発表要旨(1996年度大会)
- A-1
Incubation of Brown Rice with Different Embryo Viabilities
- Miao Y., M. D. Agad, S. Yoshizaki (Univ. of Tsukuba)
The effect of incubation on viscosity properties of milled rice flour from brown rice with different embryo viabilities were investigated. In gelatinization test, viscosity properties and reaction rate constant of the samples with embryo viabilities changed with incubation time.
物理的環境制御により玄米の発根を抑制した発芽を発生させた発芽玄米を製造するための発芽制御法について検討した。玄米を完全浸漬、浸漬水を流動化することにより発芽過程初期の発根を抑制できた。また、浸漬水の発芽阻害因子を除去することにより発芽制御の効率化の可能性が示唆された。
簡易迅速な米質評価手法として色彩色差計を用いて精白米表面色の計測し、炊飯溶液の性質・米飯のテクスチャの精白米表面色による予測を試みた。その結果、簡易な全粒形態の精白米表面の明度から炊飯溶液の固形物の質が予測でき、同方式が炊飯溶液の固形物の質を迅速に計測する一つの方法とみなされた。
実用規模の一重鋼板製丸ビンによる籾の長期間貯蔵の可能性を把握するために、平成6年12月1日から平成7年6月27日に亘って、スターデポ(SSD-8M)を供試して実験を行なった。籾の形質変化、化学組成、発芽率、脂肪酸度、食味等の数値からすると、対照区に比べて差はなく、6月中旬までの可能性がうかがえる。
精米工場、カントリエレベータで採取したヤケ米4サンプル6点について、発芽率、ミクロフローラ等を検討した。ヤケ米は発芽率が低下しているほか、総生菌数も著しく少なく、その中でもいわゆるRed Pseudomonasの占める値に特徴があり、程度の甚だしいヤケ米でその比率が小、甚だしくないもので大となっていた。Red Ps.に起因するヤケ米が存在することは証明できなかった。
高水分農産物に対する自動的で連続的な水分測定技術を確立するため、センサーとしての高周波コイルの電気的な特性を解析した。コイルと籾が直接触れないA型コイルと、籾とコイルを0.01mmのテープだけで隔離したB型コイルのインダクタンス特性がほぼ変わらないことが分かった。コイルの巻回数と籾水分が変化すると、コイルの共振周波数も変わる。
乾燥前に米の品質を判定し、差別化乾燥等を可能にするため、乾燥前の高水分籾をインペラ籾すり機で脱ぷした玄米からNIR分析計によって蛋白質およびアミロース含量および食味を予測するシステムの予測精度を検討した。2次微分スペクトル、選択波長3波長による化学分析値と予測式値の相関係数は、蛋白質およびアミロースとも0.94を得た。これは差別化乾燥の用途としては十分な精度と考えられる。
ウォーターカーテンハウスの散水ノズルをフォグノズルとすると、散水量の著しい節減がえられるが、更に保温性を向上させるために、屋根面のウォーターカーテンの上に可動カーテンを設置し、このカーテン間を散水する方式を検討した。これにより8.7%程度の放熱抑制効果が得られた。
簡易スプリンクラーは、急傾斜かんきつ園の潅漑、防除で多目的利用されている。スプリンクラー・ノズル支柱の設置角は園地の勾配が急に(0→39度)なると大きく(90→108度)なる。ノズル水圧は表示値4kgf/cm2に比してやや小さく、その圧力損失は送水高さと正の相関があり、水圧3.0(kgf/cm2):散水量3.3(L/min)であった。散水半径は平坦地で平均7.0mあるが、傾斜地、20度では上側6.1m+下側8.8m、下方の距離が約1.4倍大きかった。
クスノキの1年生苗の効率的育成条件として、越冬前は被陰処理によって成長を促進させ、越冬後は被陰を解除して苗質の改善を図るとともに定植後の環境に順応させる手順が有効と考えられた。ただし、光合成特性の季節変化から判断すると、苗が被陰解除後の環境に生理的にも完全に順応するためには、半年以上の期間を要した。
リンゴの表面色と糖度・酸度などとの相関の高い部位を見いだすためにリンゴを柄あ部、着色良好部、着色不良部、がくあ部に分け、各部位の表面色を試作RGBカメラにより人の目に見える範囲により近い範囲で色を計測した。糖度・酸度はリンゴの部位を果柄部を上にして6区画、各1区画を内層、中層、外層に分け、6×3=18に分け、各18部位の糖度・酸度を求めた。
青果物の形態と真空冷却効果の関係を明らかにするために、真空冷却中の材料の水分蒸発特性に関係が深いと指摘されている比表面積を形態の指標として選び、先ず、現在真空冷却されている代表的な青果物の比表面積を測定し、次に、これらの青果物の真空冷却特性を計測して新しく冷却効果指数を定義した。最終的に指数を用いて冷却効果を評価する方法を検討することにある。
複雑な形態を有する青果物の代表としてブロッコリを選び、その分割試片を供試材料として、マイクロスライサ画像解析システムを用いてその表面積及び比表面積を計測した。これらの分割紙片の測定結果から個体質量と総表面積および比表面積を推算する方法を提唱した。
フリーストールでの一群管理における群管理システムの改善を図るため、乾電池仕様の簡易な個体識別装置を試作し、これを組み込んだドアフィーダによる個体管理システムについて検討した。試作したドアフィーダの利用性は一般給餌柵と差が無く、一般給餌柵とドアフィーダを併用した給餌システムにより、効果的な個体管理が可能である可能性を採食行動から明らかにした。
フライアッシュを主成分とし、セメント含有量の小さい土壌硬化材を用いて堆肥盤およびパドックを整備する方法について検討を行っている。硬化材の混合により土壌硬度はおおむね増加し、土の透水性はほとんど変化しない。施工後短期間の泥ねい化防止効果は確認されたが、耐久性、土性や土の有機物含有量の違いによる効果の差異、適切な施工厚や混合率などの検討を継続中である。
天井スリットから入気する方式の無窓鶏舎を対象に、排気口の位置、入気方向、舎内障害物が気流分布に与える影響を模型実験により検討した。障害物による気流パターンの変化が顕著で、気流の減衰が著しく、特に真下への入気は散逸エネルギーが最も大きくなった。循環流の大きさと位置から排気口位置が下で入気方向が30°の場合が良い気流パターンを与えると考えられた。
豚体と周囲物体との放射熱交換量を豚体形状に基づいて算定することを究極の目的として、周囲物体(矩形面)に対する27kg豚サーフィスモデル(三角形パッチで構成した3次元多面体グラフィックスモデル)の形態係数をコンピュータグラフィックス技法と立体角投射法則を用いて豚体形状に基づいて解明した。
全国のフリーストール牛舎の中から、184軒を対象にして、作業者が牛舎内に滞在する密度・時間(滞在強度と定義)の実態を調べた。その結果、別棟の場合の休息舎およびパーラならびに同一棟の場合の牛舎における全国の平均的な滞在強度はそれぞれ、84および187ならびに271[人·時間/50m2]と極めて低い値であった。
家畜糞尿管理方式の異なる2事例のフリーストール牛舎(固液分離・攪拌・曝気し、地下埋設管により輸送・貯留後撒布しているタイプと、通常の堆肥処理しているタイプ)を対象として、全投入化石エネルギに対する家畜糞尿管理に要するエネルギの割合や牛舎全体の投入産出比を求めて、2つの糞尿管理方式を比較した。
本研究は豚糞表面からのアンモニアの物質伝達率を求め、畜舎内環境要因との関係を調べた。豚糞表面のアンモニアの物質伝達率は気流速が速くなるに従い、また、気温が上昇するに伴い大きくなることが示された。従って、アンモニア発生量は気温が高くなるに従い、アンモニアの飽和蒸気圧の上昇と相まって増加するといえる。これが畜舎の高温時に臭気が強くなる要因と考えられる。
園芸ハウス土壌の多くは、継続的長期栽培での過剰施肥や被覆材による降雨遮断型環境条件下でいわゆる土壌劣化の過程にある。栽培土壌環境の改善のための方策を探るため、ここでは1作付け期間中における土壌化学特性の変動経過、すなわち土壌のpH、電気伝導度(EC)、水溶性イオン含量および交換性イオン含量などハウ土壌の化学性の変化について分析し、基礎データを得た。
貯蔵施設内の流れの数値計算により得られた数値データを読み込み、表示断面や表示対象データを選択した後、ベクトルやスカラー分布として表示できる可視化モジュールを作成した。また、トレーサーであるパーティクルを放出した後、その動きをアニメーションにより表示するモジュールを作成した。これにより、貯蔵施設内の複雑な気流性状や換気性能を調べることができた。
集出荷施設の規模の最適化及び効率的な配置を目指し、入荷量、持ち込み時間、ラインの稼働時間及びオペレータの労働量などを調査した。生産者の入荷量の各ラインへの分配はほぼ均等であったが、2段積み段ボールの荷崩れやオペレータの熟練度の差により処理量には差があった。荷受け工程を待ち行列理論で解析し、実際の荷受けに近いシミュレーション結果を得た。現行配置では検査員の処理能力が荷受け工程を処理能力を決定していた。
貯蔵庫内の環境特性解析のため、大型貯蔵庫(9×6×5H(m))、環境計測機器(多点風速計、ハイブリッドレコーダ)、数値流体解析装置(EWS、汎用流体解析ソフト)等で構成されるシステムを構築した。施設や空調設備の形態、制御方法、産物の配置や量の影響を、計測とシミュレーションを組み合わせて解析できる。
空気冷却において、容器の冷却面積や庫内風速が冷却速度に与える影響を1箱及び複数の箱での冷却実験により明らかにした。冷却面積や風速を変化させたときの冷却状況はニュートンの冷却の式に回帰され、冷却速度(冷却曲線の傾き)との間にそれぞれ相関が得られ、積み方を変えたときに冷却速度がどの程度変化するかを推定することができた。
強制開花処理により開花が早く進み、25℃及び30℃で処理した場合、ステージ1及び3の蕾がステージ6に達するまでの日数がハウス内生育の約2分の1に短縮できることが明らかとなった。しかし、30℃で処理した場合、花弁の色調差が大きくなった。従って、カーネーションの蕾強制開花に適した蕾ステージはステージ3以前、処理温度は25℃であると考えられる。
切り花のより効率の良い流通技術を求めるための基礎調査として、平成7年3~12月に東京都中央卸売市場大田市場花き部で368個の切り花の箱の品名、生産地、出荷団体、包装資材の種類・寸法、品種表示等の位置などについて調査を行った。横型のダンボール容器350個の箱の大きさは、花の種類によって異なるが箱の長さの分布は大きく、幅・深さの分布は小さかった。
気温が変動する環境下でキャベツを6週間貯蔵し、気温変動が葉の色の変化に及ぼす影響および包装形態の違いによる影響を検討した。その結果、貯蔵中のキャベツの色変化(色差)は定温貯蔵に比べて大きいが、フィルム折込み区では段ボール箱詰め区やバラ貯蔵区に比べて色変化が小さかった。また、平均品温が若干高くても気温変動のパターンによっては色変化が小さくなる可能性が見られたが、より厳密な測定の必要を認めた。
青果物の貯蔵あるいは鮮度保持技術においては呼吸特性の解明とデ-タの蓄積が重要である。伊予柑、ネ-ブル、イチゴを用いて閉鎖システムによる測定を行った。1. 容器内のO2、CO2濃度変化は指数関数でほぼ近似することができた。2. O2濃度と呼吸速度はほぼ比例関係にあることが分かった。3. 大気ガスが呼吸基質となる場合の呼吸モデルとして、O2濃度と温度を変数にしたArrhenius式の導入が示唆された。
ハウス豚舎の発酵床の性状を調査した。水分は乾燥部表面では20%台、深部で40~60%であり、湿潤部では表面で40~60%、深部では60%台であった。床の浅部では総窒素含量が高く、深部ほど少なり、アンモニア態窒素が占める割合も浅部が多く、深部にほど少なくなっている。pHはほぼアンモニア態窒素に対応して浅部が高く、深部が低くなっている。
ロックウールを脱臭メディアとする微生物脱臭装置の実用化を目的とし、牛ふんの実用堆肥化施設に付設した実用規模システム脱臭槽内部の情報を収集した。その結果、運転条件等の変化に伴い、深さ約1.5mを境にしてメディアの物理化学特性に違いが生じ易いことが認められ、充填槽の適正深さや所要動力軽減を検討する上での有用な情報となった。
ナスとナツツバキの花粉管生長はコンポストの成分のフミン酸、一定量の硝酸態窒素、粗灰分間に正の相関を示し、アンモニア態窒素、揮発性有機酸、ECとの間には負の相関を示した。花粉管はコンポストの各成分に著しい感度があり、花粉管の生長の大きさは、コンポストの完熟度および品質評価の判定にに有用と考えられる。
数種類のニオイセンサーで湖水のアオコ悪臭を測り、その発生源を探った。感度や反応速度の面から半導体センサーが有利であった。半導体センサー使用で湖水とその底泥から硫化水素の発生は他のガスと比べて高く、また、アオコ生物の腐敗過程からもその著しい発生が見られた。
富栄養化によるプランクトンの増大はプランクトン食の魚類の増殖につながるため、魚類生産という点で研究が行われている。本研究ではコイとハクレンの組み合わせにより、アオコ等の藍藻の捕食を検討する。微生物製剤(EM製剤)の溶液にコイの餌を浸積したものを作成し対照区として微生物製剤を使用しない区を設け稚魚から成魚まで飼育し水質および体重増加量を計測する。
中温メタン菌の培養温度を35℃から20、15、5℃に急激に低下させたメタン発酵実験では、5℃のみ発酵を停止した。5℃で長期間培養したメタン菌を5℃間隔で昇温・降温を行った実験では、昇温時の方が降温時よりも消化ガス発生量は高かった。降温実験では10℃から消化ガス発生は停止した。これらの結果は、培養温度とメタン菌叢の変化が関係しているものと考えられた。
馬鈴薯でんぷん廃水処理へのメタン発酵法の導入を検討した。馬鈴薯を原料とする合成廃水の半連続供給によりメタン発酵過程の二相分離が達成された。また酸発酵槽における有機酸生成に関して最大収率係数0.64、自己分解係数0.16なる反応速度定数が得られた。一方でんぷん工場から搬入した実廃水の処理では、VAの蓄積による発酵機能の大幅な低下が観察された。この原因としてスタートアップ時のVA濃度の高すぎたことが推察された。
家畜糞尿を圃場還元する際に問題となる糞尿中の有害細菌の指標として糞便汚染指標菌である大腸菌群菌数について検討した。糞尿中の大腸菌群菌数は殺菌温度55℃以上で減少し、80℃では検出されなかった。メタン発酵消化液中の大腸菌群菌数は35℃では投入原料とくらべ大きな差は認められなかったが、42℃での減少量は明かに多く、加熱殺菌を行った区では皆無に近い結果を得た。
岩綿(ロックファイバー)を担体とする酢酸資化メタン菌による廃水処理においてロックファイバーを用いたリアクタの特性を調べた。岩綿へのメタン菌の固定作用がみられた。岩綿の使用によりリアクタの誘導期が短くなり、基質の消費速度は懸濁培養のみのものより早かった。連続培養を行った場合でのより安価で効率の良い微生物担体としての利用が期待される。
CO2/H2系メタン菌群の従属栄養菌について検査を行った。まず、2%およびグルコース、スクロース、キシロース、グリセロール各0.05%を入れた培地に101kPaのN2/CO2(80/20,v/v)気相で試験管でCO2/H2合成系メタン菌を培養した。その結果、3日間に6mLのメタン菌培養液に対し、2.5mLのメタンガスを生成した。この結果からH2資化性メタン菌はH2基質が無くなる場合に、有機物の分解からメタン生成能力を持っている。
微生物製剤(EM)による生活廃水の浄化能力を評価した。実験室規模のモデルおよび有機合成廃水により実験を行った。水路を流下させることによるBOD、CODおよびT-Nの除去率はEM無添加で平均滞留時間2日の場合それぞれ93%、79%、70%であった。EMを添加した場合は各除去率が若干低下した。BOD、COD、T-N、T-Pについて得られたデータに対するt検定(有意水準5%)の結果、除去率には有意な差は見られなかった。
宇宙開発等の局面で注目されている閉鎖生態系生命維持システム(LSS)技術において、そのさまざまな構成要素を結合した場合のシステム挙動に関する研究が必要とされている。本研究では藻類により魚類への酸素供給を行う小LSSを想定し、シミュレーションによって系内の変動とそれに伴う系の破綻を予測し、その解決法を探った。