バックナンバー要旨

46巻1号(2015.03)

  • 研究論文
  • 閉鎖型離乳豚舎内の空気中微生物濃度とエアロゾル濃度の関係
  • 名出貴紀・池口厚男・中久保亮・石田三佳・宮崎綾子・鈴木亨・鈴木孝子・髙木道浩

 家畜感染症の発生は畜産業だけではなく地域経済全体に被害を及ぼす。安全な畜産物を生産するうえでも農場のバイオセキュリティーレベルを上げる必要があり、疾病リスク低減のために畜舎内微生物濃度をできるだけ低くする必要がある。そこで、病原性微生物を媒介し、かつリアルタイムで測定可能であるエアロゾルを指標とした空気中微生物濃度の推定法の開発を目指して、閉鎖型離乳豚舎内のエアロゾル濃度と空気中微生物濃度の関係を調査した。また、豚の主要な病原性微生物である豚サーコウイルスⅡ型(PCV2)と豚繁殖・呼吸器障害症候群ウイルス(PRRSV)の遺伝子定量化解析により、エアロゾル濃度と病原性微生物濃度の関係を明らかにした。その結果、エアロゾル濃度と空気中一般生菌数には相関が認められ、特に粒径5.0 μm以上のエアロゾルと正の強い相関が見られた。また、病原性微生物のPCV2は試験期間中いずれの検体においても検出限界以下であった。一方、全粒径のエアロゾル質量濃度が夏季平均の2.75 mg/m3、冬季平均の6.17 mg/m3よりも高濃度(8.33 mg/m3)であったときにPRRSVは空気検体から0.132 TCID50/m3、口腔液から0.138 TCID50/m3が検出され、エアロゾル濃度とPRRSV濃度の間に関連があることが示唆された。

キーワード:エアロゾル、豚サーコウイルスⅡ型(PCV2)、豚繁殖・呼吸器障害症候群ウイルス(PRRSV)、リアルタイムPCR、空気中一般生菌数、閉鎖型畜舎、豚、空気伝播

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  • ノート
  • ナタネ油のディーゼルエンジン利用経過と燃料噴射ノズル汚損状況
  • 金井源太・澁谷幸憲・小綿寿志

 国内において増産が見込まれるナタネ油の多段階利用のため、無変換ナタネ油の燃料利用を目的としたディーゼルエンジン供試試験を行った。簡易な改造を施したディーゼル発電機を用い1 500時間の運転試験を行った前報に引続き、フィルタ類の整備とノズル交換によって前報とあわせて積算運転時間2 600時間(ナタネ油供試2 250時間、軽油供試350時間)まで試験を行った。積算運転時間1 555時間頃から排気に白煙を含み、燃料消費率が増加したが、燃料噴射ノズル交換により復旧し、ノズル汚損が要因と考えられた。2 600時間運転後の分解点検で、シリンダヘッド、吸気弁、排気弁に付着物堆積が認められた。同等の連用の際には注意が必要である。未使用ノズルのナタネ油噴射試験では純正ノズルより改造部品のエルスベット製ノズルの噴霧性が良いことが確認でき、ナタネ油供試試験でも始動性が優れた。内部の汚損が発生しやすい無負荷、低回転条件で、ナタネ油と軽油によるノズル汚損への影響の比較を行った。汚損状態は異なったが、噴霧性の優劣や今後の耐用年数などは判断できなかった。燃料発熱量の違いから、燃料消費率はナタネ油の方が高かった。ナタネ油供試時にオイル中の添加剤成分が多く消費されており、不安定な回転による摩擦の増加が疑われた。

キーワード:ディーゼルエンジン、ナタネ油、SVO、連用試験、ノズル

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46巻2号(2015.06)

  • 研究論文
  • 2酪農場の実態調査による消費電力の可視化法の精度検討
  • 川村英輔・高柳典宏

 機械化が進んた畜産経営は、電気や化石燃料が必要不可欠であるが、経営内の消費電力量の調査や使用パターンなどを明らかにした報告事例は少ない。また昨今の節電要請を実施するには農家自らが、農場内の消費電力量や消費の傾向などを把握することが重要であるが、正確な計測には時刻毎の消費電力量を計測する専用の計測器が必要である。そこで、農場内の作業毎の消費電力量や時刻帯別の消費電力を簡便に把握するために農場内の機械の種類、台数及び稼働状況などを書き出し、机上で農場内の消費電力量を推定する「消費電力の可視化」を試みるとともに消費電力量を計測できる電源電力アナライザーによりその精度を確認した。調査は、神奈川県内の酪農場について実施した。「消費電力の可視化」により農場内の推計消費電力量を図表にすることで (1) 装置の消費電力と稼働状況、(2) 消費電力量が最大値となる時刻帯、(3) 消費電力量の推計最大値、(4) 消費電力量の時刻毎の傾向を確認することが可能であった。本調査では、電源電力アナライザーで測定した消費電力量の実測値と推計値との比較から、バルク撹拌機及び冷却器の推定消費電力量を負荷率15 %とすることで精度が改善されたが、今後も検討が必要である。

キーワード:消費電力の可視化、酪農場、消費電力量、ピーク、電源電力アナライザー

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  • 研究論文
  • 食品性状評価のための超音波断層画像解析に基づく食品内部硬軟分布推定
  • 阪田治・二村真弘・鈴木裕・佐竹隆顕

 食品のおいしさを評価する上で、食感や歯ごたえの客観的方法による計測ができれば、それは有効な手段となる。今日では、食感や歯ごたえの違いを生む食品のテクスチャーを物理的に調べる複数の技術が考案され、実用化されているものも多い。しかし、弾性、粘弾性または粘性をもつ食品について、その内部の相対的な硬さの度合いや分布を簡便かつ2次元的に計測・可視化する手段はない。そこで、超音波断層画像処理に基づく、食品内部の硬軟分布を推定・可視化するための手法を提案する。計算機シミュレーションとファントム実験を通して、この手法について紹介する。実験の結果、提案法によって食品内部の相対的な硬軟分布を可視化できる例が示された。

キーワード:弾性食品、粘弾性、食品テクスチャー、硬軟分布、超音波画像、エラストグラフィー

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46巻3号(2015.09)

  • 技術論文
  • 小麦の仕上げ乾燥における除湿通風乾燥機の乾燥効率向上に関する研究
  • 稲葉繁樹・緒方英郎・武藤正明・山岸敏文

 佐賀県における小麦の収穫時期である5月~6月の高湿度環境に対応するため、除湿通風乾燥において 1) ヒータによる加温を実施しつつ、送風機に取り付けたインバータによって空気供給量を減少させ、総消費電力量を従来のものと同等に維持する試験 2) パイプによる一部空気の常温除湿通風乾燥機への環流を実施する試験、を行った。その結果、両方式とも従来型に比べて風量比が低い状況にもかかわらず、高い乾燥速度を得ることができ、エネルギ効率を高める運転が可能であることが確認された。さらに、ビン型サイロの空気流入部分である床下および穀物層上部の温湿度を計測することで、小麦の乾燥状況をリアルタイムで把握できることが確認された。その結果、夜間降雨時において従来型では乾燥が進行しない状況が認められたのに対し、本試験方法では乾燥状態の継続が確かめられた。

キーワード:除湿通風乾燥機、ヒータ、インバータ、環流パイプ、温湿度計測

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46巻4号(2015.12)

  • 研究論文
  • 発酵熱によるソフトバイオマスの乾燥(第1報)-含水率別の熱発生特性と戻し堆肥の添加効果-
  • 横江未央・小島陽一郎・天羽弘一・阿部佳之・小林有一・薬師堂謙一

 市街地、けい畔および法面の雑草など高水分で収集されるソフトバイオマスは、これまで有効な用途がなかったが、水分を下げることにより固形燃料利用などの用途拡大が見込める。そこで本研究では、高水分のソフトバイオマスを資材化し利用を進めるために、家畜ふん堆肥の製造工程で利用される発酵乾燥をソフトバイオマスに適用し、省エネルギーで低コストな乾燥方法を確立することを目的とした。特に本報では、容積11 Lと容積431 Lの反応槽にて雑草を用いた堆肥発酵試験を行い、原料の初期含水率が熱発生特性に与える影響を調べた。加えて熱発生特性や有機物分解率といった堆肥発酵特性を調べ、ソフトバイオマスの堆肥発酵過程における戻し堆肥の添加効果を検討した。その結果、含水率が30 %w.b.以下では平均熱発生速度、温度上昇ともに小さく、発酵熱により乾燥できる含水率は30 %w.b.程度と考えられた。戻し堆肥を添加した区は、無添加区に比べ堆肥発酵初期の温度上昇が早く、有機物分解率が高かったことから、戻し堆肥を添加することで、発酵乾燥に要する日数を短縮できることがわかった。

キーワード:ソフトバイオマス、発酵熱、熱発生速度、有機物分解、戻し堆肥、堆肥発酵

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  • 研究論文
  • 開発途上国の農業機械化促進に有効な技術・知識移転に関する調査研究(英文)
  • 大橋勇一・佐竹隆顕

 JICA(国際協力機構)筑波国際センターでは、1964年から開発途上国の国を代表する行政官や農業技術者対象に農業機械研修を通じた技術協力の一つである人材育成事業を継続的に実施してきた。
 将来の農業機械研修の一層の発展に資する事を目的に、同事業が途上国の農業機械化に対してどの様なインパクトを与えてきたかを検証するため、同事業による研修員の帰国後の活動調査を実施した。複数年にわたる調査の結果、研修員は帰国後、農業機械研修で得た知識・技術の移転活動を行っていることが確認された。この技術移転の波及効果は経過時間・波及度合いにより4つのパターンに類型化され、一定の発現メカニズムを有することがわかった。また、この技術移転活動の過程において農業機械専門家間で知のネットワーク(FMK-net:Farm mechanization knowledge network)が形成されていることが明らかとなった。
 さらに、農業機械研修に協力を得ている中小の農業機械・施設メーカーへの聞き取り調査を行ない、農業機械研修を利活用した海外進出を試みた。結果、農業機械研修を通じた企業とFMK-net連携が、将来的な海外ビジネスを模索する中小メーカーの海外進出に際して有効である事の一端が明らかとなった。また、途上国への新たな技術移転方策としても有用であることが判明した。

キーワード:農業機械研修、知識・技術移転、農業機械研修員間の知的ネットワーク(FMK-net)、海外進出ビジネス

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  • 技術論文
  • 共乾施設に導入された多品目対応型自主検定装置の性能に関する調査研究
  • 𡈽方享・佐竹隆顕

 穀類共同乾燥調製(貯蔵)施設の多くは、搬入された穀類をプール処理することで乾燥調製作業の合理化を図っている。利用者毎の精算は荷受時に採取した試料を個別乾燥後、自主検定装置によって籾すり・粒選別し、その組成割合から各利用者の持ち分を算出することで行われている。
 自主検定装置による測定結果によって、利用者の精算額に影響を及ぼすことからその精度を保つことは重要である。そのような中、近年、多品目に対応できる自主検定装置が新たに開発され実用に供されていることから、当該装置についてその性能の検証を行った。
 その結果、サンプルパック内の目的とする試料の回収率、例えば供試原料中の整粒が整粒パックに回収された割合は玄米および小麦、ならびに大粒大豆においていずれも97%以上であった。また、自主検定装置の秤量・整粒歩合等の精度やふるい分け精度等の検証結果から、当該自主検定装置は従来型の単品目を対象とした自主検定装置精度と概ね等しい精度を示し、実利用上問題のないことが確認された。

キーワード:共乾施設、自主検定装置、プール処理、整粒歩合、ニュートン効率

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