バックナンバー要旨

56巻1号(2025.03)

  • ノート
  • 冬季の堆肥化を支援する堆肥加温システムの開発
  • 宮竹史仁・倉富彩南・岡本壮一

 本研究は,寒冷地域における冬季の堆肥化プロセスの効率改善を目指し,新たに開発した「堆肥加温システム」の効果と運用コストを評価した。厳冬期に実施された試験では,氷点下20 °C以下の過酷な環境下においても,本システムの導入により堆肥化が円滑に進行し,冬季特有の堆肥化の遅延や停滞が解消された。また,システムを導入していないエリアへの切り返し後でも堆肥温度は同様に上昇し,堆肥加温システムが堆肥化プロセス全体の進行にも寄与することが示された。さらに,運用コストは1日1台あたり1402円と算出され,従来の通気配管から加温空気を送風する方式と比較しても,大幅な運用コストの削減が示唆された。これらの結果から,堆肥加温システムは,厳冬期の堆肥化促進において高い実用性と効果を有し,寒冷地域における堆肥化施設の管理において有望な手段であると考えられる。

キーワード:堆肥化,冬季,加温システム

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56巻2号(2025.06)

  • 技術論文
  • 近赤外分光法を利用したエダマメの食味評価
  • 古野伸典・鬼島直子・夏賀元康

 近赤外分光法により,莢付きのままでエダマメのスクロース含量と遊離アミノ酸含量を推定する検量線の機種間の適用性を検討した。旧型近赤外分析計(Infratec1241)向けに作成したスクロース含量と遊離アミノ酸含量を推定する検量線を現行近赤外分析計(InfratecNOVA)での計測に用いたところ,両成分とも当該検量線にBias補正を行えば実用上問題なく適用できると考えられた。
 山形県産の茶毛系エダマメとして備えるべきスクロース含量と遊離アミノ酸含量の基準を設定するため,食味水準に差を設けたサンプル群(2品種×5水準)を準備して食味官能調査を行った。その結果,先行研究において「茶毛系えだまめ(ダダチャマメ)の成分がほぼ入る」として示されているスクロース含量と遊離アミノ酸含量が,「山形県産エダマメとしてふさわしい食味」を示す基準として妥当な設定であると考えられた。  生産現場から出荷されている茶毛系エダマメの食味水準の把握のため,山形県庄内地域の生産組織を対象に広域調査を行った。調査対象となった249サンプルのうち,92%が「山形県産えだまめとしてふさわしい食味」と考えられる範囲内に分布した。

キーワード:エダマメ,光センサー,スクロース含量,遊離アミノ酸含量,近赤外分光法

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56巻3号(2025.09)

  • ノート
  • センサー故障検知および異常出力値補正機能を有する温室栽培環境計測システム
  • 大橋雄太・土屋遼太・石井雅久・於保拓高・関航太郎・森山英樹

  作物が密集した温室内は高温多湿な環境により,各種環境センサーの劣化が発生しやすい。したがって,温室内で安定した環境計測・制御を実現するためには,センサーの故障検知および異常出力値補正機能を有するセンシングシステムが必要である。そこで,本研究では,一つの環境要素に対して複数(3つ以上)のセンサーを用いたセンサー故障検知および異常出力値補正機能を考案し,気温・湿度を対象に動作試験を行った。動作試験では,複数のセンサーの測定値の相互比較から,センサーの故障の有無および故障したセンサーの特定を行った。故障を特定したセンサーを除いたその他の測定値の平均値(補正値)を出力することで,正しい測定値を出力可能とした。また,劣化によりセンサー間の測定値のバラツキが増加すると仮定し,測定値の変動係数の推移から劣化を判定する仕組みを考案した。動作を確認するため,マイコンに搭載された温度センサーおよび湿度センサーの一つに疑似的に不具合を発生させた。不具合発生後,故障したセンサーが特定され,故障したセンサーの値が除かれた補正値が出力された。また,不具合発生と連動し,センサーの劣化の指標に利用する変動係数が上昇した。以上より,本研究で開発した仕組みを温室栽培に用いると,センサー故障による環境計測や制御の不安定化を防ぐことができ,安定した作物生産に寄与する。

キーワード:施設園芸,気温,湿度,センシング,環境制御

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