バックナンバー要旨

47巻1号(2016.03)

  • 研究論文
  • 園芸用パイプハウスの風荷重および雪荷重による崩壊過程
  • 高橋和也・植松康

 我が国で一般に用いられている園芸用パイプハウスを対象として、風荷重あるいは雪荷重を受けた際、崩壊に至るまでの過程を非線形有限要素解析によって明らかにし、パイプハウスのより合理的な耐風・耐雪設計法を確立するための基礎的知見を得た。
 風荷重に関しては、変形に伴う風圧分布の変化がその崩壊過程に大きく影響することが予想されるため、風速を徐々に増大させ、変形に応じた平均風圧係数分布を数値流体解析で求め、その結果を新たな荷重として用いるという繰り返し計算を行った。また、雪荷重に関しては、風によって積雪分布が不均一になることを考慮し、一様分布に加えて不均一分布の影響も考慮した。なお、解析はいずれも二次元モデルを対象としたものである。
 風荷重、雪荷重いずれに対しても、解析結果は強風や大雪によるパイプハウスの崩壊状態を概ね妥当に再現することができた。また、本解析結果との比較により、現在一般的に行われている設計法の妥当性並びに余裕度についても検討した。

キーワード:園芸用パイプハウス、閉鎖型、崩壊過程、風荷重、雪荷重、弾塑性解析、流体構造連成

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  • 技術論文
  • 全自動長ねぎ調製機の開発(第1報)-自動根切り機構と自動皮剥き機構の開発-
  • 藤岡修・大森定夫・松本弘・木暮朋晃

 長ねぎ生産における投下労働時間の1/3を占める調製作業の省力化を目的として、自動根切り機構、自動皮剥き機構を開発して、これらを組み込んだ全自動長ねぎ調製機の試作機を製作した。
 試作機を現地実証に供した結果、作業能率は約500 本/h∙人、根切りの適切り率は約94 %、皮剥きの適剥き率は約91 %、製品率は約96 %であった。熟練作業者による慣行作業と比較して、作業能率は約1.5倍、かつ作業精度はほぼ同等の能力を有することを明らかにした。また、作業時騒音を供給者の耳元において87 dB(A)まで低減することができ、防音効果を有することを確認した。
 全自動長ねぎ調製機は2002年に市販化され、長ねぎ生産の省力化に貢献している。

キーワード:長ねぎ、根切り、透過型光電センサ、皮剥き、圧縮空気、自動化機構

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  • 技術論文
  • 全自動長ねぎ調製機の開発(第2報)-試作機の高能率化と現地実証-
  • 藤岡修・大森定夫・松本弘・木暮朋晃

 全自動長ねぎ調製機の試作機(1号機)を高能率化するため、2本同時処理を可能とした2号機を試作した。
 2号機を秋田県と大分県の長ねぎ産地において現地実証に供した結果、供給者2名での作業能率は約900~1200 本/h、根切りの適切り率は約91~95 %、皮剥きの適剥き率は約87 %、製品率は約96~97 %であった。熟練作業者による慣行作業と比較して、1人あたりの作業能率は約1.3~1.7倍に向上し、かつ作業精度はほぼ同等の性能を有することを確認した。なお、供給者1名で作業を行ったところ、作業能率は約820 本/(h∙人)、慣行比約2.5倍という結果が得られ、作業者の習熟によって能率向上が図られることが示された。また、1号機と同様に作業時騒音を低減することができ、防音効果を有することを確認した。
 全自動長ねぎ調製機は2002年に市販化され、長ねぎ生産の省力化に貢献している。

キーワード:長ねぎ、根切り、皮剥き、自動化機構、高能率化

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  • 技術論文
  • 共乾施設に導入された省スペース型循環式乾燥機の性能に関する調査研究
  • 𡈽方享・中谷紘志・松田昌万・佐竹隆顕

 国内で稼動している穀類共同乾燥調製(貯蔵)施設の多くは設置年数が15年以上経過し、施設の機能を維持するためのコストの増加と利用料金を中心とした収入のバランスをとることが課題となっている。
 近年、共乾施設の運営実態に対応させるべく従来の共乾施設向け循環式乾燥機の構造を小型化した省スペース型の乾燥機が開発・実用化されている。この乾燥機は従来機の容量・機能を維持した上で構造を小型化して昇降機を含めた全高を20 %削減している。これによって既存施設への入れ替え・改修のための必要工事を削減することや新設の際の建物を小さくできること、その結果として低コスト化を図ることを目的としている。加えて穀物の流路が短くなることは穀物自体の品質劣化の軽減や乾燥機本体の耐久性の向上への寄与が期待されている。
 乾燥機は共乾施設の中心的な機能を担う設備であることから、実用化された省スペース型循環乾燥機の基本性能の検証試験を行い以下の結果を得た。
 満量張込みおよび端量張込み時で実稼動時に実施した籾の乾燥試験の結果、乾減率は概ね0.6 %/h、処理能力は 32 t/hであり規定の能力が確認された。乾燥中の穀温は基準である35 ℃を概ね下回り、乾燥前後の重胴割れ率の増加はみられず、品質面での問題はなかった。
 さらに、除去水分1 kgに対する投入エネルギ量は4.7 ~5.5 MJ/kgであり、これまでの報告例(5.7 MJ/kg等)に比較して低く抑えられていることが確認され、乾燥機の性能として小型化と機能を両立させ、実利用上問題のないことが確認された。

キーワード:共乾施設、循環式乾燥機、乾減率、胴割れ粒、除去水分あたりエネルギ

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47巻2号(2016.06)

  • 技術論文
  • 共乾施設に導入されたOEM遠赤外線乾燥機の性能に関する調査研究
  • 𡈽方享・中谷紘志・松田昌万・佐竹隆顕

 国内で稼動している穀類共同乾燥調製(貯蔵)施設の多くは設置年数が15年以上経過し、施設の機能を維持することとそのコストのバランスをとることが課題となっている。
 近年、こうした共乾施設の運営実態に対応させるべく海外製の遠赤外線乾燥機が国内メーカー扱いで導入されている。この乾燥機は燃料消費量の低減効果に優れている遠赤外線加熱方式をとっていることに加え、OEM品を利用することで設置導入にかかわるコストを低減させている。これによって既存施設への入れ替え・改修の際の建設コストおよび導入後のランニングコストの削減が期待されている。
 乾燥機は共乾施設の中心的な機能を担う設備であることから、実用化が進みつつあるOEM遠赤外線乾燥機の基本性能の検証試験を行った。
 その結果、実稼動時に張込み量を満量にして行った際の張込み質量は20.2 t、乾減率は0.6 %/hとなり仕様能力が確認された。乾燥中の穀温は基準である35 ℃を概ね下回り、品質評価の指標である乾燥前後の重胴割れ率の増加は認められなかった。また、除去水分1 kgに対する投入エネルギ量は4.2~4.8 MJ/kg-水であり、これまで国内で生産された遠赤外線を用いない従来の穀類乾燥装置報告例(5.7 MJ/kg-水等)に比較して低く抑えられていた。
 これらの結果により乾燥機の基本性能と省エネルギ、低コスト化を両立させ、実利用上問題のないことが確認された。

キーワード:遠赤外線乾燥機、乾減率、共乾施設、除去水分あたりエネルギ、胴割れ粒

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  • 技術論文
  • 薪ボイラーでのペレット燃料利用の可能性
  • 金井源太・小綿寿志

 薪ボイラーでのペレット燃料の汎用利用を目的に、木質ペレットおよびジャイアントミスカンサスペレットを供試燃料とし、試作した薪ボイラーを熱源に利用する循環式乾燥機を燃焼装置として検討した。ペレット燃料の安定燃焼をはかるため、着火位置、燃料調整板および燃焼制御シートの炉内への設置について検討を行った。
 ペレット燃料への着火位置を炉内の空気の下流側とすると、上流側に着火するより燃焼時間が長くなる傾向が認められた。
 ペレット燃料は炉内の隅など燃焼空気が供給されない部分に燃え残るため、燃料が隅に残らないよう燃料調整板を設置することで、運転時間、出力、効率の向上が認められた。
 薪と比較して燃焼速度が速いペレット燃料の表面積を制限し、熱利用可能な燃焼時間を延長させることを意図し、燃料上に燃焼制御シートとして高温用断熱材を設置した結果、燃焼時間には明確な効果はなかったが、煙の発生する時間を短縮する効果が認められた。
 ジャイアントミスカンサスペレットは、木質ペレットと比較して、煙の発生時間が長い傾向が認められたが、薪ボイラーでの燃料利用に際して大きな問題点は無かった。

キーワード:薪ボイラー、ペレット、循環式乾燥機、固形燃料、ジャイアントミスカンサス、熱効率

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  • 技術論文
  • 共乾施設に導入されたサイロ冷却システムの実稼働性能に関する調査研究
  • 𡈽方享・和田聡一・中谷紘志・松田昌万・佐竹隆顕

 共乾施設に搬入される米麦の品種変更や有利販売のために、外気温が高い夏場での刈取り・乾燥が行われる事例が散見されるようになった。
 火力乾燥方式の乾燥機を有する共乾施設の課題の一つに、これらを背景にした外気温が高い環境下における乾燥・貯蔵への対応がある。すなわち、穀類を乾燥するために外気を加温する必要があるものの、穀類の品質保持の観点から加温には限界があること、貯蔵に入る前の通風による冷却は外気温以下には下げることができないこと、などである。
 貯蔵におけるこれら課題に対する対策の一つにサイロ冷却システムがある。サイロ冷却システムの導入は、貯蔵開始時に穀温が高い米麦の貯蔵や、外気温が高い状態におけるサイロ壁面からの侵入熱の影響を低減する効果が期待される。
 サイロはカントリーエレベータの中心的な機能である貯蔵を担う設備であることから、実用化が進みつつあるサイロ冷却システムの基本性能について実機での検証試験を行い以下の結果を得た。
 サイロ(貯蔵容量300 t)の冷却時間を17~44時間とした調査における供試サイロに通風した冷却空気の温度は16~18 ℃、湿度が平均75 %RH程度となった。乾燥機の冷却工程を省略し、250 tを張込んだ試験区では、初期穀温36 ℃程度であった籾が33 時間程度で目標の穀温20 ℃となった。その際の排気湿度は80~100 %RHとなった。また、冷却に伴う供試籾の水分の変化は見られなかった。
 以上の諸試験の結果より、本システムのサイロ冷却効果が確認できた。一方で、冷却時間やサイロ内壁での結露発生に留意すべきことが明らかとなった。

キーワード:カントリーエレベータ、穀温、サイロ貯蔵、サイロ冷却システム

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47巻3号(2016.09)

  • 研究論文
  • 日本における温室暖冷房用蓄熱型ヒートポンプシステムの発揮性能計算
  • 奥島里美・デイビッド R. ミアーズ・佐瀬勘紀・髙倉直・森山英樹・古野伸典・石井雅久

 地下熱源と蓄熱用の2つの水槽(暖房用の温水槽と冷房用の冷水槽)を有するヒートポンプシステムを、地下熱源と暖冷房いずれか専用の水槽1つを有するヒートポンプシステムと比較した。比較的省エネタイプの温室を想定し、日本の4地点でシステムの発揮性能(供給熱量、供給冷熱量、温室閉鎖可能時間)について計算した。その結果、暖房、冷房いずれかに限った場合は両システムともに性能に違いはないが、暖冷房両方に使用した場合、水槽を2つ有するシステムは、温水槽1つのヒートポンプシステム+冷水槽ヒートポンプシステムが発揮する性能とほぼ同程度の性能を1台のヒートポンプシステムで発揮できた。また、地下熱源はないが、大きめの水槽を2つ有するヒートポンプシステムの供給冷熱量は冷房負荷に対して部分的であったが、暖房については冷房設定温度を低めに設定すれば、暖房負荷をほぼあるいは完全に供給することができた。いずれのシステムでも温室を換気せずに閉鎖しておける時間数を伸ばすことができた。

キーワード:ヒートポンプ、地下熱源、温室、暖房負荷、冷房負荷、蓄熱、熱交換器

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  • 研究論文
  • 牛ふん堆肥化を対象とした堆肥脱臭システムの開発-戻し堆肥及び活性汚泥添加による堆肥含有アンモニウム態窒素の安定化-(英文)
  • 田中章浩

 牛ふん堆肥化過程のアンモニアを主成分とした臭気を対象とした堆肥脱臭システムでは、臭気を脱臭槽内で完熟牛ふん堆肥に吸着させることで低減化できる。吸着用の完熟牛ふん堆肥はアンモニアが飽和状態になった時点で新たな材料と交換する必要はあるが、吸着したアンモニアの硝化や有機化を促進し低臭気物質に変換することで、脱臭効果を長時間持続させるとともにアンモニアの再揮散を防ぐことができる。そこで、活性汚泥や戻し牛ふん堆肥をアンモニア吸着堆肥に添加し、硝化や有機化を促進させることを検討した。アンモニアを吸着した牛ふん堆肥に活性汚泥(重量当たり5 %、10 %、20 %)、戻し牛ふん堆肥(重量当たり10 %、20 %、30 %)を添加した処理区と無添加の標準区を比較した結果、全ての区で初期アンモニア態窒素濃度の81.4 %から87.5 %が3日以内に他の窒素形態に変換され減少したが、処理区と標準区の間に有意差は認められなかった。試験開始後3日間のアンモニア酸化速度は、活性汚泥区が一番速く標準区の約3.0倍であった。初期濃度に比較した硝酸態及び亜硝酸態窒素の合計濃度の増加率は、標準区で49日目に134.8 %であったのに対して、活性汚泥添加区及び戻し牛ふん堆肥添加区では14日目で114.7 %から225.3 %と、資材添加による硝化促進効果が見られた。特に、活性汚泥添加区の硝酸・亜硝酸菌の増殖速度は、戻し牛ふん堆肥添加区の約1.3倍と本実験条件で最も硝化促進効果が高かった。また、戻し牛ふん堆肥添加区の硝酸態及び亜硝酸態窒素の合計濃度は、実験開始後21日或いは28日後に減少し有機態窒素に変換された。吸着堆肥を農地還元した場合、吸着アンモニアを有機態窒素に変換することで地下水汚染への影響が緩和されると考えられることから、脱臭用堆肥製造には戻し牛ふん堆肥10 %添加処理が適していた。

キーワード:脱臭、堆肥、アンモニア、硝化、有機化

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47巻4号(2016.12)

  • 研究論文
  • 翼型断面による抗力低減効果を利用した耐候性鉄骨ハウスの開発
  • 金南昔・植松康

 本研究では、構造物に作用する風圧・風力の分布や大きさが構造物の形状に大きく依存するという性質を利用し、断面形状を従来の円弧型や切妻型ではなく、「翼型」とすることで抗力低減を図り、大スパンにも拘わらず耐風性に優れた鉄骨ハウスの開発を目的としている。
 まず、植松ら(2004)による既往の風洞実験結果との比較により、適切な数値流体計算モデルを明らかにした。次に、断面形状を規定する幾何学的パラメータを設定し、それらを広範囲に変化させ、各パラメータがハウスの風力特性(特に抗力係数)に及ぼす影響を数値流体計算によって明らかにした。さらに、その結果に基づき、内部での作業性や実用性も考慮し、抗力低減の観点から最適な断面形を提案した。なお、ここで想定した風向は妻面に平行な風向である。最後に、提案された断面形を有するモデル(スパン20 m、桁行長さ60 m)に対して数値流体計算と風洞実験を行い、断面形を翼型とすることによる抗力低減効果を検証した。

キーワード:鉄骨ハウス、風洞実験、数値流体計算、翼型断面、風荷重低減、抗力係数

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  • 研究論文
  • 施設栽培の閉鎖型環境管理における風速と高相対湿度がキュウリの生育と水利用効率に与える影響
  • 梅田大樹・鈴木真実・岩﨑泰永・松尾誠治・杉原敏昭・澁澤栄

 閉鎖型環境管理において水利用効率の高い栽培方法を確立するための基礎的な知見を得ることを目的として、相対湿度が高い条件における風速制御がキュウリ幼植物の光合成と水利用効率に及ぼす影響について調査した。同化箱を用いた栽培を行い、風速条件を3水準(0 m s-1, 0.24 m s-1, 0.66 m s-1)設定したところ、0.24 m s-1区および0.66 m s-1区のキュウリの乾物重は0 m s-1区と比べて有意に増加した。最も乾物生産が増加したのは0.24 m s-1区であり、その際の平均相対湿度は92.1 %であった。また、水利用効率は、0 m s-1区と比べて0.24 m s-1区および0.66 m s-1区が増加した。以上より、閉鎖型環境管理で相対湿度が高い条件において風速を最適に制御することで、水分吸収量を最小限にして、光合成速度を向上できる可能性が示唆された。

キーワード:閉鎖型環境管理、風速制御、相対湿度、光合成速度、水利用効率

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  • ノート
  • GAによる生物生産物資の最適輸送経路の探索
  • 佐竹隆顕・𡈽方享・市川道和・小高和博・阪田治

 生物生産物資の輸送コストの低減を目的とする輸送(配送・集荷)経路の最適化問題に対して、確率的探索・学習・最適化の一手法である遺伝的アルゴリズム(GA)を援用し、輸送コストの中で特に全行程の燃料コストを最少とする最適輸送経路探索のための基本的なシミュレータをC言語により開発した。近年のカーナビゲーション技術の進歩は著しいにも関わらず、実際の流通においては日々異なる配送や集荷といった輸送条件下の燃料コストに厳密に個別対応した輸送はほとんど行われていないのが現状であるため、GAに基づく最適経路探索の有効性の紹介および実用シミュレータ開発の知見を得るために、県単位の広域地域を対象として準備的な輸送経路探索シミュレーションを行った。
 シミュレーションの結果、空荷走行と配送走行では、燃料コストを最少とする輸送経路が異なるとともに、GAによる探索結果の燃料コストの平均値は、比較検討のために行ったランダムサーチ(RS)による同コストの平均値に比べて安価となり、コスト削減効果が認められた。さらに、輸送量が同じ配送走行と集荷走行について解を比較したところ、最適輸送経路は異なっており、開発したシミュレータの燃料コスト削減に向けた機能が十分働いている事が明らかとなった。

キーワード:遺伝的アルゴリズム、組合せ最適化問題、最適輸送経路、通行障害、燃料コスト、配送経路、ランダムサーチ

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