発表要旨(2014年度大会)
廃棄物系バイオマスは水分が80%以上の高水分の、いわゆる泥濘状であり、乾燥化には多大なエネルギーを要し、また堆肥化するにしても通気困難等の短所が存在する。このため高水分材料のまま酸素を供給する方法を模索し、気相圧力制御下での微生物代謝熱を利用した昇温を促すことを検討した。その結果100℃以上の昇温が可能であり、高水分材料の乾燥等が可能であることが示された。
堆肥化初期過程のN2O排出特性を明らかにする為に、亜硝酸・硝酸態窒素量がN2O排出量に及ぼす影響を検討した。亜硝酸・硝酸態窒素量はN2O排出量と高い正の相関が観測され、N2O発生源であることを示した。またN2O排出は、亜硝酸・硝酸態窒素を高温域で資化する微生物叢が重要な役割を担っていることが示唆された。
本研究では、家畜用抗生剤であるテトラサイクリンを含む高濃度の模擬廃棄乳は磁化活性汚泥法により一律排水基準以下まで処理しつつ、テトラサイクリンを生分解できることが示された。
- A-4
磁気分離を活用した酪農廃水処理~様々な酪農廃水に対するプロセスの提案
- 小野寺利仁・酒井保藏・柏嵜勝(宇都宮大)・井原一高(神戸大)・Mihir Lal SAHA(ダッカ大)・弓場誠(NEOMAXエンジニアリング)・高田清信(足尾化学工業)
本研究では、栃木県内の2か所の酪農廃水について、前処理を組み合わせた磁化活性汚泥法により安定した廃水処理が可能かどうか確かめた。
家畜糞尿中の抗生物質耐性菌の存在が問題となっていることから、メタン発酵による処理が検討されている。本研究では中温メタン発酵による乳牛糞尿残留耐性菌の低減における抗生物質の種類の影響について検討した。一部を除き、同一の抗生物質系統内では耐性菌の低減特性は類似していた。
- A-6
近赤外分光法およびAquaphotomicsを用いた乳牛の発情診断
- 竹村豪(神戸大)・Gyorgy BAZAR(神戸大/Kaposvar大)・生田健太郎・山口悦司(兵庫農技総セ)・古川茜・窪田陽介・Roumiana TSENKOVA(神戸大)
近赤外分光法とAquaphotomicsを用いて、乳牛の迅速・簡便な発情診断手法開発の可能性を検討した。
- A-7
Investigation of Cefazolin-resistant Bacterial Communities in Dairy Cow Manure during Mesophilic Anaerobic Digestion
- M. IWASAKI・M. MIYAKE(帯畜大)・I. IHARA(神戸大)・F. J. ANDRIAMANOHIARISOAMANANA・G. QI・Z. PAN・K. UMETSU(帯畜大)
We investigated the effects of mesophilic anaerobic fermentation on survival of cefazolin(CEZ)-resistant bacteria.
- A-8
Reduction of Hydrogen Sulfide Emissions from Dairy Manure: Influence of Temperature and Storage Time
- Fetra ANDRIAMANOHIARISOAMANANA・Yushi SAKAMOTO・Takaki YAMASHIRO(帯畜大)・Seiichi YASUI(ズコーシャ)・Masahiro IWASAKI(帯畜大)・Ikko IHARA(神戸大)・Kazutaka UMETSU(帯畜大)
Hydrogen sulfide emitted from dairy manure was proportionally increased with temperature, while there was gradual decrease during storage time.
病原体を媒介するエアロゾル濃度と空気中微生物濃度の関係を調べた。PCV2とPRRSVの遺伝子定量化解析法を確立した。粒径5.0 μm以上のエアロゾル濃度と一般好気性生菌濃度に最も強い相関が見られた。PRRSVとエアロゾル濃度に関係性がある傾向が見られた。
離乳豚舎空気清浄化手法としてフィルター式空気清浄機およびミスト噴霧を検討した。空気清浄機の稼働によりエアロゾルは70~80%、空中浮遊細菌は80%削減された。ミスト噴霧では明確な空中浮遊細菌低減効果はみられず、離乳豚舎空気清浄化手法としては適さないと考えられる。
乳牛の体感温度で北海道の暑熱対策必要期間を検討した。2013年度は外気温が30℃を越えたのは5月下旬で、牛舎内日平均体感温度が19℃以上となり始めたのは6月中旬であった。7~8月には20~25℃となり25℃を超える日も出現した。19℃以上は9月下旬まで出現した。外気湿度が低い6~7月は外気温が高くとも日平均体感温度は低いが外気湿度が高い8月は体感温度が高かった。
屋根勾配4/100の低勾配屋根切り妻型牛舎と屋根勾配3/10のオープンリッジ牛舎の換気状態を縮尺1/20の模型牛舎を用いて比較した。その結果、低勾配屋根牛舎では軒開口部から入気・排気がされるため実質的開口部面積が低下することで、牛舎内温度がオープンリッジ牛舎と比較して1.3℃高く、換気量が低下した。屋根勾配が緩いことで牛舎上部に滞留部が見られた。今後、換気量改善の可能性について検討する。
一体型で液体の水面を浮遊しながら発電する新しい微生物燃料電池リアクターを考案した。プロトン交換膜と空気中の酸素を電子受容体として利用する正極、ブラシ状の負極をフローターに取り付けることで一体化させる。膜・電極複合体がリアクター側面にないため大型化が可能であり、既存の排水貯留槽などに簡易に設置できる。
微生物燃料電池の実用化に向け、従来型よりも低コストかつ同等の出力を得られるプロトン交換膜を見つけることを目的とした。一般的に用いられているナフィオン膜と比較し、低価格なセレミオンHSF膜がクーロン効率が高く有望であると考えられた。
メタン発酵消化液の濾液について、微細藻類の培養液としての観点から濾過孔径、希釈濃度を変化させて光透過度を調査した。純水と比べて光透過度は低かったが、濾過・希釈は全般的に透過度を向上させ、光供給に貢献できると考えられた一方、原料によってその傾向には違いが見られた。
窒素ガスプラズマがプリオン不活化効果を持つのかについて解析した。マウススクレイピー感染マウス10%脳ホモジネートを窒素ガスプラズマ処理(1.5kpps)すると15分以内にプリオンの試験管内増殖能力が低下し、30分でプリオンの感染性が低下することが明らかとなった。殺菌対象物ダメージの少ないプリオン不活化法として、窒素ガスプラズマ技術の利用が期待される。
果実殺菌に特化した装置として開発したローラーコンベアー型プラズマ装置の殺菌効果を解析した。黒カビおよび黒腐菌に対しプラズマ処理を行った結果、それぞれ30分と3.75分で生菌数が検出限界以下となった。また、装置稼働時に発生する酸化ストレス物質が殺菌因子として最も寄与していた。
本研究では、堆肥発酵熱を回収して得られる程度の35℃の温水を乳牛に給与したときの飲水量および飲水行動に及ぼす影響を明らかにした。その結果、温水を給与することで10℃程度の冷水を給与した場合に比べ9.8%飲水量が増加した。また、飲水時間が短縮されることが明らかになり、温水を給与することで牛群における飲水環境が改善される可能性が示唆された。
小型水力発電用の除塵スクリーンの開発およびその性能について評価を行った。性能評価試験では、対照区として一般的に使用される金網、鉄格子を用い除塵率、水位変化を測定した。その結果、開発した除塵スクリーンは、対照区と比較して除塵率が高く、水位変化が少ないことから有用であることが示された。
小型ディーゼル発電機を燃料系統の加熱装置の付加、グロー、燃料噴射ノズルの交換により無変換のナタネ油により稼働するよう改造した。純正ノズル使用時とエルスベット製ノズル使用時について、始動性を比較すると、エルスベット製ノズルが少ない始動作業で始動しており、始動性が良いことが認められた。また、ノズルの違いにより汚損状況が異なることは確認できたが、噴霧特性の優劣、将来的な耐用時間の判断は難しい。
ロータリー式及びダウンフロー式バイオマスボイラーによる、育成牛堆肥ペレット並びに竹チップの燃焼特性を明らかにした。ダウンフロー式は1次燃焼部でガス化、ロストル部で2次燃焼させることで溶融温度が低い材料でも1000℃以上の燃焼空気が得られる。ロータリー式では燃焼温度900℃を維持可能で、排ガスに問題のない運転が可能である。
福島第一原発事故による避難地域の中山間の畑地の主作物は葉タバコであった。この地域に、労働生産性を低下させずに、葉タバコ後の加工・原料用野菜を定着させ、地域資源による乾式メタン発酵と固形燃料で施設園芸の規模拡大を図るシステムの成立要因を検討した。
- B-1
Experimental Study on Lateral Behavior of Full-scale-single-span Greenhouse with Steel Pipe Frames
- Ryu Hee-Ryong, Yu In-Ho, Cho Myeong-Whan, Moon Doo-Gyung, Cho Ill-Hwan (NIHHS, RDA, Korea)
In this study, the lateral behavior of full-scale greenhouse fabricated by two kinds of clamp was investigated. The specimen with relatively high strength clamp showed a slightly greater stiffness but permanent displacement was lager.
非対称補強をしたダブルアーチパイプハウスの耐雪強度を調べるために載荷試験を行った。補強は外径22.2mmの直管を屋根部にたすき掛け状に、載荷は両母屋パイプに行った。試験の結果、364N/m2で補強直管のパイプ先端金具が抜け始め、516N/m2で北側母屋パイプ付近のアーチで歪みが発生した。柱の倒れから算出した最大耐荷重は502N/m2であった。
- B-3
園芸用エコキュート利用のための地中蓄熱槽の開発(2)-蓄熱槽素材の強化と断熱特性-
- 宮内樹代史・松本将大(高知大)・吉村留喜(昭和産業)・松岡達憲(高知農技セ)・福田俊仁(昭和鉄工)・安武大輔(高知大)
園芸用エコキュート導入に必要な貯湯槽の低コスト化のために、地中蓄熱槽の開発を試みた。本報では、蓄熱槽素材の強化を図るとともに、既存のPEタンクとの比較を行い、地中蓄熱槽の優位性を明らかにした。
高温期でのCO2施用を可能とする栽培システムの開発を目的として、CO2クラスレートハイドレートを用いた空調システムの適用性について検討した。その結果、本システムによりCO2を回収貯留した後、CO2クラスレートハイドレートを分解して冷熱とCO2をハウス内に同時供給することが可能であった。
本報告の目的は、北海道施肥ガイド2010に基づき余剰窒素を算定し、現状の環境負荷を再考することである。結果、施肥標準を基に、現状に近い条件下での余剰窒素は、254[kgN/(ha∙年)]となった。現状の余剰窒素、260[kgN/(ha∙年)]に近い値であった。
ODA事業の一環として、途上国の行政官や技術者を対象に農業機械の研修を通じた人材育成事業を実施してきたが、途上国の農業機械化に、どの程度のインパクトを与えてきた、過去の研修員の帰国後の活動のストーリ効果発現メカニズムを解明した。
米粒を温水に浸漬した際の浸漬液粘度と、食味に関わるいくつかの理化学的特性値との関係を調査、検討した。その結果、70℃の温水に浸漬した際の浸漬液粘度が溶出固形物量や米飯粒の付着性との間に高い相関を示すことが明らかとなった。その原因として、浸漬液中へ溶出したアミロペクチンが関係していると考えられた。
本研究は、米の収穫前後に籾が放射性セシウム(以下rCs)を含む粉塵にさらされた際に、乾燥中や貯蔵中にrCsが籾表面から玄米表面へ内部移行するかについて調査したものである。汚染条件が異なる試料を作成し、熱風乾燥および貯蔵を行った結果、玄米のrCsは全試験区で籾の1%程度であった。これは、籾摺・選別過程での交差汚染による影響であることが示唆された。
2013年の営農再開地域で実施された、とも洗いを主体とした交差汚染防止対策の実態調査を行った。同対策により、高濃度の放射性Csを含有する籾摺機等の機内残留物を効率的に除去でき、出荷用玄米が基準値を超過するリスクを低減できることが明らかとなった。
高速近赤外分光計を用いたコムギ、ソバ、玄ソバ、玄米の1粒判別について検討した。穀物ごとに150粒の拡散反射スペクトルを測定し、SNV変換後、主成分分析法を適用して判別を行った。その結果、コムギと玄米は互いに誤判別されるケースが僅かにあったが、玄ソバおよびソバについては判別率100%であった。
コマツナに含有するカルボニル化合物をDNPH誘導化し、貯蔵中の変化をHPLCで分析した。積算呼吸量の増加に伴いマロンジアルデヒドは減少し、脂質過酸化の最終生成物の主体は他の物質である可能性が示唆された。
本研究では、青果物(特にイチゴ)の鮮度を保持するため、各種包装資材を用いて包装内の酸素および二酸化炭素濃度を測定した。また、青果物の呼吸量を計算し、青果物の鮮度保持に最適な方法を検討した。
- B-13
Coulometric Microdevice for Organophosphate Pesticide Detection
- Jin WANG・Zhi CAI・Hiroaki SUZUKI・Hikaru HASHIMOTO・Yutaka KITAMURA・Takaaki SATAKE(筑波大)
The detection for organophosphate pesticide was performed on a micordecive based on the mechanism that OP inhibits the enzyme acetylcholinesterase. The limit of detection was nM level.
近赤外分光法を用い、ユーグレナ産生物質パラミロンによる吸光波長の特定および藻類の個体数、乾燥重量、油脂重量推定を行った。パラミロン、藻類、青汁のスペクトルデータから、パラミロンの吸光波長を特定した。またスペクトルデータと個体数、乾燥重量、油脂重量の測定結果から、重回帰式による検量線を作成した。
イチゴ‘越後姫’の葉にうどんこ病菌が付着した際に早期判別する方法を検討した。ハイパースペクトル画像から33次元輝度値を取得し、PLS判別分析の説明変数として、罹病部分、健全部分を判別するモデルを作成した。目視では確認することはできないが菌糸および胞子が付着している葉の罹病部分判別の可能性が示された。
積雪寒冷地域の農山村における「地域資源」を温冷熱源・作物栽培空間として利活用することで、ランニングコストおよびイニシャルコスト低減となる持続可能・循環型施設栽培システムの構築を目的し、特に熱の多段階利用法について検討した。その結果、既存システムの熱利用効率を27.9%向上できることが明らかとなった。
建設足場資材利用園芸ハウスでの利用を想定し、施工性に優れたスパイラル基礎杭など3種類の基礎杭について引き抜き抵抗力を調査した。N値10程度の地盤ではいずれも施工性に問題はないが、土層を結果として剪断することになるなど適切な施工を行わない場合には抵抗力が大きく低下する場合があるので注意を要する。
岩手県で開発中の木骨ハウスの風圧係数について、屋根傾斜角度が及ぼす影響を調べた。風圧係数は風洞実験によって求めた。屋根傾斜角度10°、21°(プロトタイプ)、30°の場合を比較した。その結果、屋根傾斜角度が21°よりも小さいと、風圧係数分布が著しく異なった。
豚脂を迅速に測定ため様々な脂肪酸組成をもつ50頭の肥育豚を準備し、近赤外線測定装置で温と体、冷と体の背脂肪の測定を行い検量線の作成を検討し、測定結果と背脂肪内層脂肪酸組成分析結果の間において温と体で有意な検量線が作成できた。
FTIR法によるカット牛肉の脂肪酸組成スポット測定位置決定の為に、紫外蛍光を利用した部位識別情報の取得を行った。蛍光分光装置により各部位別に蛍光スペクトルを測定した結果、部位別に蛍光強度に差が生じた。蛍光強度の違いからスペクトル解析により脂肪組織間で成分の違いを検出できる可能性が示唆された。
超音波断層画像処理によって食品の内部弾性分布を求め、それを基にした新しい食品品質評価指標の構築を目指している。ここでは、医療用に実用化されているElastographyの原理を食品内部弾性分布推定に利用するための基礎的なシミュレーションを実施し、その結果について報告する。
本研究では共焦点レーザー顕微鏡を用いて、形成過程において低温暴露を行ったバイオフィルムの三次元的構造について観察を行い、低温暴露が立体構造に及ぼす影響を検討した。その結果、柱状構造およびドーム型構造が観察され、低温暴露の有無によってドーム型構造の形状に変化が生じる可能性が示唆された。
本研究では、温泉の廃湯を活用したメタン発酵システムの開発をした。メタン濃度は概ね60%以上を維持しており、発酵槽の温度が安定化してからは、発酵状態が改善され、メタン収率が87%まで上昇した。このシステムを利用して、地域内での物質循環とエネルギー利用を行う小規模分散型の循環型社会モデルの構築を開始した。
清涼飲料工場から排出される廃棄物の再生利用法として中温メタン発酵を検討した。回分実験により、コーヒー粕、穀物茶粕および脱水汚泥を混合した材料を原料とすることで、単独の材料を使用する場合よりガス生成量を増大できることを確認した。しかし、連続実験では、pHが徐々に低下し、ガス生成量がやや不安定となった。
食品加工プロセスでは有色排水が生じる場合がある。特に褐色排水は河川の光透過性減少のため、脱色が望まれる。本研究では電解酸化法を用いて生物学的処理が困難な茶褐色のコーヒー成分の脱色を試みた。コーヒーの着色成分は電気化学的に難分解性であった。しかし、NaClを添加した場合は効率的に脱色された。生成した次亜塩素酸はコーヒー成分の脱色に適すると考えられる。
当所で開発したCOP測定装置を用いて温室内に設置したヒートポンプのCOPを実測し、冬期夜間の暖房時のCOPに影響を与える除霜運転時の挙動について検討した。その結果、外気温が低い場合においても、相対湿度が低い場合には除霜運転が起こりにくいこと、また、除霜運転によって平均COPは幾らか低くなるものの、消費電力量は大きく増加しないことが示唆された。
水熱源(地下水・地中熱)および空気熱源ヒートポンプを温室暖房に適用するための課題を検討した。空気熱源は室外機でデフロストが頻繁に起こり、室内機の吹き出し温度が変動したが、地下水・地中熱源は安定的に採熱され、室内機の吹き出し温度は約40℃で供給できた。
夜間暖房時に循環扇を稼働させたときの温室内の気温および相対湿度を測定した。夜間暖房時に循環扇を稼働させることにより、暖房機器の動作に起因する気温および相対湿度の変動が小さくなるとともに、室内の平均気温を暖房機器の設定気温に近づけることができた。
梅雨期に収穫を迎える春播きタマネギの新作型を確立する際に最も大きな課題となる収穫時の乾燥技術について検討した。北海道の産地で行われている地干しによる乾燥は困難であり温風乾燥機等を用いた人為的な乾燥が必須であること、他品目よりも高温障害が発生しやすいことが明らかとなった。
農地への太陽光発電の設置検討が増えている。そこで農作物への必要な光量を確保しながら太陽電池の発電量を最大化する手法を検討している。そのためには作物の生育に必要な照度を太陽電池下の陰がある場所でも面照度が測定できる安価なデータロガーを開発している。フォトトランジスタとArduinoを用い試作した照度ロガーの照度測定検証を行った。低い照度では安定した計測性能を示した。
農作物を作りながら太陽光発電をするソーラーシェアリングが注目されている。円筒型太陽電池パネルで太陽光を分配する一つの手法として寒冷紗に着目し、寒冷紗の反射による太陽電池の発電量増加を検討した。反射率の高い寒冷紗を選定しその反射率を確認した。寒冷紗による反射光を利用して太陽電池の発電量が増えることを確認した。また太陽電池下での作物の生育調査を行った。
微生物燃料電池の出力向上を目指し、タングステンをアノードの触媒とした性能評価を行った。その結果、タングステン保持電極は触媒なし電極よりも40%程度高い出力が得られることが明らかとなった。一方、クーロン効率はどちらの電極を使用した場合も50%程度であった。
宇都宮大学附属乳牛舎を対象に太陽光発電システムの設置計画を行い、発電電力量、CO2排出削減量およびコストについて試算した。東西に向いた乳牛舎屋根面(片面)を利用した場合、太陽電池による年間発電量は、附属乳牛舎の消費電力量を上回った。システムの設置費用は、現行(平成25年度)の買取単価の下では20年程度で回収できることが示された。
ゴムノキプランテーションにおいて老木は加工される際に発生する木質廃棄物はガス化を導入することで発電機の燃料として利用できる。密閉型ガス化炉において、炉内を設定した圧力に保ちガス化を行った結果、一括で取り出す場合よりガス体積が増大することがわかった。
非常に小規模であるが、浅層地中熱および実験水槽を熱源としたヒートポンプによる小型温室の暖冷房運転を行い、年間の運転データを収集した。
木質バイオマス用の小型燃焼炉の一つであるロケットストーブは、製作が容易でありながら燃焼効率がよいため近年注目されている。本研究ではコンクリート製U字溝を用いて製作したロケットストーブにおいて、燃焼室に簡易的な火格子を設置する効果を検討した。燃料の種類や投入量を変えて実験を行い、火格子設置が有効であることを確認した。
温室栽培では、地中温度を下げる装置の1つとして吸着冷水機がある。本研究では、撹拌機構を有した蒸発器を用いた場合の吸着冷水機の性能評価を行った。結果は、撹拌時の冷却出力の方が高かったので、撹拌の効果により伝熱効率が良くなり、冷却出力が向上した。
無変換ナタネ油の燃料利用を検討しているが、低品質粒では燃料用ナタネの規格DIN51605を満たさない場合もある。活性白土による精油で、基準外であった値を基準内とすることはできなかったが、酸価およびS、P、Ca+Mg成分を低下させることができた。なお、ケイ素の増加が認められ、活性白土が一部濾紙を通過したと考えられる。精油作業後に活性白土を沈殿により除去したが、ナタネ油の損失が発生した。
シイタケ栽培により発生する廃菌床を再生燃料化して菌床殺菌の熱源に利用するシステムを開発し、実証試験を行った。再生燃料は木質燃料の20%程度の混焼が可能で、発生蒸気による常圧殺菌は問題のない性能であった。熱効率の向上が普及に向けた課題である。
木質ボイラーを用いる廃菌床燃料化利用システムについて条件別のインベントリ分析を行い、環境負荷等の改善効果を検討した。木質燃料を近距離から調達してフル稼働した場合、単位菌床個数当たりの温暖化ガス排出量は灯油ボイラーの56%まで低減される。
ヒマワリの茎部を対象にした加圧熱水法によるリグニン除去とセルロース分離について検討した。反応温度を180、200および220℃、保持時間を5分および30分として、得られた反応生成物を酵素糖化し、反応条件を評価した。180℃-5分が最も適した反応条件であった。
燃焼利用では材料の灰分が大きな影響を及ぼすため、ヒマワリ茎部の部位と温度による灰化特性を検討した。加熱設定温度を高くすると灰分の減少が確認された。また、650℃から700℃の間で灰分の融解が観察された。部位ごとの灰化では、木部よりも髄部の灰分が多かったが、これは随部に含まれる無機栄養物質の影響と考察された。
本研究の目的は土中の水分変化を音の伝搬速度を用いて計測することである。音の伝搬速度を用いることにより、従来のセンサ付近局所的な計測ではなく、広範囲に亘った計測を行うことが可能である。本稿では、地下水位上昇過程と音速の関係を調べた。結果、水位上昇に伴って変化する密度や弾性率による音速の変化が確認された。
被災農地で、低圧RO装置を1年間稼働させた結果と薬品洗浄による膜性能回復性の評価、冬期の保管法の検討に関して報告する。2013年は、1 083 トンのRO水を製造し、2 280 m2のキュウリ栽培の用水を賄った。本装置の所用電力は、5.4 kWh/m3(RO水)であった。
栽培施設内でのダクト配風試験を実施し、温度斑低減、投入エネルギー節減の観点から考察し、実用的な配置方法も考慮しダクト配置に関して検討を行った。端部の開放条件を調整した子ダクトから送風することで、従来に比べ上下の温度斑の解消と消費エネルギーへの寄与が見られた。その他今後の要改善点について述べている。
気温の水平分布は、ダクト吹き出し口の下流側に当たる温室南端が北端に比較して1.1℃高くなったが、ダクトを短くすることで改善された。垂直分布は、ダクト吹き出し口から6mの位置で高温域が発生し、それ以外では群落上の気温が一様に高かった。気流速はダクト吹き出し口の近傍を除くと最大でも0.2~0.3m/sであった。
ホウレンソウの低酸素貯蔵において、嫌気呼吸を起こす限界酸素濃度と貯蔵温度との関係性を検討した。20℃で嫌気呼吸を起こす酸素濃度下で、10℃では一時的にRQが2まで上昇するもすぐにRQが低下し、外観品質も良好であった。また15℃では外観品質が良好であるがRQの値が1.8前後を保持しており、その理由は不明である。この現象について再現性を含め、今後検討を行いたい。
中小規模施設園芸の生産性向上策のひとつとして、高知県仁淀川町で行われている石垣蓄熱ハウスの取り組み状況を紹介する。本ハウスは耕作放棄された棚田の石垣、地域の森林資源を活用した、新たな形態の園芸ハウスであり、地域資源の活用、地域活性化に向けた取り組みとして今後の展開が期待されている。
テラヘルツ分光法を利用した農産物の鮮度評価に関する基礎研究として、様々な農産物のテラヘルツスペクトルを取得し、ケモメトリックス法を使って解析した結果について報告する。予備的な検討としてアイスクリームの融解におけるスペクトル変化を解析したところ、測定開始直後に4.5 THzに強い水素結合を示す吸収バンドが観測されたが融解に伴って消失した。
電気インピーダンス法によるカットレタスの鮮度評価法の有効性の検討を目的とし、検討を行った。貯蔵過程における鮮度の劣化に伴い、細胞外抵抗Reの低下が確認され、細胞膜の損傷による影響が示唆された。これより、電気的特性を指標とする鮮度評価の可能性が示唆された。
コーヒーは世界中で消費されている飲料であり、焙煎したコーヒー豆より抽出される。本稿では焙煎評価を目的として電気的特性を計測した。複数の焙煎度(明度)を持つ試料の解析を行ったところ、明度と電気的特性の間に対応した関係が見られた。これは、内部の状態と明度の変化が対応しているためであると考えられる。
本研究では窒素・二酸化炭素を用いた貯穀害虫の殺虫を行っている。あらかじめビン内部にヒラタコクヌストモドキ20匹を入れておき、ガス混合用流量計を用いて混合ガスを作製し置換した。観察は処理直後、処理後24 h、48 h、72 hの4回行い、動く成虫の割合を求めた。結果、処理直後、処理後72時間時の動く虫の割合は100 %N2の方が40 %CO2 + 60 %N2よりも低く、殺虫率が高いことが分かった。
養豚農家での感染症の早期発見は重要である。本稿ではくしゃみ音の発生回数を、マイクロフォンを用いて監視することを目的としている。従来手法での誤識別を低減するため、スペクトログラムを使った相関係数とくしゃみ音の時間幅から、くしゃみ音に似た雑音環境においても感染状況の判別に有効であることが確認された。
家畜が歩行している状態で、その質量を測定する方法を提案する。家畜の歩行に伴う重心の動きを状態方程式で表現し、計測データからそのパラメータが同定できることを示し、適応フィルタによりその影響を除去する。実験データより、実用上充分な精度が得られることを確認した。
2013年度は、昨年度までと同様に飼養試験を行い、乳量、使用エネルギー量等について検討した。結果より試験区は対照区と比べて日乳量で2.7kgのプラスとなり94.9円/頭/日の収益増となる。イニシャルコストは400万円であり、償却年数は約6年となる。