触媒塗布量4.0 mg/cm2であったが、出力及びカソード費用を考慮した場合、最適な触媒塗布量は、2.0 mg/cm2であることが明らかとなった。
本研究では、農業用水の熱源利用を想定した導入適地評価手法の開発を目的として、水路水温や水路流速の時空間変化に係る簡易推計式、水路流速等からシート型熱交換器による熱交換量への簡易推計式を作成した。また、導入適地の評価指標である熱交換量について空間分布を予測した結果、上流ほど熱交換量が大きく導入に適していると考えられた。
廃棄物処理施設からの廃熱を利用する農業生産システムを構築することを目的とした。廃熱の利用先として、トマト温室栽培、トラフグの養殖を選定し、これらに必要な熱量の試算を行った。年間必要熱量は5.29 TJであり、359 t-CO2の削減が期待できると示唆された。
流通販売過程でのニンジンの黒ずみ症の発生条件の検討を目的に、6地域の収穫後から市場までの調査と、各施設から出荷した際の黒ずみ症発生状況の調査を行った。ニンジンは収穫当日に洗浄選別を行い、真空予冷で出荷時の温度を10 ℃以下とし、流通販売過程の温度も10 ℃以下に保ち、包装等により乾燥を抑制することで黒ずみ症発生を抑制できる。
黒ずみ症とポリフェノール、ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)活性の関係を調べた。保存中にポリフェノールとPPO活性は増加したが、黒ずみ症との相関は弱く、黒ずみ症と質量減少率に相関があった。黒ずみ症は乾燥に伴う細胞内区画の破壊喪失によりポリフェノールとPPOの接触で発生し、ニンジンを包装し乾燥を防ぐと抑制出来る。
水耕コマツナに電解水素水が与える影響について検討した。4倍希釈培養液を用いた湛液栽培試験、2倍希釈培養液を用いた湛液栽培試験、葉面散布による酸化ストレスへの影響の検証を行った結果、培養液への適用で窒素の吸収効率が上昇する可能性が示唆された。葉面散布によるコマツナの酸化ストレス緩和作用も期待される。
夏季の温室内は人体への熱負荷が大きく、熱中症になりやすい。作業時の快適性を向上させる1要因として衣服がある。そこで温室内の作業環境に適した衣服素材を明らかにし、作業の快適化や熱中症予防を研究の最終目的とした。本報では夏季の温室内作業者の着衣の現状を把握するためにアンケート調査を行った。着衣の形状や重ね着枚数などは性別や年代によって違い、着衣と作業中の症状に関連性がある事が示唆された。
夏秋期の園芸施設内作業は、高温環境下で行われているため、作業者への負担が大きく、改善が求められている。ファン付作業着と機能性繊維素材下着の組み合わせは、作業者の暑さを軽減するために有効であった。また、施設内で高圧細霧冷房を併用することで、さらに作業者の暑さが軽減した。
パイプハウスに対するタイバーの適切な設置位置の実証を目的に、載荷試験を行った。タイバーの設置位置は、f/4、f/8、非設置としたところ、f/8で座屈荷重が最も大きくなり、軒部と肩部の変位は最も小さくなった。また、タイバーとアーチパイプの留め部材は、自在Tバンドが望ましい。
- B-17
地域木質資源を利用した園芸用ハウスの普及への取組み
- 太田祐樹(岩手農研セ)・熊谷秀明(木楽創研)・千葉彩香・鈴木朋代・藤尾拓也・山田修(岩手農研セ)・吉越恆・松田周(農研機構 西日本農研)・有馬宏(岩手農研セ)
震災からの復興における周年雇用型農業の取り組みにおいて、岩手県産木材を利用した木骨ハウスを開発しその導入を進めている。園芸施設としての普及を前提に、耐候性ハウスの基準を有する100坪単棟を基本に設計し、設置にあたり建設が容易である、自家施工が可能である、長期間の使用を想定した場合、採光性、耐用年数(水分の影響、耐朽性)が十分である、その他として木骨ハウスならではの利点は何かを明確に提示し普及拡大を狙う。
地域木質資源を利用したハウス(木骨ハウス)の影面積を算出するプログラムを作成した。6月21日と12月21日の10時における東西棟の影の分布を調べたところ、地表面上の影の面積率は6/21 10時が31.4、12/21 10時が28.6 %であった。
100坪ハウスにおいて、薪投入容量0.6 m3の薪ボイラーを用いたハウス空気加温と温湯による局所加温の効果を調査した。空気加温の効果は平均12.8 ℃となり、培地やクラウン温度を上昇させるのに十分な温湯を作成できた。薪ボイラーの平均発熱量は51~74 kWhと試算され、灯油使用量を大幅に削減したハウス加温及び局所加温が可能であることが示された。
遊休施設内でヒートポンプによる空調制御下において、サツマイモの局所温度制御可能な階層式分離型水耕栽培システムを構築した。温泉排湯熱を多段階的に利用し、塊根を生長させる栽培ベッドを加温し、生産性の向上を図った。
2015年11月のTPP締結合意を境に、農産業大手企業は、国内からグローバル市場へと戦略をシフトしているが、地方中小メーカーは海外に関する情報も自社人材を投入する余裕もない状況が続いている。本研究は、中小メーカーの海外進出事例をもとに海外進出の意思決定ファクターと企業活動の強みを明らかにし、経営学的視点から海外進出を目指す中小メーカーの海外展開力強化に有効なビジネスモデルの開発を試みた。
東京電力福島第一原子力発電所事故以降、一度も使用されていない穀物乾燥調製施設で生じる恐れのある放射性物質による米の交差汚染を防止するため、著者らが実施した取組み事例のうち、①施設の汚染状況調査ならびに②原料通過経路の重点的な清掃を意図した「とも洗い」の効果について報告する。
野菜をカット加工した後の殺菌処理が含有成分量に及ぼす影響を検討するため、NaOCl溶液および酸性電解水を用いてその塩素濃度、浸漬時間とカットピーマンの含有成分量変化との関係を検討した。その結果、L-AsA含有量は殺菌溶液の種類、またカリウム含有量は溶液への浸漬時間に関係することが示された。
- C-4
岩手県産低アミロース米飯の冷凍加工特性の検討
- 岡留博司(農研機構 食品部門)・齊藤勲(ナカショク)・安江紘幸・太田久稔(農研機構 東北農研)・小舘琢磨(岩手農研セ)・五月女格・佐々木朋子・奥西智哉・安藤泰雅(農研機構 食品部門)
試作したイカ酢飯冷凍品の低温での解凍特性は、低アミロース米及び一般飯用米とも解凍日数の経過に伴い表層の硬さが上昇したが、前者では上昇が抑制されることを明らかにした。
24年度および27年度の茨城県産2品種の稲籾を1000粒ずつ供試材料とし、その画像データから特徴量を取得し、主成分得点を求め、判別分析によって判別精度を評価した。92 %以上の判別結果を得ることができた。
土壌表面近傍のCO2濃度とフラックスが測定できる手の平サイズの計測器を試作した。測定の結果、地表に近い位置の拡散係数は1.5~2.7×10-5 m2∙s-1の範囲にあり、過去の研究報告と近い値を示したことから、試作器の妥当性が確認できた。また、測定値の特徴として、拡散係数は測定高さに比例し、土壌表面からのCO2の発生量に依存することが確認できた。
一般座標系の乱流シミュレーションモデルを作成し、実地形・実気象条件に適用した。平均風向・風速は比較的良い結果が得られた。平均風速と突風率をプロットしたところ、両者の関係に年時変化は認められなかった。推定した突風率は同プロットの観測値内に収まった。
- P-1
ロータリーキルン式バイオマスボイラーによる汚泥と木チップの混焼
- 田中章浩(農研機構 九沖農研)・薬師堂謙一(農研機構 中央農研)・平生陽介(九州産廃)・黒田和孝・古橋賢一(農研機構 九沖農研)
ロータリーキルン式バーナーによる、汚泥堆肥と木チップの燃焼を検討した。汚泥の燃焼は木チップと混焼させることで、燃焼温度を1000 ℃以下にできた。しかし、CO或いはNOx濃度が若干高いことから、1次空気を増やして燃焼温度を更に低くすることが必要と考察された。
福島県内の実証農場において搾乳、生乳冷却、ふん尿処理、暑熱対策などの電力エネルギー利用調査および試作導入したCO2ヒートポンプによる生乳の熱回収システムの稼働状況について調査した。ヒートポンプ導入により生乳関連の消費電力量の増と既存バルククーラの消費電力量の減少を確認できた。
ヒートポンプの水熱源として農業用水路を流下する農業用水に着目し、シート状熱交換器を流水中に設置した場合の熱交換特性を、実規模水路模型による実験によって検討した。熱交換率は水路流速の影響を受けるものの、熱交換器内を流れる熱媒流量が大きく影響することを確認した。
被災農地で栽培に必要な真水の確保を目的に、未電化農地でも利用可能な電気自動車(EV)からの給電を利用したRO装置による地下水脱塩に関して検討した。充電ステーションからの距離と供給可能電力量および製造できるRO水量の関係を明らかにした。さらに他の電力供給方法との特徴比較を行った。
花卉ハウス暖房にバイオマスボイラー、冷房に井水を用いるシステム構築を目的とし、基礎試験を行った。導入コスト低減のため自動車ラジエータ(車両仕様:ディーゼル3 L、燃費約11 km/L)を流用し、熱交換器を製作した。暖房能力はラジエータ2枚利用の熱交換器で約20 kW(温湯温度85 ℃、外気温22 ℃)、3枚利用で約30 kW(温湯温度70 ℃、外気温6 ℃)で、妥当な範囲であった。
現行の花き栽培に用いられる農PO一重張りハウスの灯油消費量は、被覆資材の熱貫流率を6.6 W/(m2∙K)として推定できた。ポリ1層内張りで保温したハウスの周年の暖房燃料消費量を求め、日射が暖房負荷低減に寄与する割合を考察した。バイオガス、作物残さの固形燃料、木質チップ等の燃焼熱を用いて全暖房負荷の50 %を代替する場合、暖房が可能となるハウス面積を推計した。
農林業ではエネルギー消費が最大の施設園芸において省エネルギー策の強力な実施がせまられている。本研究はトマト、キュウリ、イチゴ、バラ、コチョウランなど5作目を栽培する19ハウスにおけるエネルギー・環境のICTモニタリングを実施し、低コストでのエネルギー消費の見える化により省エネ対策の効果の明示と将来的なエネルギーマネージメントへの展開を検討した。
2016年4月の熊本地震によって被災した温室3事例を調査した。主な被災要因は地震動、地割れ、液状化による地盤の不同沈下であったが、温室の立地条件によってそれらの組み合わせが異なった。基礎の不同変位と附帯施設の地震動対策が課題である。
- P-9
東北地方におけるトマトの周年栽培における効率的湿度制御技術の構築-冬季夜間における異なる除湿手法による比較-
- 伊吹竜太(宮城大)・菅野亘・伊藤瑞穂・山根弘陽(GRA)・岩崎泰永(農研機構 野菜花き部門)
東北地方におけるトマトを栽培する大型施設における実用的な除湿制御手法を構築するため、冬季夜間を対象とした4種の除湿制御試験データをもとに、低ランニングコストと信頼性のある除湿制御条件について検討した。
ヒートポンプの運用法を支援するツールとしてCFDモデルが期待されている。CFDモデルによって温室内の生育環境に及ぼす様々な要素、例えば、風速、温度、湿度などの空間分布を把握できる可能性がある。そこで、温室内の温熱環境を評価するため当所が所有するCFDモデルの改良を試み、その適用性を評価した。
徳島県特産の春夏ニンジンはトンネルハウスを利用した冬まき春夏どり栽培で、気温や生育に応じたトンネル換気量調整が重要である.早期栽培品種や気象変動への対応が課題である.そこで、低価格環境センサーを開発し、無線通信により取得した環境データ表示による換気量判断を支援するタブレットアプリの開発を行っている。
本研究では、GHP(ガスヒートポンプ)の排ガスを炭酸ガス施用の供給源とするため、GHP稼働中の排ガスの成分、及びハウス内への排ガス循環時のCO2濃度変化について計測した。その結果、CO、NOxは安全基準値以下で、CO2濃度も安定的に供給できることが明らかとなり、GHPの炭酸ガス施用への利用可能性が示唆された。
2016年4月に稼働したソーラーシェアリング施設(高知県高岡郡四万十町影野)において、パネル下の光環境と栽培作物の生育・収量の関係について調査を開始した。予備実験の結果、パネル下での積算光量子量は、露地の70 %程度を確保できる見込みであり、レタス、ハスイモ等を栽培作物として選定し、慣行栽培との比較を行った。
- P-14
つくばにおける屋根開放型温室の光合成ポテンシャル
- 奥島里美・石井雅久・山口智治(農研機構 農村工学部門)・望月和博(東京大)・森山英樹(農研機構 農村工学部門)・佐瀬勘紀(日本大)・髙倉直(沖縄県農業研究センター)
屋根開放型温室と単棟切妻型温室の光合成ポテンシャルの相対的な比較を行った。2015年の約10ヶ月(3月中旬~4月中旬と8月はデータ欠測のため除く)の気象データから推定した光合成ポテンシャル指標から、屋根開放型温室の優位性は1~2割と予測された。
温度感応型散乱光フィルムを利用して高温期にトマト栽培を行った結果、総収量で処理区間差はみられなかったが、裂果、日焼け果の発生率は、対照区よりも散乱光区で低下する傾向がみられた。日積算日射量は対照区より散乱区で約2 %低下したが、気温、湿度およびロックウール培地温では差はみられなかった。
本研究では同時期に展開したピーマンの葉が栽培期間中に受ける酸化ストレスの定量評価、並びに果実収量、果実の抗酸化活性を分析し、電解水素水がピーマンの栽培に及ぼす影響を調査した。電解水素水区でMDA含量が低く酸化ストレスが緩和されている傾向が見られた。また、栽培の中期、後期に収穫した果実は抗酸化活性が増加する傾向が見られた。
防虫網の糸径は0.11~0.23 mm、開口比は0.48~0.68であった。圧力損失は開口比が小さいほど大きかった。圧力損失は風速の指数関数で表せ、その係数は開口比の増加に伴って直線的に減少した。日射透過率は、入射角0~15°でほぼ一定で、それ以上で減少したが、防虫網間での差は小さかった。
循環扇の位置を種々に変化させ、循環扇オフの場合と比較した結果、温室内の気温分布を改善することができた。特に、循環扇を2台とも南側に設置すると、気温分布を小さくすることができた。しかし、いずれの場合も温室の北側に近い領域の気流速が小さかった。
採光性改善を目的として構造、部材の改良を行った木質製園芸用ハウス(通称「木骨ハウス」)の採光性評価を行った。調査には簡易積算日射計を用い、改良型木骨ハウス(改良後)、初期型木骨ハウス(改良前)、軽量鉄骨ハウス及び屋外の日射量の比較を行ったところ、改良型木骨ハウスは構造、部材の改良により、軽量鉄骨ハウスと同等以上(軽量鉄骨ハウス比115 %)の採光性であることが示された。
農業分野へのICTシステムの導入においてコスト高が普及を妨げている一因である.そこで圃場に導入しやすい、独立電源および3G回線データ通信を含めた低価格なKOSEN版簡易ウェザーステーションを開発し、高専ネットワークを活かして実証実験を行っている。
今回の研究では殺菌効果のある機能水を用いてコマツナの水耕栽培を行った。対照区よりマイクロバブル水、循環式電解水、アルカリ銀イオン水で生育促進の傾向がみられた。これらは、対照区よりDO値が高いことに影響していた。また、循環式電解水はORP値が170 mV程度で生育促進が働いた可能性が示唆された。
母材である生分解性プラスチック“テラマックTP-4071”にホタテ貝殻由来のカルシウム化合物微粉末や鉱物由来のドロマイトを改質材として加え、複合化させたことによる生分解性プラスチックの分解速度のコントロールと酸性化した土壌の中性化に及ぼす効果を評価した。また、異なる改質材による添加効果の有意差を明らかにする。
近年、砂漠化やヒートアイランド現象の解決策として、ヒドロゲルを用いた緑化が注目されている。本研究では、ポリイタコン酸-ポリビニルアルコール系相互侵入高分子網目(IPN)ヒドロゲルを土壌に混合またはヒドロゲルのみの育成用培地としてカイワレ大根及び西洋芝の育成試験を行った。
果実部に非接触で輸送することができるイチゴ個別包装容器“フレシェル”を用いて長距離輸送を想定した貯蔵試験を行い、輸送中の品質変化など貯蔵性について把握した。個別包装容器は重量損失による品質の低下を防ぐことができ、貯蔵性に優れることが示唆された。また、食味に関する成分組成の変化が同時に生じ、食味も変化していると推察された。
本研究では、イチゴ高品質流通の実現に向け、個別包装容器“フレシェル®”を用いてEU圏(ベルギー)への輸出試験を実施し、イチゴの内部品質の変化と個別容器の機能を把握した。評価項目は、輸送前後での重量、糖含量および有機酸含量の変化、さらに現地産イチゴとの食味官能評価を行った。
- P-26
マイクロ波減圧乾燥がリンゴ果実の物性および内部構造に与える影響
- 安藤泰雅(農研機構 食品部門)・折笠貴寛(岩手大)・蘒原昌司・鍋谷浩志・五月女格・奥西智哉・岡留博司(農研機構 食品部門)・田川彰男(鹿児島県大隅加工セ)
リンゴ果実へマイクロ波減圧乾燥を適用することで、従来の乾燥法と比較し、乾燥時間の短縮が可能であり、得られた乾燥品は多孔質な構造に起因する特徴的な力学物性を有することを明らかにした。
本研究では、乾式メタン発酵プラントで発生する消化汚泥の効率的な堆肥化処理のため、固液分離による低水分化及びそこで得られた固分の堆肥化処理をおこなった。その結果、消化汚泥の固液分離処理により、作業能率1100 kg/hで約60 %の乾物が固分として得られた。固分単体の堆肥化では原料温度は上昇せず、鶏ふん添加により原料温度上昇が早まり、温度上昇後も高く維持された。
養豚農業において豚の健康管理のため活動量を計測することは重要である.従来カメラでの画像処理においての活動量を推定していたが提案手法は豚が活動する際に生ずる音から活動量の推定を検討した。実験の結果、一定の条件下で推定できる可能性があることがわかった。
養豚農家での豚の健康管理は重要である。本稿では、豚の移動量を2種類の提案手法から算出することを目的としている。フレーム間差分を利用した手法と低解像度サーモグラフィを利用した手法で同程度の結果が得られた。実環境の限られた計算能力内での利用に向けて、豚の移動量算出に有効であることが確認された。
養豚農家で発情確認は重要である。本稿ではサーモグラフィによる豚の撮影から、発情期で上昇する外陰部温度変化検出を目的とする。外陰部温度の非発情期での推定に用いた外部環境要素の線形回帰分析を行い、臀部・交配ストールの温度が有効であると判断された。
豚の健康管理を目的として、カメラから得られた動画像中の複数の豚を同時トラッキングすることを試みた。動画像中で重なり合った豚を区別するためwatershed処理により領域分割を行うことで、4匹の同時トラッキングに成功した。
風洞を用い開放型豚舎を対象として遮蔽壁設置による畜舎からの汚染空気拡散の抑制効果を気流性状の可視化により明らかにすることを目的とした。その結果、畜舎の両側に軒高遮蔽壁を畜舎からそれぞれ棟高の距離だけ離して設置した場合が一番現実的かつ効果的であった。
初期発酵で発生したアンモニアを完熟堆肥に吸着させる窒素付加堆肥からの有機系液肥生産を検討した。一般的な完熟堆肥中の窒素の大部分は有機態窒素であるが、窒素付加堆肥中の窒素の大部分は、無機態である硝酸アンモニウムとして蓄積される。そのため容易に窒素分が水抽出可能であり、メタン発酵消化液より高窒素濃度の有機系液肥の生産が可能であることが判明した。
堆肥化装置排気熱交換による温水で灯油焚き床暖房を代替する堆肥発酵熱床暖房システムの実証試験を行った。温度調節器およびラインポンプ回転数制御用インバータからなるPID制御系により、堆肥化装置排気温度に影響されずに目標値39 ℃での床暖房稼働が可能であった。
メタン発酵工程でのpH低下で、バイオガスの回収が困難になる問題がある。本研究では、発酵槽内のpH低下を未然に検知するために、マルチインピーダンス法を用いて有機酸の判別の可否と周波数帯について検討した結果、周波数0.1 Hz-2 Hz及び2 Hz-80 Hzで有機酸と無機酸の判別が可能であることが観察された。
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磁気研磨ステンレスパイプに付着した牛乳汚れ除去における洗浄条件の影響
- 高藤穗里・井原一高(神戸大)・John SCHUELLER(Univ. of Florida)・豊田淨彦(神戸大)・梅津一孝(帯畜大)・Hitomi YAMAGUCHI(Univ. of Florida)
乳製品製造業においてステンレスパイプは多用されている。牛乳汚れは内面に付着しやすく、洗浄性向上が望まれている。いくつかある洗浄要素のうち被洗浄物の表面粗さに着目し、磁気研磨によって平滑化させたステンレスパイプを用いて、表面粗さと洗浄性の関係を調べた。