バックナンバー要旨
40巻1号(2009.06)
本論文は、日本産の「夢十色」を原料とした生米麺(以後生麺とする)の冷蔵保存が同麺の吸熱特性(DSC)および冷蔵保存した生麺の茹で後(以後茹で麺とする)の動的粘弾性に与える影響について検討した。
その結果、冷蔵保存に伴い、麺のつなぎとして用いた糊化生地の澱粉分子は再配列が生じ、約43℃と61℃で二つの吸熱ピークが見られた。一方、冷蔵していない生麺は生澱粉による一つの吸熱ピークしか見られなかった。また、冷蔵保存1日・2日・4日の茹で麺の貯蔵弾性率と損失弾性率は、冷蔵していない茹で麺に比べ大きい値を示し、生麺の冷蔵保存に伴い硬い食感の茹で麺が形成されると推察された。なお、冷蔵保存1日・2日・4日の生麺の間にはDSCによる吸熱エンタルピーの有意差が認められず、それらの茹で麺の貯蔵弾性率と損失弾性率も明らかな変化が認められなかった。
キーワード:米麺、冷蔵保存、吸熱特性、老化、動的粘弾性
本研究では、Uniform design に基づき、アンモニア水による稲藁の前処理研究を行った。12組の実験を行ったところ、酵素による藁の加水分解率はそれぞれ21.2%~74.2%の範囲であり、リグニンの除去率はそれぞれ12.2%~80.9%の範囲であった。また、23%のアンモニア水を用い、藁とアンモニア水の比率1:25(w/v)、温度170℃が最適な分解条件であった。回帰分析により、本実験の設定範囲において、酵素による藁の加水分解率を想定した各要素との相互関係について検討したところ、酵素による藁の加水分解率とアンモニア水濃度との相関が最も強いことが分かった。また、温度、アンモニア水の用量は糖の生成量と多少の関係を持つことが見られるものの、反応時間、稲藁の粉砕粒度とは関連性がないことがわかった。さらに、酵素による藁の加水分解率に対して、各要素との相乗関係では、明確な相互関係が認められなかった。また、本実験で導かれた最適条件を用いて稲藁のリグニン除去及び酵素による藁の加水分解率を検証したところ、53.7%のリグニンの除去率及び87.1%の糖化率が得られた。
キーワード:稲藁、リグノセルロース、アンモニア水、前処理、リグニン除去、酵素加水分解
天然ガス工業から排出される廃かん水中のアンモニウムイオン(以下、アンモニア)除去について電気化学的処理法を検討した。電気化学的反応において電極材料は反応の方向性、制御、効率に係る重要な役割を担う。電気化学的処理方法によるアンモニアの分解は、塩素発生に寄与している。過剰な塩素の発生によりトリハロメタン(以下、THM)が生成されることから、本研究ではアンモニアが分解されると同時にTHMの生成を制御することを目指し、電極電位配分を陰極側に大きくする条件を用いて、陰極材料の検討を行った。陰極材料にはステンレス、Pt、Cu、C/Cu、Cを用いた。その結果、これまで汎用的に用いられてきたステンレス電極はアンモニア処理の電流効率が23.3%と最も低く、THM生成速度は5.4×10-4mg/L/Cと最も速かった。一方、電流効率が最も高かったのはC/Cu電極の36.9%で、THM生成速度は4.3×10-4mg/L/Cと、ステンレス電極の半分以下に制御することができた。また、全窒素処理でもC/Cu電極が最も良好で、処理時間47分に対し、除去率は87.3%に達した。本研究の結果は、農業排水のアンモニア除去に有用な情報として提供できると考えられる。
キーワード:電気化学的処理、廃かん水、アンモニア、THM抑制、陰極
食品工業廃棄物の利・活用を目的として、豆腐おからやアルコール醸造時に発生したトウモロコシ残渣を用いて納豆菌発酵を行い、発酵物からナットウキナーゼの抽出を試みた。さらに豆腐おから、トウモロコシアルコール発酵残渣および市販納豆から抽出したナットウキナーゼSCR-NK、WDG-NKおよびNatto-NKのフィブリン分解活性を評価した。ナットウキナーゼ抽出条件を検討したところ、0.9 %食塩水375 ml、(NH4)2SO430 g、エタノール:食塩水の比は3:4の時、150 gの市販納豆(湿物)から抽出したナットウキナーゼの量は最も多く、0.108 gであった。乾燥基質重量に基づく計算したナットウキナーゼの収率を検討したところ、豆腐おからからのナットウキナーゼの収率(0.415 g/150 g)は市販の納豆からの収率(0.270 g/150 g)より格段に高かった。4時間のフィブリン加水分解実験をしたところ、発酵した豆腐おから及び発酵したトウモロコシアルコール発酵残渣から抽出したナットウキナーゼSCR-NKとWDG-NKの人工血栓分解面積はほぼ同様の49 mm2であり、この結果は市販納豆から抽出したナットウキナーゼの人工血栓分解面積と一致した。さらにナットウキナーゼ活性を評価したところ、SCR-NKの活性は1.3 FU/mlであり、Natto-NKの活性より高かった。本研究の結果から、豆腐おからはナットウキナーゼ生産の有望な資源となることがわかった。
キーワード:豆腐オカラ、トウモロコシアルコール発酵残渣、ナットウキナーゼ、抽出、フィブリン分解活性
鳥インフルエンザを始めとした人畜共通感染症や口蹄疫などの家畜の疾病は畜産業のみならず地域や国に甚大な被害を及ぼす。これらに対する防疫の概念としてコンパートメンタリゼーションが提唱されているが、我が国では無窓鶏舎のバイオセキュリティーレベルの適応に関してデータや指針はない。一方、病原体の伝播の形態の一つにエアロゾルがあげられ、鶏舎間での伝播や拡散性状を把握する事が非常に重要である。そこで本研究はコンパートメンタリゼーション摘要性の検討のため、汚染質の発生位置、鶏舎間距離による汚染質の鶏舎間伝播や舎外への拡散性状を明らかにすることを目的とした。対象とする鶏舎は横断換気方式の2階立て無窓平飼ブロイラー鶏舎で、風上と風下に位置する2棟の1/20の模型を用い、定常、非等温条件で風洞実験を実施した。比重が空気と同程度のエチレンガスをパッシブスカラーである病原体を含む汚染空気として用いた。
発生量に対する伝播量は10-2のオーダーで、発生源が風上側の建物、かつ1階で、鶏舎間距離が棟高さの4倍である場合が最も伝播量は低く、風下側の建物に伝播しなかった。風下側から発生した場合、汚染空気は風上側の建物にも伝播し、その量は風上側から発生する場合よりも多かった。舎外への拡散量は建物間で多く、風上の建物から風下側に棟高さの6倍の距離を離れると、どの条件でもほぼ同程度の拡散量となった。
キーワード:ブロイラー鶏舎、汚染空気、拡散、伝播、模型、換気、風洞
パッドアンドファン冷房温室の冷却効果について多くの研究がなされ、その効果が確認されている。しかしながら、実際にパッドアンドファン冷房システムを利用した大型温室の空気温度分布、気流速度分布など空気分布特性についての実測・検討例は少ない。そこで本研究では、パプリカを栽培する大型パッドアンドファン冷房温室において室内外気象条件、換気量、室内温度分布、気流速分布などの観測を行い、冷房効果および室内空気分布について検討を行った。
実験期間の晴天日において、パッド冷房実施中の温室内平均気温は28℃以下であり、また実際のパッド冷却効率は0.7-0.8、平均値は0.75であり、パッド冷房効果は比較的良好なものと考えられた。温室内気流速度分布は排気ファンの運転条件によって変化するが、室内気流速度は最大でも1.0 m/sと緩慢であった。温室内には、パッドからファンまでの水平方向および床面から植物群落頂部までの垂直方向共に温度上昇があり、それぞれ、2~5℃、0.8~5℃であった。温室の積算顕熱・潜熱比は外部天候条件に影響され、晴天日において0.6であり、曇天日ではこれより小さかった。
キーワード:温室、パッドアンドファン、冷房、空気温度、気流速度、分布
日本のネットメロンの価格は、その品質により大きく変動する。ネットメロン栽培時のハウス内土壌水分管理は篤農家の熟練技術や経験が必要とされる難しい作業であり、特に砂質土壌の場合はさらに困難となる。
本研究では、篤農家から抽出したノウハウを用いてファジィ制御方式の灌水システムを構築し、ON-OFF制御や篤農家の手動灌水(慣行区)と比較した。実験は、砂質土壌でのハウス栽培について行われた。メロン栽培の生育ステージごとに土壌水分制御の目標範囲を設定した。ファジイ制御区では、日射量、土壌水分、ハウス内温度および大気圧などの環境データに基づくファジィルールにより土壌水分の変化量を予測した。ON-OFF制御区では、土壌水分が目標範囲より下回っているかどうかを灌水の指標とした。慣行区の総灌水量と比較した結果、ファジィ制御区で48.7%、ON-OFF制御区で16.5%という節水率となった。果実糖度と外観等級については、両制御区とも慣行区と同等の結果が得られた。以上により、本研究で開発されたファジィ制御方式では、灌水作業時間の短縮や節水効果などが認められ、ネットメロン栽培に非常に有効であることが示された。
キーワード:ネットメロン、灌水システム、ファジィ制御、On-off制御、節水栽培、ハウス、土壌水分、果実等級、糖度
40巻2号(2009.09)
積雪寒冷地域における暖房負荷と平均暖房負荷係数の実態を明らかにすることを目的に、山形県内の園芸用施設を対象に燃油消費量を調査するとともに、DHとの比較評価を行った。その結果、いずれの施設ともにDHと暖房負荷には有意な正の相関がみられた。また、施設内の地表面が露出している場合では、接辺が負となる回帰直線が得られた。これは、積雪寒冷地域でも昼間の日射により暖房負荷が軽減されたことが原因と考えられる。一方、施設内の地表面が下草や茎葉などで覆われている場合では、概ね原点を通過する回帰直線が得られた。これは、地表面まで日射が到達せず、日射が暖房負荷を軽減する効果が小さかったことが原因と考えられる。熱節減率を加味した平均暖房負荷係数は、DHが大きい長期間の予測に限定すれば、3.5~4.2Wm-2℃-1であった。このため、積雪寒冷地域におけるDHが大きい長期間の燃油消費量を予測する場合、最大暖房負荷時の暖房負荷係数に対する比としては0.6前後を用いた方がより正確であると考えられる。
キーワード:平均暖房負荷係数、燃油消費量、DH、日射、原油高騰
我が国で一般的に用いられている園芸用パイプハウスを対象とし、側壁面(桁行面)に意図的に開口を設けることで風荷重の低減を図ることを提案した。縮尺率1/40の模型を用い、風上および風下側の側壁面に開口を設け、それらの開口率を種々変化させ、境界層乱流中で外圧および内圧の多点同時測定を行った。また、ハウス内の風速測定も併せて行った。
風圧の測定データを用い、LRC(Load Response Correlation)法に基づき等価静的風力係数を算定した。荷重評価に当っては、構造設計上最もクリティカルな荷重効果として、フレームの風上側柱脚部の曲げモーメントに着目した。
実験および解析結果に基づき、側壁面開口部の開口率が、外圧・内圧分布、風力分布、柱脚部の最大曲げモーメント並びにハウス内風速に及ぼす影響を定量的に明らかにした。その結果、開口率を30~50%程度とすることで、最大曲げモーメントが15~20%程度低減することを確認した。その場合、ハウス内風速は外部風速の40%程度になる。
最後に、本研究成果の実構造への応用方法と課題をまとめた。
キーワード:園芸用パイプハウス、構造骨組、風荷重、開口、荷重低減、動的荷重効果、風洞実験
自然換気される隣接する単棟ハウス群(4棟)について、種々の風況における内部微気象の変動をCFD(計算流体力学)により求めた。まず、実測値と3次元シミュレーション結果を比較した結果、両者はよく一致することを示した。次に、定常状態でのシミュレーションにより、種々の風向・風速における換気速度と温度分布の数値計算と解析を行った。その結果、単棟ハウス群に対して1) ハウス外の風向・風速が一定条件の下では、ハウスの換気回数は風向に対する相対位置(風上や風下)に大きく影響されること、2) 対象とするハウスが風上に位置する場合は、ハウス内温度上昇が抑制されること、3) 単棟ハウス群内ハウスの相対位置にもかかわらず、ハウス外風速が1m/s以下の時、浮力効果が換気速度へ重要な影響を及ぼし、同2m/s以上では温度差による浮力効果はほぼ無視でき換気速度はハウス外風速にほぼ比例すること等が明らかになった。
キーワード:ハウス、CFD、微気象、風向、風速、温度分布、換気回数
低炭素/窒素(C/N)比の有機合成廃水を用いて水素発酵の特性と水素・メタン二段発酵法への適用性について実験的に明らかにした。グルコースおよびペプトンを基質とする低C/N比(4.9)合成廃水による連続操作の結果、基質濃度0.5~1.5 %の実験区では水素収率にほとんど差がなく、基質濃度1.5 %で最大の水素生成速度2.13 L/L・dが得られた。しかし基質濃度2.0 %では、水素収率・速度ともに著しく低下した。また合成廃水中の基質は、炭素分のみが選択的に資化され、窒素分はアンモニアに変化しにくいことが示された。得られた増殖・速度パラメータより、水素発酵菌群の活性は高く、酸発酵よりも短いHRT(2.6 h)で操作できることが示され、水素・メタン二段発酵法の低C/N比有機廃水に対する適用性が明らかとなった。
キーワード:水素・メタン二段発酵、廃棄物系バイオマス、低C/N比有機廃水
40巻3号(2009.12)
南西諸島で利用されている防虫網を中心とした糸径0.17~0.29mm、開口比(防虫網の間隔の面積/防虫網の外郭面積)0.25~0.68の範囲にある11種類の防虫網の通気特性を評価した。風洞実験により防虫網の圧力損失と平均風速の関係を求めた結果、網目の間隔の長さが近似しても、開口比が減少すると防虫網の圧力損失が増加した。例えば、開口比が0.82倍になると、圧力損失は1.6倍になった。従って、防虫網を選考する場合は一般的に用いられてきた目合い(格子1つで構成される間隙の一辺の長さ)を基準とするのではなく、開口比を用いなければ比較検討が困難であることが示された。また、圧力損失と開口比の関係は風速ごとに二次関数で示され、糸径やアスペクト比などの諸元が供試網と類似した防虫網については、開口比を用いて通気特性を比較できることが示された。なお、既報の圧力損失係数の予測式の精度について検証した結果、実験値との誤差が20%以上になる場合もあったことから、精度を向上させるには予測式の係数について検討する必要があると考えられた。
キーワード:防虫網、園芸施設、開口比、圧力損失係数
簡易な発酵装置でも可能な含水率管理法により発酵乾燥方式および乳酸発酵方式を併用した食品廃棄物の飼料化について検討した。大学食堂、市内の中学校およびレストランから得られた厨芥を家庭用厨芥リサイクラへ定期的に投入し、反応前期の馴養期間は含水率を40%w.b.、後期の飼料化期間は20%w.b.となるように、必要に応じて加水を行うことにより含水率を管理した。湿度、含水率、pHを測定し養豚用飼料としての栄養成分および安全性について分析を行った。その結果、馴養期間ではpHが5以下となり、飼料化期間中に取扱い性が良好な芳香性のある資材が生成され、一般成分は市販配合飼料および各種リサイクル飼料と同程度であった。また、安全性についても重金属、かび毒、病原性微生物の基準をクリアしていたことから、リサイクル飼料としての利用可能性は高いと考えられた。含水率を20%w.b.に管理することで乾燥に要するコストを低減化し、熱変性のリスクを回避した飼料生産が可能である。ただし、過酸化物価が高かったため、滞留時間や油脂分の早期分解についての検討が必要である。
キーワード:飼料化、食品廃棄物、含水率
重油価格の急騰を受けて、温室栽培においてヒートポンプ暖房が急速に普及してきた。そのため現状では明確な根拠もなく、いくつかの暖房方式が実施されている。その代表的なものが温室内部から集熱する「エコモード」と呼ばれる方式である。本研究では「エコモード」と外気から集熱する通常モードを比較検討した。「エコモード」で消費電力量が40%程度大きいこと、外部の熱負荷が小さくなったときに消費電力に大きな無駄が生じることなどが明らかとなった。熱負荷解析から投入電気エネルギー利用効率は外部集熱が最も大きく、内部集熱では、外室からの集熱がこれに続き、内室からの集熱は電気ヒータ暖房と同じで最も小さく、「エコモード」は後2者の中間になることが判明した。
キーワード:COP、エコモード、省エネ度、内部集熱
本研究では、我が国で一般的に用いられている園芸用パイプハウスを対象とし、一連の風洞実験結果に基づき、卓越開口を有しない所謂「閉鎖型」について、構造骨組設計用外圧係数を提案する。
実験では縮尺率1/40の模型を用い、境界層乱流中で外圧の多点同時測定を行い、詳細な外圧分布を得た。また、外圧の測定データを用い、LRC(Load Response Correlation)法に基づき等価静的外圧係数を算定した。なお、荷重評価に当たっては、構造設計上最もクリティカルな荷重効果として、フレームの風上側柱脚部の曲げモーメントに着目した。
先ず、単体モデルに対して得られた等価静的外圧係数を基に構造骨組設計用外圧係数のモデル化を行った。次に、2ないし3棟の模型を用いた実験を行い、その結果を用いた応答解析に基づき、提案した外圧係数モデルが、複数棟並列して建設されたパイプハウスにも適用できることを確認した。
キーワード:園芸用パイプハウス、閉鎖型、構造骨組用外圧係数、風荷重、動的荷重効果、風洞実験、等価静的外圧係数、LRC法、複数棟並列配置
40巻4号(2010.03)
バイオガスを利用する際には、経済的で効率良い脱硫が求められる。中でも、消化液中の微生物の働きを利用した生物脱硫が有効であると考えられている。しかし、消化液の利用方法についての詳細な検討・比較はなされていない。本報では、小規模実験装置を用いて、脱硫性能が安定的に維持できる消化液の利用方法を反応筒内での気液接触方法(7方式)から検討した。
実験装置には0.24 m3の塩化ビニル製の円筒を用い、内部に接触材を充填可能にした。消化液は、ポンプを用いてノズルから装置内に噴射する構造とした。硫化水素濃度は、脱硫前と脱硫後を濃度計により測定し、脱硫率で効果を評価した。
接触材を充填した方法では高い脱硫率が得られ、スプレー方式を組み合わせることで効果が向上した。消化液の噴射によって発生するより細かいミストを利用することで、接触効率を高めるとともに、接触材表面に効果的な消化液の供給が可能になったことが要因と考えられる。
キーワード:脱硫、バイオガス、スプレー、接触材、消化液
タイ国における酸性低栄養土壌への種々の有機肥料の施布と、メタンガス放出および稲生育と米穀粒について検討した。化学肥料と混合した稲ワラおよび牛糞は、化学肥料単独の施布、化学肥料とコンポスト、グリーンコンポスト(Sesbania rostrata)を混合し施布したものなどに比較して、メタン放出を促進した。最大メタン放出量は、化学肥料と稲ワラを混合して施布したもので認められ、15.2 mg/(m2・h)であった。メタン放出の盛んな時期、白色根と稲の増殖は抑制されなかった。地上の稲バイオマス量および米穀粒量はメタン放出と正の相関を示した。加えて、土壌中の有機物やリン、カリウム、全窒素などの成分は、稲ワラや牛糞を化学肥料と混合施布したもので高く、メタン放出と正の相関を示した。
キーワード:メタン放出、有機肥料、稲生育、米穀粒収量、土壌成分
稲発酵粗飼料(WCS)生産システムの環境側面を定量的に評価するために、ライフサイクルアセスメント手法を用いて温室効果ガス(GHG)排出量を推計するとともに米国産乾草を用いて同等量の可消化養分総量(TDN)を供給する場合のGHG排出量と比較した。千葉県内の生産事例を参考に、代表的な稲WCS生産システムとして移植栽培での作付管理作業および専用収穫機や中型汎用機、大型汎用機を用いた収穫調製作業からなる機械化体系を整理して評価対象システムとした。
作付管理作業に伴うGHG排出量は作業機械の違いの影響は小さく、水田土壌の違いによる湛水由来のCH4の影響が大きかった。収穫調製作業では、作業機械の製造段階の影響が大きく、特に作業面積の少ない中型汎用機の事例ではGHG排出量が大きかった。また、米国産乾草を利用した場合に比べて、移植栽培と専用収穫機、大型汎用機を用いたシステムではGHG排出量が330-620kg-CO2eq/10a程度少ないと推計できた。ただし、泥炭土に分類される水田土壌で稲WCS生産に取組んだ場合や米国産乾草の生産地域や輸送条件が異なる場合には、稲WCS生産に伴うGHG排出量が米国産乾草利用と同程度になる可能性があった。
キーワード:粗飼料、稲ホールクロップサイレージ、輸入乾草、温室効果ガス、ライフサイクル思考、LCA
稲わらからのバイオエタノール生産を念頭に置き、圃場から変換施設に併設される収集拠点までの輸送を想定し、変換効率、稲わら収集量、収集圏に占める圃場の割合が、輸送に要する燃料量や輸送に必要なトラック台数等に与える影響について試算式を基に検討した。
標準的な条件下での試算として、エタノール生産量を15 000kL/年、稲わら1 t(乾物重)当りからのエタノール生産量を0.3 kL、作業日数を53.6日/年、トラックの積載量を2.7 t、収集圏での圃場割合を0.128とした場合、稲わら収集量は50 000t(乾物重)、稲わら1 t(乾物重)当りの輸送に要する燃料量は2.78 L、必要なトラック台数は109.5台、収集圏の半径は19.1 kmとの結果を得た。トラックの総走行距離は稲わら収集量の1.5乗に比例し、圃場割合の0.5乗に反比例するとの結果を得た。また、稲わら1 t当りの燃料量は、稲わら収集量の0.5乗に比例し、圃場割合の0.5乗に反比例するとの結果を得た。
トラック台数は、圃場割合が下がると、稲わら収集量が同じ割合だけ増えた場合でも、より多く必要となるとの結果を得た。
キーワード:バイオマス、稲わら、輸送、シミュレーション
本論文では、日本産ジャポニカ種米の需要拡大に向け、ジャポニカ種米「きらら397」を主原料とし、高アミロース米「夢十色」を副材料として得られたブレンド米粉により試作した米麺の品質変化について比較検討を行った。その結果、高アミロース米の「夢十色」を部分的に併用したブレンド茹で麺の破断応力と破断ひずみは、ジャポニカ種100%の「きらら397」の茹で麺より有意に高い値を示す一方、損失正接は「きらら397」の茹で麺より低い値を示した。即ち、高アミロース米とのブレンド茹で麺は「きらら397」の茹で麺より強固なゲルネットワーク構造を形成しており、その茹で麺物性は大きく改善されることが明らかとなった。また、ブレンド茹で麺の貯蔵弾性率と損失弾性率の上昇速度は、「きらら397」の茹で麺より顕著であり、ブレンド茹で麺は「きらら397」茹で麺より老化が早いことが示された。なお、官能評価において、高アミロースの「夢十色」を部分的に併用したブレンド茹で麺はジャポニカ種100%の「きらら397」より官能的に好まれることが明らかとなった。
キーワード:米麺、高アミロース米、ブレンド、物性
籾殻を粉砕し、その粉砕時間や粉砕前含水率の違いによる粒度分布変化を数値評価する方法について検討した。粉砕時間の経過に伴う粉砕産物の粒度分布変化を図示した結果、時間の経過とともにその分布状態がより粒子径の小さい方向に移動していた。そこで、測定値をRosin-Rammler分布に近似してパラメータを算出、比較したが、分布状態を示すパラメータと粉砕時間との間に規則的な関係は見られなかった。その原因を検討するため100µmより小さな範囲に残る粉末の微細構造を観察したところ、63~100µmの範囲に円柱状の微細構造体が多数存在していることが確認された。それらがRosin-Rammler分布への近似を阻害する一因と思われたため、新たに粉砕産物の重量百分率とふるい網目大きさの積を総和することによる粒度分布評価法を試みた。その結果、粉砕時間の経過に伴う分布状態の変化が数値として包括的に評価可能であることが示された。また、含水率の異なる試料を粉砕した場合、粉砕時間が同じであっても乾燥の進行とともにより細かく粉砕されることが数値的に示された。
キーワード:バイオマスリファイナリー、前処理、粉砕時間、含水率、数値評価