バックナンバー要旨
42巻1号(2011.06)
本論文では、ホールクロップ用飼料イネである水稲品種リーフスターの穂、葉身、稈及び葉鞘(茎)を用い、バイオエタノール原料としての利用性を明らかにすることを目的にイネの粉砕特性、粉砕程度と可溶性糖およびデンプンの抽出量の関係、粉砕エネルギーとデンプン抽出率の関係を検討した。穂、葉身、茎の器官別および未分離(ホール)試料について粉砕特性を検討した結果、粗粉砕、微粉砕ともに器官別試料に比べホール試料において、より小さい粒径の相対粒子量が多かった。器官別に粉砕することに比べホールで粉砕することが、微少粒子形成に効果的であると考えられた。ホール試料の粉砕程度と可溶性糖およびデンプンの抽出量を検討した。可溶性糖抽出量は粉砕方法によらず同程度であり、デンプン抽出量は粒径50~100µmの相対粒子量との関係が認められた。可溶性糖とデンプンの合計抽出量は粉砕程度により異なり、平均粒径が100µm以下の微粉砕試料を最大抽出可能量とした場合、平均粒径が232µmの粗粉砕試料で約88%の抽出率であった。可溶性糖およびデンプンの抽出エネルギー効率は粗粉砕のみを行う方法で最も高かった。
キーワード:稲わら、デンプン、糖化、粉砕、バイオエタノール
大規模堆肥化処理方式の違いが牛ふん尿堆肥の腐植化に及ぼす影響を調べるために、堆積方式と撹拌方式により製造された堆肥から抽出された腐植物質の化学的および光学的特性を比較した。いずれの方式についても、堆肥化に伴うC/N比や易分解有機物質の減少、幼植物発芽試験における腐熟化の進行が認められた。一方、処理方式により、堆肥から抽出された腐植酸の光学的特性が著しく異なり、堆積方式では腐植酸の黒色化とカルボキシル基などの官能基構造の発達を伴う腐植化の進行が顕著であったのに対し、撹拌方式では堆肥化後も未熟でリグニン構造が残存した腐植酸であった。植物の生育に影響を及ぼす可能性がある動的な腐植物質を水抽出して比較したところ、堆積方式ではフルボ酸の増加と腐植化に伴う構造変化が認められたが、撹拌方式ではフルボ酸が減少した。処理方式が異なる堆肥の圃場還元においては、腐植化の違いを考慮した使い分けが必要である。
キーワード:牛ふん尿、堆肥化処理方式、腐熟度、腐植化、腐植酸
約45~85%間の材料含水率が乳牛ふん堆肥化初期過程の温室効果ガス排出量に及ぼす影響を明らかにするために、堆肥化試験装置を用いて一酸化二窒素(N2O)およびメタン(CH4)排出速度を検討した。N2O排出速度は、0~1日目の温度上昇時で約43~50℃と約56~68℃間に2つのピークが観測された。それらのピーク値は材料含水率が低下するほど高くなる傾向を示した。平均CH4排出速度は、材料含水率が約45~74%間の試験区で0.009~0.043mg・h-1・kg-dm-1と極めて低かったが、材料含水率85.1%の試験区では8.52mg・h-1・kg-dm-1と高いレベルで観測された。N2OとCH4排出量を二酸化炭素換算した温室効果ガス排出量は、材料含水率が55.1、60.8、65.4、73.4%の4つの試験区で他の含水率と比べて少なかった。それゆえ、55~74%程度の材料含水率に調整することで、堆肥化初期過程の温室効果ガス排出量を抑制させる効果がある。
キーワード:堆肥化、含水率、一酸化二窒素(N2O)排出速度、メタン(CH4)排出速度、二酸化炭素(CO2)排出速度、酸素(O2)消費速度
42巻2号(2011.09)
本研究では牛ふんに混合する副資材の種類が堆肥化過程における発酵熱の発生と回収に及ぼす影響を調査するとともに、吸引通気式堆肥化システムによる発酵熱利用の可能性を検討した。その結果、430 Lの発酵槽で28日間の堆肥化を行い、その期間に排気により回収可能な熱量が明らかになった。具体的には一般的な4種類の副資材に加え、未・低利用資材である廃農業用ロックウールおよび廃菌床を牛ふんと混合して堆肥化を行ったところ、堆肥化過程で回収できた熱量は229~601 MJ・m-3であり、そのうち利用可能なエネルギ(エクセルギ)は90~162 MJ・m-3であった。堆肥からの現物あたりの回収熱量は、直接燃焼による回収熱量の13 %であった。
キーワード:吸引通気式堆肥化、副資材、熱回収、エクセルギ、廃農業用ロックウール、廃菌床
積雪寒冷地域の地中伝熱量の実態を把握するため、栽培品目、栽培条件の異なる3種類の園芸用施設を対象に調査を行った。その結果、同じ日射量の条件であっても、栽培品目によって地中伝熱量の日推移が大きく異なることが明らかとなった。バラの溶液栽培のようにハウス床面の全面が茎葉で覆われる条件における夜間の上向き地中伝熱量は、最大でも5 W m-2以下と非常に小さかった。他方、キュウリやオウトウの場合は、昼間の日射に応じた土壌への蓄熱が確認され、夜間の上向き地中伝熱量は最大で20 W m-2を記録した。
地中伝熱量の長期計測の結果、短期計測と同様に栽培条件による違いが確認された。また、日射量が多くなる3月以降において、上向きの地中伝熱量は増加しなかった。ハウス内の植物体の生育が進むことにより地表面に到達する日射量が減少したことが原因と考えられる。
キーワード:吸引通気式堆肥化、副資材、熱回収、エクセルギ、廃農業用ロックウール、廃菌床
第1報にて提案した試算法Ⅰは輸送距離が直線距離と同等であるとの仮定に基づいている。試算法ⅠについてGISを用いて算出した最短道程および時間的最短道程に基づき検証を行い、以下の知見を得た。なお、茨城県について3箇所の収集拠点を仮定してGISにより検討した。
最短道程は直線距離の1.2倍程度、時間的最短道程は1.25~1.35倍程度であることが認められた。
試算法Ⅰに基づく平均輸送距離は、収集量50 ktでは、最短道程の85~115 %、時間的最短道程の92~127 %、100 ktでは88~148 %および94~163 %、200 ktでは107~173 %および118~188 %とGISに基づく平均道程との乖離があり、平均輸送距離を平均道程として用いることは不適当であった。
試算法Ⅰに基づき50 ktの稲わら収集のために輸送用燃料とトラックを準備した場合、GISにより算出された最短道程および時間的最短道程を経路とした際に収集可能な稲わらの量は、最短道程では計画の91.7~106.5 %、時間的最短道程では計画の86.9~103.4 %と収集量のばらつきが認められた。
以上より、試算法Ⅰに基づいた平均輸送距離、輸送用燃料必要量およびトラック必要台数は、過小な見積であることに留意する必要がある。
キーワード:GIS、バイオマス、稲わら、輸送、シミュレーション
42巻3号(2011.12)
第2報により明らかになった試算法Ⅰの試算誤差と影響をふまえて、試算法の精度の向上をめざし、試算モデルの修正と第2報と同様にGISを用いた検証を行い、以下の知見を得た。
試験法Ⅰでは直線距離を道程として扱ったが、試算法Ⅰ-2では最短道程の平均道程を直線距離の1.2倍とし、時間的最短道程では1.3倍とする修正を行った。試算法Ⅰ-2では、収集量50、100、200 ktの場合、最短道程、時間的最短道程ともGISによる平均道程と27 %以上の乖離がみられ、実用には適さないことが示された。
試験法Ⅱ-2では、不均一な圃場分布を反映した試算を行うため、収集拠点を中心とする同心円で区切られた各々のドーナツ状の区内で圃場割合が一定であると仮定し、さらに最短道程の平均道程を直線距離の1.2倍、時間的最短道程は1.3倍とした。試算法Ⅱ-2による平均道程はGISによる結果との乖離は少なく、収集量50、100、200 ktでは、試算に基づき輸送用燃料、トラックを用意すると、最低でも98 %の収集量を確保できた。
なお、本報告にて提案した試算法Ⅱ-2は、任意の地域において試算を行うことが可能であるが、直線距離から道程を算出する定数αについては、対象区の固有の値である可能性がある点と時間的最短道程の定義の妥当性の点に留意する必要がある。
キーワード:GIS、バイオマス、稲わら、輸送、シミュレーション
産業廃棄物として処理されなければならないロックウールの養液栽培用代替培地として、現在最終処分が問題になっているゴミ焼却灰を利用した培地の作製を行い、代替培地としての利用の可能性について検討した。代替培地に用いた材料は下水汚泥焼却灰、木炭粉およびうわ薬で、木炭粉は空隙率を増加させ、含水比の増加を図るために、うわ薬は低温で焼却灰を焼成するために混入し、培地の物理性の違いと栽培による適合性などを調べた。850℃で焼成した配合材料質量比(焼却灰:うわ薬:木炭粉)10:1:3の試料は、含水比60 %前後の水分を保有しながら、圧縮荷重およそ40 Nを示し、試料の取扱いにも十分耐えうる硬さであり、かつ、手でも潰せるほどの硬さであることが分かった。これらの試作培地を用いて行ったロックウールとの比較栽培試験結果から、配合比割合10:1:3の試作培地は生長速度、着果率ではロックウール栽培とほとんど変わらない生育を示した。また、作製した培地は栽培後でも、圧縮荷重およそ40 N、含水費およそ70 %前後と使用前と使用後ではあまり変わらない物性値を示し、再使用の可能性と廃棄の容易さを有していることが分かった。これらのことから、焼却灰に木炭粉とうわ薬を配合して作製した配合比10:1:3の試料はロックウールの代替培地としての利用価値が十分にあるものと思われ、汚泥焼却灰利用の一助にもなり得るものであることが分かった。
キーワード:下水汚泥焼却灰、木炭粉、うわ薬、代替培地、圧縮荷重
コムギ、ビート、サトウキビ廃糖蜜を原料とするバイオエタノール製造時に多量に排出される蒸留廃液について、圃場還元による有効利用のポテンシャルを明らかにするために、作物生産に有効な肥料成分および着色成分などの把握、ポット試験による作物の生育や品質に及ぼす影響の評価などを行った。異なる原料から発生した蒸留廃液には、焼酎蒸留廃液などと同様に作物生育に利用可能な肥料成分が多く含まれ、その濃度と組成には原料の影響が強く反映された。蒸留廃液は易分解性有機物に富み土壌中で速やかに生分解されたが、液体画分には原料および製造工程により特性が異なる着色成分や溶存腐植物質が含まれていた。蒸留廃液を施用したホウレンソウのポット試験では、化学肥料を施用した対照区と比較して、蒸留廃液施用区におけるホウレンソウの地上部および地下部の乾物重や地上部の抗酸化活性に大きな違いは認められなかった。
キーワード:バイオエタノール、蒸留廃液、規格外コムギ、ビート糖液、サトウキビ廃糖蜜、肥料成分、着色成分、溶存腐植物質、圃場還元、ポット試験
稼動中の共同利用型バイオガスプラントで実測したデータをもとにバイオガスプラント運転シミュレーションモデルを構築した。そのモデルを用いてバイオガス利用方式がガスボイラー、コジェネレーター(CHP)および精製圧縮充填装置(精製装置)の場合でのプラント運転時のエネルギー収支について定量的に比較し、効率的なバイオガス利用方法を明らかにした。また、投入した化石エネルギー量および精製時に排出されたオフガス中のメタン量から温室効果ガス排出量を求め、環境に対する負荷について明らかにした。
その結果、乳牛1 000頭分のふん尿を処理するバイオガスプラントでは、エネルギー生産効率が最も良いガス利用方法はCHPを用いた場合であることが明らかとなった。また、温室効果ガス排出量の最も少ないガス利用方法はCHPを用いた場合であり、最も多いのが精製装置を利用した場合であった。産出エネルギー1 GJ当たりの温室効果ガス排出量は、精製装置を利用した場合ではCHPを利用した場合の10倍以上であった。
キーワード:バイオガス、コジェネレーター、精製圧縮充填装置、エネルギー収支、温室効果ガス、共同利用型
本研究では廃菌床の利用性の向上を図る目的で、堆肥化した廃菌床の乳牛ふん堆肥化における副資材としての有効性を検討した。具体的には、430 Lの発酵槽を用いた28日間の堆肥化試験によって、廃菌床の含水率や有機酸濃度などが堆肥化に及ぼす影響を調査した。その結果、廃菌床は好気的環境下では単体でも発酵乾燥が進み、発酵乾燥に必要なエネルギは、火力乾燥で水分を蒸発する場合の19.8 %のエネルギ消費に留まることが明らかになった。さらに副資材として利用する場合、発酵乾燥させた廃菌床は、発酵乾燥させなかった廃菌床に比べて、堆肥化期間の総通気量が57 %と通気性の改善効果が大きく、作物の生育阻害の程度も小さかった。
キーワード:廃菌床、発酵乾燥、副資材利用、有機酸、幼植物の生長
42巻4号(2012.03)
2010年に宮崎県で発生した口蹄疫は甚大な被害をもたらし、埋却地の確保ができずに堆肥、ふん尿や飼料等が残留した。もし、堆肥に口蹄疫ウイルスが残存した場合、切返しによって拡散し、さらなる伝播が懸念される。そこで、切返しによるエアロゾル拡散性状の把握と水の噴霧による抑制方法を検討することを目的とした。
堆肥舎内で発生する粒径が0.3µm以上、0.5µm未満のエアロゾルは108 particles m-3のオーダーで最も濃度が高かった。堆肥舎で発生するエアロゾルの個数濃度に対する堆肥舎からある距離だけ離れた位置の個数濃度の比を無次元濃度とすると、堆肥舎から40m離れるとすべての粒径において無次元濃度は0近くになった。40m以内では、堆肥舎から離れるに従い、無次元濃度は徐々に減少した。また、その無次元濃度の予測式を提示した。噴霧によって90%濃度の低減が可能であることを示した。
キーワード:エアロゾル、堆肥舎、拡散、噴霧、切返し
46頭の肉豚を用い、肥育期においてリジン含量が養分要求量に満たない肥育期用飼料を給与し、発育成績および枝肉から採取したロース部の筋肉内脂肪含量、筋肉中のアミノ酸組成への影響等を検討した。試験は2区とし、対照区は飼料中の蛋白質、リジン含量がそれぞれ14.9%、0.75%、試験区がそれぞれ14.1%、0.52%とした。発育試験は生体重65kgから開始し、110kgを終了とした。
試験の結果、日増体量、飼料要求量は対照区に比べ低リジン給与が劣る傾向が認められた。ロース断面積は対照区に比べ低リジン給与が有意に小さくなった。肉色は対照区に比べ低リジン給与が淡くなる傾向が認められた。ロース部の筋肉内脂肪含量は対照区に比べ低リジン給与が有意に高くなった。特に、ロース部を4分割して調査した筋肉内脂肪は腰部における蓄積が高くなっていた。18種類の構成アミノ酸において、低リジン給与が対照区よりアミノ酸の割合が約10%減少し、区間において有意な差が認められた。総遊離アミノ酸のうち、アスパラギン酸、トレオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニンにおいて、低リジン給与が対照区より低下し、有意な差が認められた。背脂肪内層のパルミチン酸、ステアリン酸において、低リジン給与が対照区より有意に増加し、リノール酸において対照区が低リジン給与より有意に減少した。以上のことから、肥育期において日本飼養標準の養分要求量のなかで、リジン水準のみが要求量以下になると、ロース部の筋肉内脂肪含量の蓄積を促進するが、日増体量が低下し、さらに筋肉を構成するアミノ酸組成の蓄積が抑制され、畜産物の品質に影響すること等が明らかになった。
キーワード:豚、低リジン、筋肉内脂肪、増体量、アミノ酸組成
論文
Trichoderma reesei, Aspergilus awamoriおよびSaccharomyces cerevisiaeを用いたSSFによるサゴヤシでん粉抽出残渣からのバイオエタノール生成に関する基礎的研究(英文)
- ショラフィデイン・院多本華夫・佐竹隆顕
インドネシアの1900万haにおよぶ酸性度の高い泥炭地においては適作の考えよりサゴヤシが多く栽培されている。一方、近年の国際的な石油価格の上昇とともにサゴヤシからでん粉を抽出し、それを素材としたバイオエタノール生成プロジェクトが進められている。しかし、インドネシアにおけるサゴヤシからのでん粉抽出効率は十分ではなく、1kgのでん粉を抽出するために約31%のでん粉と約40%の繊維が混在した抽出残渣が乾物で約0.6kg発生し、環境汚染を引き起こしている。
本研究ではこのサゴヤシでん粉抽出残渣よりさらにバイオエタノールを効率よく生成する技術開発に向けて、サゴヤシでん粉抽出残渣の糖化とアルコール発酵を同時に行う平行複発酵技術(SSF)の確立に向けた基礎実験を行った。今回の基礎実験においては、でん粉抽出残渣に含まれるセルロースの分解の促進を目的にセルラーゼの高生産菌であるTrichoderma reesei、およびでん粉のブドウ糖への分解を目的にAspergillus awamori、さらにアルコール発酵のための酵母としてSaccharomyces cerevisiae等の菌を用いて同時糖化発酵を試みた。培養槽中のでん粉抽出残渣濃度が50g/Lの条件の下、Aspergillus awamoriとSaccharomyces cerevisiaeの共培養およびAspergillus awamori、Trichoderma reeseiとSaccharomyces cerevisiaeの共培養によるエタノール生成は各々10.9g/Lおよび10.4g/Lであった。でん粉抽出残渣よりさらに抽出されたでん粉の約88%がエタノール発酵に利用可能であった。一方、Trichoderma reeseiによって生成したセルラーゼの活性が低いことから、エタノールに変換された繊維の割合は約5%のみであった。しかし、実験結果を総合的に検討するとでん粉抽出残渣は良好な発酵基質であると考えられた。
キーワード:サゴヤシでん粉抽出残渣、Aspergillus awamori、Trichoderma reesei、Saccharomyces cerevisiae、共培養、平行複発酵、バイオエタノール
自然冷媒であるCO2をヒートポンプに使用したアイスビルダによる生乳用のプレクーリングシステムを開発し、エネルギー収支、熱効率等を明らかにするため実証試験を行った。開発したシステムは、アイスビルダで氷生成すると同時に廃熱を回収して約85℃の温水を生成できる。温水はミルクラインやバルククーラなどの洗浄に利用できる。栃木県の酪農家2軒に開発システムを導入したところ、熱交換率は約45~79%であり、導入前と比較して年間当たり、エネルギー消費量としては約34~49%、ランニングコストとしては約19~39%、金額では約9~14万円、CO2排出量としては約21~40%の削減効果があることが明らかとなった。
キーワード:生乳、CO2ヒートポンプ、バルククーラ、消費エネルギー、ランニングコスト、CO2排出量
北海道H町において199戸の全ての酪農場を対象に、搾乳関連排水の性状(ふん尿混入の有無など)の聞き取りを行うとともに、最終処理の実態(農場内の排水経路や圃場還元の有無など)を調査し、排水へのふん尿の混入および沈殿槽の有無に着目して、同町の排水処理方法を5種類に分類した。その分類をもとに15戸の酪農場を選んで搾乳関連排水を採取・分析し、同町に適する排水処理対策を検討した。パーラー搾乳であるフリーストール酪農場の約2割からは、ふん尿が混じった搾乳関連排水が排出され、汚濁度は比較的高かった。つなぎ飼いのパイプライン搾乳から生じる搾乳関連排水の汚濁度は比較的低く、複数の沈殿槽を有する事例では排水基準を満たす場合もあった。同町における搾乳関連排水の処理対策としては、高度な浄化処理を行うよりも、まずは排水にふん尿を混ぜない方策が有効であり、その上で複数の沈殿槽を設け、必要に応じて植物浄化などを組み合わせる方法が適していると判断された。
キーワード:牛乳処理室、ミルキングパーラー、酪農雑排水、浄化、酪農場
東北地方太平洋沖地震によって生じた津波によって、東北地方および関東地方の太平洋側を中心に、パイプハウスに甚大な被害が生じた。宮城県下の被災パイプハウスを現地調査し、津波到達状況別に被災特徴を分類した。海岸付近では、津波波力によるパイプハウスの破壊を回避できない。海岸から数kmの距離においても、減勢工がない場合は津波波力もしくは漂流物によるパイプハウスの損壊があり得る。減勢工が機能する場合、もしくはパイプハウス側面に過大な水圧を作用させない場合は、骨組構造の被害を回避できる可能性が高い。ウォーターマークが160cmを示すパイプハウスも、内部への海水の速やかな浸入があれば、アーチパイプの変形を回避できた。これは、津波に限らず洪水対策にも適用可能である。津波が引いた後の塩害および重金属を含む海泥堆積による土壌汚染に関する対策としては、高設ベンチの導入が挙げられる。
キーワード:パイプハウス、東北地方太平洋沖地震、津波、被災特徴、現地調査