発表要旨(2013年度大会)
パイプハウスの省エネルギー化を図るために開発中の日本型日光温室において、水蓄熱体の設置による暖房負荷軽減効果を解析した。開発ハウスの暖房機加熱量、暖房負荷係数は慣行ハウスより小さかった。水蓄熱による暖房負荷軽減効果は、夜間におけるハウス内の管理温度が低いほど大きく、高くなるに従い小さくなった。
無加温のトマト栽培条件下における布団ハウスの熱環境を調査した結果、内外気温差は平均6.2℃であり、昨シーズンの裸地条件より1.5℃低かった。これは植栽の影により蓄熱材の蓄熱量が少なかったことや日射エネルギーの潜熱変換割合が昨シーズンより多かったことが原因と考えられる。内室内における気温差は、昼間は南北方向よりも鉛直方向が卓越し、夜間は逆転した。
- A-3
施設園芸における冷・暖房負荷削減システムの開発(2)多層被覆資材を設置した省エネ隔離室による冷・暖房負荷の削減効果
- 大石直記(静岡農林研)・佐藤陽介(静岡農林研/現・静岡農林大学校)・守谷栄樹(中部電力エネルギー応用研)・木村眞浩(磐田ビニール)
温室内の多層被覆資材を用いた省エネ隔離室によって、ヒートポンプによる夜間冷房時の消費電力量をPOに比べて50 %削減(床断熱含)、暖房時の消費電力量を60 %削減できる可能性が示唆された。
不整形な傾斜畑や棚田に適用できる主骨材に建設足場パイプを利用した、高強度・高軒高の建設足場資材利用園芸ハウスは、温暖地中山間地域において実績があるものの、寒冷地での適用においては屋根傾斜や保温性向上などの改善を行う必要がある。岩手県陸前高田市での実証施工に先立ち仕様検討を行ったので報告する。
パプリカの夏秋栽培で晩秋期に大量に発生する着色途中の果実に対して、収穫後の光照射による着色促進効果と現地適応性について検討した。その結果、品種に関わらず収穫時に10%程度着色していれば5~7日の光照射処理で90%以上に着色が進展した。また、現地実証の結果、約10%の増収効果が確認され、実用性が高いと考えられた。
穀類の害虫であるコクゾウムシを対象にして、狭帯域波長を持った紫外光、青色光、緑色光、黄色光、赤色光と白色光および白熱球を用いて、各光色に対する虫の行動観察を行った。その結果、餌である玄米が無い場合でも紫外線、緑色光および赤色光には70%以上のコクゾウムシが集まることが分かった。
植物で最も活発に細胞分裂している生長点に着目し、生長点付近にだけ、他の葉に与えた光質と異なった光質のLED光を与え、その光質が植物の生長に及ぼす影響について検討した。その結果、生長点付近に与える光質とその周辺部に与える光質の組合せを色々と変えることにより、生長に差が現れることが分かった。
冬期の栽培施設の保温設備として用いられるウォーターカーテンを、赤外線のみを選択的に吸収する水の性質に着目し夏期の栽培施設内の昇温抑制に応用する。空気膜二重構造のウォーターカーテンを用いて、赤外線の吸収性能評価を実施した。
リキッド飼料の原料に飼料用米を使用し、子豚の群飼養に対応可能なリキッドフィーディングシステムの開発を行った。開発システムは高精度の給餌が可能であり、試験結果より乾燥飼料(0.61kg/d)と同等の増体(0.65kg/d)であった。餌抜き・水抜き機構は、飼料の廃棄、水の混入があり制御方法に課題が残った。
畜産業で使用される抗生物質の環境への拡散が問題となっている。残留した抗生物質を選択的に分離するため、磁気分離法に着目した。本研究は、磁性ビーズを試作し、連続磁気分離へ適用した。界面活性剤でコーティングした磁性ビーズは高い分散性を示し、連続磁気分離試験で抗生物質の高い除去率を得た。
セフェム系抗生物質は乳房注入注射剤として牛乳房炎治療で使用されている。酪農施設では、抗生物質が残留した生乳が廃棄されており、環境への抗生物質放出が懸念される。本研究では生乳中のセファゾリン(CEZ)の電解酸化処理を試みた。CEZ濃度は減少したが、難分解性物質であり、中間生成物が観察された。
畜産業において動物用抗菌剤(抗生物質)が使用されているが、畜産廃水を通じた環境汚染が懸念されている。そこで、抗生物質の分離法として電気化学凝集法に着目した。本手法は、金属イオンとキレート化合物を生成する抗生物質に対し、高い除去率を得た。本研究では、実廃水として搾乳施設廃水を用いた検討も行った。
異なる屋根勾配を持つ太陽光利用型植物工場の気流特性を数値流体力学モデル(CFD)により調べた。屋根形状として従来型(5寸勾配:約27°)と新型(2寸勾配:約11°)を仮定し風速を比較したところ流入口から離れるに従い地表面付近の風速は20~30%新型ハウスのほうが大きくなった。
キュウリを生産する6連棟の温室において、循環扇を稼働させたときの室内環境の把握とその制御法を検討した。循環扇を停止したときの温室内の平均気流速は約0.05 m/sであったが、循環扇を稼働すると平均気流速は0.38 m/sになった。また、夜間暖房時に循環扇を稼働すると、室内の水平・垂直方向の気温分布は小さくなった。
花桃促成室の室内環境を調査するとともに、環境制御手法の改良点を検討した。花桃の出蕾・開花に至る要因として、気温・湿度が影響する。促成室内の気温・湿度に分布があったが、循環扇を稼働させることにより、温・湿度の分布は小さくなった。今後は室内環境の改善とともに、植物生理の点からも検討する必要がある。
冷房用に試作した日射を再生熱源とするデシカント空調システムを冬季に除湿暖房利用することを試みた。再生吸湿水量は1日あたり平均約8kgで、夏季の8割程であった。風量が338立米毎時で、吸排気の温度差は平均5.2℃、除湿量は平均1.9g/kgDAであった。
テラヘルツ波の吸収を用いた乳中体細胞数の定量評価の可能性について検証した。全反射減衰法を採用し、体細胞数のみを変動させた生乳サンプルを用いることで、原理的に乳中SCCを定量することができるかを確かめ、R2=0.98とほぼ線型的な関係が得られた。
黒毛和種牛肉の脂肪中の主要なω-3、ω-6脂肪酸がα-リノレン酸、リノール酸であることを確認し、それらの含有率をFTIRスペクトルから推定するPLS回帰モデルを求めた。PLS回帰モデルは決定係数0.8以上で含有率を予測することができ、FTIR法は牛肉脂質中のω-3、ω-6脂肪酸の推定に有効であることを明らかにした。
和牛牛肉の皮下・筋間・筋内脂肪の脂肪酸組成の特性と相関を調べ、一価不飽和脂肪酸MUFA、飽和脂肪酸SFAについて、筋間脂肪測定による筋内脂肪のMUFA・SFA含有率の予測が可能であることを示した。FTIRスペクトルによる脂肪酸組成予測PLSモデルを求め、決定係数0.77以上で、MUFA、SFA含有率の予測がPLSモデルにより可能であることを明らかにした。
ファイバープローブFTIR法によるカット牛肉脂肪組織のスポット測定を前提に、スポット測定の対象となる脂肪部位を特定するための画像識別法の開発を試みた。紫外光蛍光画像から可視光画像と同様に筋肉・脂肪領域の識別が可能であった。脂肪組織の蛍光発光強度のヒストグラムから脂肪組織は弱発光部、中発光部、強発光部に3分類できることがわかった。
最近の「6次産業化・地産地消法に基づく認定」報告を基に、高付加価値化の現状と課題について検討し、研究者の役割として、6次産業化に関連するコーディネイターなどと連携して技術シーズを含む適切な技術提案を行うことが必要であること、委託加工などの役割分担で農業と食品産業等の連携が安定的かつ効率的な事業展開が必要であることを推察した。
加工用バレイショの萌芽抑制貯蔵のためのエチレン処理によるチップカラーの低下を防止することを目的として、エチレン貯蔵前に1-MCP処理を行い、芽の伸長抑制効果を維持しつつ、還元糖増加を抑制することが可能であることを明らかにした。
リンゴ果実を海外へ携行輸出するためのシステムを構築するため、現在国内で流通している土産用のリンゴ箱を使って携行時および宅配輸送時にリンゴにかかる振動・衝撃を計測した。また、落下衝撃に対する段ボール包装形態や緩衝材の果実損傷軽減効果について検討した。
作物由来の澱粉を用いて微粉砕による粒子径変化が加工適性に与える影響について検討した。その結果、微粒子化に伴い全作物とも澱粉の糊化粘度が低下し、全作物とも類似の粘度パターンを示した。損傷澱粉の割合は微粒子化により増加傾向を示した。またSEM観察により、米と馬鈴薯では微粒子化による澱粉粒の破砕程度が大きく異なった。
- B-5
園芸用エコキュート利用のための地中蓄熱槽の開発(1)-蓄熱槽の素材と基本特性-
- 宮内樹代史・松本将大(高知大)・吉村留喜(昭和産業)・松岡達憲(高知県農技セ)・福田俊仁(昭和鉄工)・安武大輔(高知大)
施設園芸における燃油高騰対策として、ヒートポンプの普及が進んでいるが、自然冷媒ヒートポンプ給湯機(エコキュート)の導入事例はわずかである。我々はエコキュートの効率的活用、すなわちエコキュートによるハウス半閉鎖環境の創出とCO2施用、及び貯熱を利用した局所加温について複合的な取り組みを行っている。本報ではエコキュートの導入コストを削減するために、貯湯槽の地中埋設化を考案し、実際の導入事例を調査するとともに、蓄熱槽の素材と特性について検討した。
温室におけるヒートポンプの成績係数(COP)を連続測定するために、空気エンタルピー法によるCOP測定装置を試作し、データの妥当性をJISに定められた環境条件と近似した条件下で評価した。その結果、メーカ公表値のCOPと同程度の値を得ることができた。また、実際に温室でCOPを測定したところ、連続してCOPや風量の変動を捉えられることが確認された。
高温障害などの理由から有効利用されていない夏期ハウスにヒートポンプの冷房機能を利用することで、栽培環境を創出し、新たな収益を得るための花卉栽培を検討した。ヒートポンプシステムによる栽培環境制御下で秋出荷用パンジーの発芽・育苗を行い、本システムの効果を検証したところ、最適温度を維持することができた。一方で、湿度制御について課題が明らかになった。
園芸施設ではヒートポンプを利用することにより、暖房機の重油使用削減が期待できるが、電力量の増加によりランニングコストが高くなる可能性がある。本研究では実験用ヒートポンプによってモデル温室を、凝縮器からの吹き出し温度と風量を変えて暖房し、凝縮器から室内への熱移動とファンの運転による発生エントロピーを計算して、その合計と消費電力量の関係を検討した。その結果、発生エントロピーの合計が最小となるヒートポンプの吹き出し温度と風量の組み合わせが、電力量の最小の条件となった。
- B-9
CFD Simulation of Temperature and Relative Humidity inside Nanomist Container.
- Duong Van HUNG, Yuta UMENO, Natsumi NOZU, Daisuke HAMANAKA, Fumihiko TANAKA, Toshitaka UCHINO (Kyushu Univ., member)
This study was designed to investigate the temperature and relative humidity (RH) distribution inside a nanomist container without loaded products. The CFD was used to simulate temperature diffusion for an hour. Temperature was set at 5 ℃ and recorded at 3 places. Analytical condition of unsteady turbulence was applied in the CFD model. The results showed that temperature and RH diffusion was different from place to place inside the container. Furthermore, the predicted data showed to fit well with experimental data. Lower temperature was found to exist at the front of refrigerator and ceiling area.
中山間地域で自然エネルギーによる発電を行った場合の発電量の調査、発電における課題、問題点の抽出をした。新潟県では日射量と農業用水路の流量を測定し、香川県では日射量を測定した。測定結果をもとに太陽光発電、小水力発電についてそれぞれの月別期待可採量と経時変化を算出し、問題点を整理した。
- B-11
中山間地域における小型水力発電利活用システムの研究-小型水力発電装置を利用した電動刈払機の実証試験-
- 臼井善彦・藤井幸人・Phan Dang To・長澤教夫(生研センター)・飯尾昭一郎(信州大)
中山間地域の耕作放棄地を対象に、小型水力発電装置の電力を利用した電動刈払機の実証試験を行った。農業用水路に設置した滝用水車で発電し、電動刈払機のバッテリーに充電した。また、雑草の刈払い試験を行い、電動刈払機とエンジン駆動刈払機の電力使用量と燃料消費量から10a当たりの刈払いに必要なコストを比較した。
市販のディーゼルエンジン改造キットを小型ディーゼル発電機に取付け、無変換のナタネ油を供試できるよう改造した。供試機はナタネ油供試運転1250時間、比較のための軽油供試運転250時間の積算1500時間に渡り、回復不能な不調なく運転可能であった。ナタネ油供試時は軽油供試時より、燃料消費量が多かった。
超音波断層画像処理によって食品の内部弾性分布を求め、それを基にした新しい食品品質評価指標の構築を目指している。ここでは、食品・食材の特性を考慮した超音波B-mode断層像の効果的な撮影法の検討について報告する。
近赤外分光法を用いた混合均一性の評価法を開発するため、コムギ粉、スクロース、グルコースの混合粉体について、混合中の近赤外スペクトルを測定し、主成分分析法にて解析した。その結果、スクロース、グルコースともに、混合80秒で均一になることが示された。
スペクトル測定時の姿勢がタマネギ腐敗球の判別精度に与える影響を評価すると共に、高精度の診断を行うための姿勢制御機能の要求レベルについて検討した。その結果、ある姿勢において構築された検量モデルを他の姿勢に適用した場合、腐敗レベルが過少に、あるいは過大に推定することが明らかとなった。
お米の外観検査装置は米粒の表面、側面、裏面の3方向の画像を撮って、1粒毎の形状・色情報が得られる。これらの情報に対し、判別アルゴリズムに基づいて米粒の画像検査をする装置で、内観検査装置は米検体に近赤外光を照射して得られる回折光のスペクトルパターンを解析することで、米の成分を予測する装置である。また、粒厚と光選別を組合せた選別法を基本に想定し、玄米の外観品質と歩留り向上の可能性について検討を行なった。
収穫された生籾は、腐敗から守るために早い機会に乾燥する必要がある。一般的には籾の形態で加熱通風乾燥が行われるが、省エネルギー、低コストを目的として玄米形態での乾燥も注目されている。乾燥籾殻を乾燥剤とする「籾殻混合玄米乾燥」を検討した。本方式において、重要な特性である乾燥特性、充填容積特性を、主に籾殻の視点から考察した。
福島県内の籾摺機2台を対象に放射性物質交差汚染の実態調査を行った。その結果、放射能汚染が疑われる籾摺機を未清掃のまま用いて籾摺を行うと、高濃度の放射性Csを含有する機内残留物が玄米袋へ混入し、当該袋の放射性Cs濃度が高く検出されることを認めた。
福島県内の籾摺機3台を対象に、とも洗いによる交差汚染防止策を検討した。その結果、籾40kgを用いた約3分間のとも洗いにより、機内残留物を効率的に除去できることを確認した。また、とも洗い後の籾摺では、100Bq/kgを超える玄米袋は排出されなかった。
福島県内の籾摺機4台を対象に、機体の分解清掃による交差汚染防止策を検討した。いずれの機体でも分解清掃で放射性物質を除去できたが、重度汚染と考えられる機体1台で100Bq/kgを超える玄米袋が排出され、同機体ではとも洗いとの併用等が必要と考えられた。
嫌気性下で草本性植物(芝)を前処理(水熱処理)した物を基質としてメタン発酵槽の汚泥を培養する事で、脱窒素反応が支配的な菌群構成の系が比較的短時間の培養で発現した。この系の成立過程および系で起こっている生化学的反応(脱窒/メタン発酵)について考察した。
温泉熱を利用した小規模メタン発酵装置の運転結果から、ウレタン担体よりも炭素繊維担体を発酵槽内に充填した運転期間の方がガス量、メタン濃度およびメタン収率ともに高かった。メタン発酵に適した炭素繊維担体が明らかになることで、より高効率なメタン発酵のシステム構築が可能になると考えられた。
東北地方沿岸部などの水産業地域では、水産加工業の残渣として大量の魚アラが排出されている。魚アラは有機物の含有量が多いため、メタン発酵の基質といて用いることが望ましいが、タンパク質濃度が高くメタン菌阻害が懸念される。本研究では、タンパク質濃度を低減するため、活性汚泥による原料の希釈、およびカキ殻による発酵性能の改善を目的として、魚アラの中温メタン発酵連続試験を行った。
食品廃棄物や家畜ふん尿等の廃棄物系バイオマスを300℃以下で炭化する低温炭化法に着目し、水分は除去しつつも可燃性物質をできるだけ確保し、発熱量と質量収率を確保できる炭化条件について検討した。発熱量と質量収率を考慮した炭生産効率を比較した結果、250℃-6hの条件が最も高かったことから、低いエネルギ供給で、かつ発熱量と質量収率の両者が高い炭化条件と考えられた。
家畜糞尿、竹等のバイオマス資源のバイオマスボイラーによる基礎的な燃焼特性を明らかにした。ダウンドラフト式ガス化・燃焼炉による燃焼温度は831℃、ロストル部通気による2次燃焼温度は71℃と、1次燃焼部分では800℃以上を確保できた。ロータリー式ボイラーによる牛糞ペレットの燃焼では、入気温12℃において826℃の燃焼温度を安定的に持続することができた。この様に両ボイラーで、800℃以上の安定的燃焼ができた。
食品加工残渣の堆肥化において、過乾燥となった材料にメタン発酵消化液を添加し発酵促進する方法を検討した。通気量制御を排気中二酸化炭素濃度1.5、2.5、3.5%で行った結果、有機物分解は22.4、29.8、29.6%と2.5%制御が適していた。消化液添加量は458、3513、458kg/m3であった。堆肥のEC値は4mS/cm以下、pHは7.4程度と、ECが比較的小さく、CN比も10以下であることから、作物栽培での肥料効果が期待できる堆肥製造ができた。
異なる堆肥材料(乳牛ふん、豚ふん、鶏ふん、下水汚泥)が堆肥化初期過程の温室効果ガス(CO2、N2O、CH4)の排出特性に及ぼす影響を調査した。その結果、全ての試験区において40-55℃および55-70℃の温度域でそれぞれの温室効果ガス排出速度のピークを示す各々2種類の微生物叢が存在することを示した。
MAP生成促進のために材料にMgCl2を添加による堆肥化では、材料温度の上昇の遅れや有機物分解率の低下が観察される。このため、MgCl2を添加した搾乳牛排せつ物の堆肥化について、生菌数の観点から検討を行った。生菌数の推移にはMgCl2添加による差が生じなかったが、MgCl2添加区の有機物分解率は明らかに低下していた。無添加区の堆肥化後試料の生菌数をMgCl2添加寒天培地により測定すると中温性細菌数が低下するため、MgCl2添加は堆肥材料の実際の生菌数を低下させているものと考えられる。
東京電力福島第一原子力発電所事故により発生する放射性物質で汚染された作物残さ、雑草、枝葉等の除染廃棄物を細断→乾燥→粉砕→混合→成型という減容化処理により、もとの容積の1/5~1/10に減容化して、安定的に保管できる処理技術を開発した。
作物残さ等による地域エネルギー供給のミュレーションモデルを用い、岩手県沿岸の被災地2市におけるエネルギー供給の可能性を検討した。対象地域の農業はナタネ導入の余地が小さく、20年後の農地由来バイオマスのエネルギー総量に対するナタネ由来エネルギーの割合はE市で約5%、F市で約3%と推計された。廃菌床再生燃料の割合はE市で約3%、F市で約8%と推計された。
ユーカリ葉の保存方法(乾燥後常温、未乾燥冷蔵または冷凍)や前処理(超音波処理、破砕)などが精油の抽出特性に与える影響を、水蒸気蒸留(WSD)および水蒸留(WD)によって実験的に検討した結果、乾燥・粉砕したユーカリ葉をリアクター内にて25 rpmで攪拌しながら抽出するWDにおいて、比較的高い精油収率2.02 mL/100gをより短い操作時間160分で得られることが示された。
- C-12
Coulometric Detection for Organophosphate Pesticides in Liquid Plugs by Microfabricated Flow Channel Based on Enzyme Biosensor.
- Jin WANG, Zhi CAI, Hiroaki SUZUKI, Yutaka KITAMURA, Takaaki SATAKE (Univ. of Tsukuba, member)
We report on an effective coulometric detection for organophosphate pesticides (OPs) in a microfabricated flow channel based on acetylcholinesterase (AchE) and choline oxidase (ChOx) bienzyme biosensor. Substrate plug and Enzyme OP plug were prepared in the unique flow channel with rhombus structure, respectively. Then a new plug was formed in the main channel after those two plugs mixed. The plug mixture was transported by air pressure from the capillary tube connected to the outlet of the channel to the detection area (working electrode) where hydrogen peroxide (H2O2) produced by enzymatic reaction between AchE-ChOx bienzyme and substrate would be detected. A good linear relationship between the generated charge and OP concentration was confirmed. The limit of detection (LOD) of Malathion could be achieved 3.3nM.
有効温度(ET)を指標として地中熱利用のヒートポンプを用いたスポット冷房システムを構築し、搾乳牛に対する効果を送風と比較し検証した。冷却COPは約2.7となり、乳量は1頭当たり日平均約3.1kg増加した。体温等をはじめとした生理関連にも効果が見られた。1日1頭当たり約161円の増収が見込まれた。
宇都宮大学付属農場の生乳生産システムにおける省エネルギ策として雨水利用システムの可能性を検討した。雨水利用システムは、水の需給バランスから、畜舎洗浄水として供給できる量的な可能性を持つことが分かった。雨水利用に伴ってシステム全体での電力消費量を3%程度低減する可能性が示された。
わら類などの草本系を始めとしたバイオマス資源について、灰分および発熱量を蛍光X線分析による元素分析から推定することを目指し、試験を行った。発熱量の推定値は、換算式間でも算定値に差が生じたが、実測値はその範囲内であった。
ミスト散布による豚舎内エアロゾル低減効果をコンテナタイプ離乳豚舎において明らかにした。設定粒子径7µの次亜塩素酸水散布により、0.7および1.0µmのエアロゾルが低減したが、空中浮遊ウイルス等への低減効果は認められなかった。
トマト生産残渣を材料とする堆肥化を良好に行う条件を調査した。水分は75%程度まで下げないと品温が大きく上昇する堆肥化にならなかった。菌資材や戻し堆肥の添加が有効で、通気量は材料1立米あたり毎分0.05立米程度が適量と考えられた。発酵熱の利用は現実的では無いと判断した。水分調整材の必要量を減らすために試作した太陽熱乾燥器では、35.6kgの生残渣が水分75%以下になるまで14日、消費電力9.6kWhを要した。
本研究では、北海道施肥ガイド2010に示されている標準施肥量を基にふん尿施与上限量から乳牛飼養可能頭数を算出し、この場合の窒素収支を試算することで、十勝地方における余剰窒素量を求めた。北海道施肥ガイドに基づいた余剰窒素量は、55[kg-N/ha]と試算した。今後、他の地域における余剰窒素の目標値を検討する。
養豚排水の安定的な処理のため、生物学的処理法の前処理として、有機性物質低減のための「凝集沈澱法」とアンモニア濃度低減のための「アンモニアストリッピング法」を組み合わせた複合処理法を検討した結果、生物学的処理法単独で処理した場合に比べ、有機性成分やアンモニア等を低減できた。
ハロゲン光源と近赤外分光器を用いて、発育鶏卵を測定した。その測定データから装置に使用するLEDの波長を選定し、その波長をピーク波長とするLEDを用いて、中死卵の判別を行った。正常卵の吸光度スペクトルは、中死卵の吸光度スペクトルよりも全体的に高くなった。LEDによる測定を行ったところ、総合で78%の判別率となった。また、一度判別された結果に対しさらに解析を加えることにより、解析精度を高めることであることが示された。
培養容器、収穫容器、減圧容器及び培地供給容器をフィルターとチューブを介して繋ぐことで、閉鎖式連続培養装置を構築した。光源別に藻類の増殖速度を比較すると、LEDの方が人工太陽光よりも速いことがわかった。近赤外分光装置によって培養液の光強度スペクトルデータを取得し、得られたスペクトルデータと個体数および乾燥重量の測定結果から、重回帰式による検量線を作成した。スペクトルデータの解析から、個体数はクロロフィルaとの相関が高いことがわかった。
- P-1
閉鎖系植物実験施設による根菜類の栽培と炭素固定試験
- 永井勝・新井竜司・鈴木静男(環境研)・久保恵理子・石岡正直(サイエンテック)・細田洋一(青森産技セ)・多胡靖宏・久松俊一・中村裕二(環境研)
地温を制御可能な根菜類栽培装置を制作して閉鎖系植物実験施設内に設置し、土耕によりダイコン及びニンジンを栽培した。生育段階ごとに単位葉乾重当りの総一次生産速度と光量子束密度との関係を求めた結果、弱光域での光利用効率と最大総一次生産速度は生育後期には減少する事が明らかとなった。
完全人工光型植物工場にてリーフレタスの栽培実験を行った。光源に蛍光灯と赤、緑、青、白を組み合わせたLEDを使用し、植物体の評価を行った。生体重や草丈は青色光照射に伴い減少傾向が見られ、照射割合が高いと過度な成長抑制が認められた。一方で、SPAD値は青色光照射により増加傾向が見られた。これに伴い抗酸化性の指標であるORAC値も上昇が確認された。
側壁の傾斜角度がパイプハウスの風圧力分布に及ぼす影響を明らかにするために、それぞれ90、70、60、50度の側壁傾斜を有する模型を使用した風洞実験を行った。その結果、側壁傾斜角度の違いは風圧係数の分布には影響を及ぼさないことがわかった。風上側の側壁傾斜角度が小さくなるに伴い、揚力係数が小さくなった。この結果は、風上側側壁に傾斜をつけることで、パイプハウスに作用する揚力を緩和できることを示す。
- P-4
園芸ハウスにおける気密性改善のための風よけアタッチメントの開発
- 熊﨑忠(豊橋技科大)・大月裕介・中西雅樹(トヨハシ種苗)・田中幹人(テクノシステム)・梅田大樹・伊村智史(サイエンスクリエイト)・三浦慎一(トヨハシ種苗)
園芸ハウスの気密性を高めるために、風よけアタッチメントを開発した。開発したアタッチメントによって、隙間換気を従来の半分に減少することを確認した。
分岐ダクトを用いた流れの様子について最適化することを目標とし、キュウリ栽培施設内での加温機からのダクト送風時において吹き出し風量などの物理的な計測を実施し、ベント部、ねじれの発生など圧力損失の特徴的な生成要因を把握し、改善点を認識した。
熱貫流率測定装置(林ら、2011)を利用して、外張りを農PVC、内張りを布団被覆資材(3種)または農PO(対照)とした、2重被覆の熱貫流率を測定した。また、外張り資材上面の放射伝熱量および、対流伝熱量を求めた。布団被覆資材の断熱性が農POより顕著に高いこと、布団被覆資材区と農PO区の対流伝熱量の差に比べ、放射伝熱量の差が顕著であることがわかった。
パイプハウスにおける暖房時の省エネルギー技術として、日中の太陽熱を集熱して夜間に熱を環流利用して暖房負荷を軽減するための蓄熱コンクリートを開発中である。本報告では、屋外に設置したトンネル内に普通コンクリートと厚さの違う2種類の蓄熱コンクリートを供試して蓄熱性に関する評価を行った結果を報告する。
小規模ため池を熱源に想定した実験用水槽においてヒートポンプによる小型パイプハウスの冷暖房運転を行ない、採熱効率に関する基礎的なデータを得た。
多様な地域資源を燃料とする菌床蒸気殺菌システムと廃菌床の再生燃料化装置とで構成されるエネルギー自給型シイタケ生産システムを開発し、熱効率の観点から検討した。蒸気発生および廃菌床燃料化に用いられる熱量は、木質燃料の持つ熱量の33%以下であった。廃菌床の処理に用いられた熱量は燃料の5%以下であった。
廃菌床燃料化システム実証プラントの実データを基にインベントリ分析を行い、改善策を検討した。燃料の約半分に約40kmの遠方から調達したバークを使用しても、灯油使用に比べて環境負荷が小さくはならない。環境負荷の低減を図るためには木質燃料の輸送距離を小さくし、システムの熱利用効率を高めること等が必要である。
現在開発中であるオンサイト酵素生産プロセにおけるコスト、CO2排出量、エネルギー消費について解析した。その結果、培養タンクの小規模化、酵素投入量の低減および酵素生産速度向上が必要であることが示された。
農地へ届く太陽光を作物生育に必要な光量確保しながら太陽電池に効率よく分配することにより、発電量を最大化したい。このためには、作物の生育に必要な照度、日射量、温度、湿度等を測定、記録できる安価なデータロガーが必要となる。そこで、安価な太陽電池を照度計、日射計の代替として使用し、測定データを記録できる安価なデータロガーを試作し、その性能を確認した。
農作物を作りながら太陽光発電するソーラーシェアリングが注目されている。生育する作物の種類や、生育状況に応じて太陽光の分配比率をコントロールすることで、効率を最大限に制御したい。作物の生育状況に応じて必要となる日射光を検証するために、2種類の野菜を用いて日射光の透過率の違いによる作物の生育調査と結果の考察を行った。
鶏卵の紫外光励起ケイ光スペクトルを測定する計測装置を組み立て、その計測装置の特性を確認した。紫外光が直接分光装置に浸入するのを防止するために分光装置に接続された光ファイバープローブの前に短波長側を遮断するカットフィルターを設置した。550nm以下を遮断するカットフィルターを用いることにより、鶏卵のケイ光強度が定量化できた。
貯蔵中の腐敗低減技術の開発を目的として、貯蔵温度がショウガの品質に及ぼす影響について検討を行った。その結果、ショウガ貯蔵において、貯蔵初期の低温障害を避けるための温度管理の重要性、長期的な視点での温度管理技術の開発による品質低下防止の可能性がそれぞれ示された。
味噌には様々な抗酸化成分が含まれる。発表では8種の割合で大豆麹を添加した味噌を熟成させ、ORAC値等の変化を解明した。結果は製麹によりORAC値が向上すること、大豆麹が多いほど色の熟成が促進されたこと、ORAC値と色の相関が高いこと、官能試験でも大豆麹が多い味噌は熟成が促進されること等が確認できた。
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新規バルクコンテナ充填キャベツの振動伝達特性
- 椎名武夫・Manasikan THAMMAWONG(食総研)・兼田朋子(徳島県農総セ)・中村宣貴(食総研)・吉田誠・曽我綾香(神奈川県農総セ)・中野浩平(岐阜大)
青果物流通におけるコスト・環境負荷の同時低減を目的として、新規バルクコンテナによる物流技術の開発のために、青果物をバルクコンテナに充填して流通させる際の振動衝撃による損傷防止技術開発の一環として、多段積載キャベツの振動伝達特性について検討した。
摘果温州みかん育苗ポットのトマトおよびナスを用いた実証試験を行った。摘果温州みかんの混合割合が多いほど分解性が向上し、育苗ポット中の窒素化合物、リン酸化合物およびカリウムの土壌中への溶出が示唆された。
本研究では、吸引通気式堆肥化施設において家畜ふん堆肥から回収した発酵排気の持つ熱量により水を加温して、118頭の搾乳牛群の飲水として供給するシステムを構築し、供給できる温水の量や温度および熱収支を明らかにした。その結果、27.5kW相当の熱量を持つ発酵排気を利用して、平均33.3℃の温水、14.4m3/d(牛1頭あたり123L/d)を牛群へ供給できた。
高水分の乳牛糞尿においては、十分な量の堆肥化副資材が必要とされている。しかし従来から用いられている大鋸屑・稲藁等は入手の困難さが増しており、代替する地域廃棄物等が求められるものの、経験のない資材の導入が堆肥化に及ぼす影響は定かではない。ここでは、自給飼料として注目されているトウモロコシの、茎葉残渣の副資材としての利用において、資材性状と昇温の関係、また他資材との比較の観点から検討を行った。
搾乳牛排せつ物と肥育牛排せつ物とを用い、MgCl2を添加した堆肥化実験を15日間行った。搾乳牛ではMAPが生成されなかったが、肥育牛ではMgCl2添加によりMAPが増加した。搾乳牛排せつ物はリンが少なく、そのリンの変化性も乏しいためにMAPが生成されなかったものと考えられる。またMgCl2添加によりNH3揮散はいずれの排せつ物も最大30%程度低減され、その材料pHは無添加区よりも低かった。MgCl2添加による揮散低減は材料pHの抑制とMAP生成という2つの要因があるものと結論付けられる。
養豚農家での感染症の早期発見は重要である。本稿ではくしゃみ音の発生回数を、マイクロフォンを用いて監視することを目的としている。従来手法での誤識別を低減するため、識別に用いる標準サンプル(テンプレート)を複数用いることで、くしゃみ音に似た雑音環境においても感染状況の判別に有効であることが確認された。
適応フィルタを用いた歩行動物の動的質量計測を提案する。動物が計量台で停止しない場合、計測信号が整定することが期待できないとともに、動物の動きに伴う外乱信号を含む。このため、計測信号から動物の動きによるダイナミクスを消去する必要がある。適応フィルタにより、これらの信号を除去し歩行動物の質量を計測できることを示す。実験結果で、実用上充分な精度が得られることを確認した。
電気インピーダンス法による葉菜類の非破壊鮮度評価法の有効性の検討を目的とし、新鮮試料および鮮度低下試料のインピーダンス特性の比較を行った。その結果、鮮度低下に伴う細胞外抵抗Reの減少が確認され、細胞膜損傷、含水率低下による影響が示唆された。これより、電気的特性を指標とする鮮度評価の可能性が示唆された。
害虫駆除を目的とした強力超音波による木材加熱を試みた。複数の含水率を持つ試料に超音波加熱を行ったところ、温度分布に違いが確認された。これは、含水率が異なることによる熱容量の変化に起因するものであると考えられる。以上より、含水率が強力超音波による加熱に影響をあたえることが示された。
被災農地の地下水脱塩に使用する逆浸透膜(RO)膜装置の造水性能は小型実験装置で得られるデータを基に試算できることを確認した。また、被災地では冬期の凍結防止対策が重要であり、簡易で低コストな保温(管理)方法の開発が必要となることが分かった。