バックナンバー要旨

48巻1号(2017.03)

  • 研究論文
  • 微生物燃料電池におけるステンレス鋼とポリジメチルシロキサンを用いた安価で強度が高いカソードの開発
  • 朝川志帆・池口厚男・山下恭広・横山浩

 微生物燃料電池(Microbial Fuel Cell: MFC)は、排水中の有機物を分解しながら発電するバイオリアクターである。実用化に適している1槽式エアカソードMFCのカソードには高価な素材が使用されている。また、カソードの物理的強度は低く、リアクターの大型化を妨げる一因となっている。畜産排水など高濃度で多量の浮遊物質を含有する農業現場からの排水にMFCを適用させる場合、白金触媒の被毒を防ぐためにカソードをイオン交換膜に接合することが望ましい。そこで本研究は、農業現場での使用が可能な強度が高く作製コストが低い新規の膜接合型カソードの作製を目的とした。既存の膜接合型カソードは、白金触媒を塗布した水素イオン交換膜(ナフィオン膜)にカーボンクロスをナフィオン溶液で接着した構造である。本研究では、安価な素材(セレミオンHSF膜とステンレス鋼メッシュ、ポリジメチルシロキサン)を用いた新規カソードを作製した。1槽式エアカソード型のMFCリアクター(容量125 mL)を作製し、ペプトンを含む人工排水を基質として発電実験をおこなった。その結果、新規カソードを備えたMFCのクーロン効率は23.9~27.7 %であり既存カソードMFC(クーロン効率:5.9~11.1 %)よりも高かった。新規カソードの出力密度は114.4~125.0 W/m2であり、既存カソードの97.6~119.1 W/m2と比較して明らかな差は認められなかった。ポテンショスタットを用いて電気化学的な特性を解析した結果、電極電位の変化に対する応答電流は、2つのカソードにおいてほぼ同等な性能であることが判明した。新規カソードはステンレス鋼メッシュで裏打ちされているために強度が高く、既存カソードと比較して引張り強度が9.3倍であった。新規カソードは既存カソードと比較して作製に必要な材料費が81 %削減される。これらの結果から、今回作製した新規カソードは既存カソードとほぼ同等な電流生産性を保持しながら、材料費の削減とクーロン効率の向上および高い物理的強度を達成できた。

キーワード:微生物燃料電池、資源回収、排水処理、カソード、ステンレス鋼

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  • 研究論文
  • 1槽式微生物燃料電池に使用できるセレミオンHSF膜とカソード複合体の作製条件の検討
  • 大和田麻未・朝川志帆・池口厚男・山下恭広・横山浩

 微生物燃料電池(Microbial fuel cell (MFC))は家畜排せつ物等の有機性廃水から直接電気エネルギーを回収でき、同時に汚水の浄化機能を持つことから農業施設への適用が期待されている。プロトン交換膜を含み空気中の酸素を電子受容体として利用する1槽式MFCで用いられるカソードは、熱圧着により膜と接合して複合体(membrane electrode assembly (MEA))を形成している。ナフィオン膜(デュポン社)は一般的に用いられているプロトン交換膜であるが、高価である。したがって、安価なプロトン交換膜から構成されるMEAの開発が必要である。本研究はナフィオン膜と比較して価格が1/7と安価なセレミオンHSF膜(AGCエンジニアリング社)に着目した。セレミオンHSF膜は2槽式MFCにおいて既に利用実績がある。しかし、セレミオンHSF膜のMEAの作製条件が報告されていないため、1槽式MFCにおける発電性能は解明されていない。そこで本研究はセレミオンHSF膜からなるMEA(セレミオンMEA)の作製が可能な熱圧着条件を明らかにすることを目的とし、既存のナフィオン膜からなるMEAと比較して発電性能を評価した。熱圧着条件の因子および水準は圧力(39、160、390、780 kPa)、圧着温度(室温、50、70、90、110、130 ℃)、圧着時間(1、5、20、40、80分)とした。これらの条件を組み合わせてセレミオンMEAを作製して、圧着条件を選定した。試験は2種類の実験系(水素系試験・微生物試験)で実施した。まず水素系試験では熱圧着条件を絞り込むことを目的として、微生物を添加せずに水素ガスを注入して出力密度を評価した。水素系試験では加える圧力が大きいほどカソードとセレミオンHSF膜の接合は維持された。セレミオンHSF膜は熱に弱く、圧着温度を110 ℃以上にすると膜全体が焦げ出力密度は低下することが判明した。圧着時間においては40分の場合で出力密度が最も高くなり、それ以上の時間をかけると出力密度は低下した。これらの結果から圧力780 kPa、圧着温度50 ℃、圧着時間40分が作製に適した熱圧着条件であると導かれた。次に上記の条件でセレミオンMEAを作製し、人工廃水を用いた微生物試験によりMFCの性能を評価した。セレミオンMEAを用いたMFCの最大出力密度は230 mW/m2であり、ナフィオンMEAを用いたMFC(120 mW/m2)よりも1.9倍高い出力が得られた。セレミオンMEAを用いたMFCの内部抵抗(106~112 Ω)は、ナフィオンMEAを用いたMFCよりも約1/2に減少していた。ポテンショスタットで電極電位を変化させた場合のセレミオンMEAの応答電流もナフィオンMEAよりも高かった。また、セレミオンMEAを用いたMFCの回分培養(7日間)あたりの化学的酸素要求量(chemical oxygen demand (COD))の除去率は84~87 %であり、ナフィオンMEAを用いたMFCは61~80 %であった。これらの結果から低コストな膜であるセレミオンHSF膜を用いて1槽式MFCに適用できるMEAの作製は可能であり、ナフィオンMEAと比較して発電能力と汚水の浄化能力(COD除去率)が同等以上であることが示唆された。

キーワード:微生物燃料電池、エネルギー回収、農業系有機性廃液、水処理、カソード、プロトン交換膜

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  • 技術論文
  • 廃棄乳の酸凝固処理技術の開発
  • 小島陽一郎・室井浩一・永瀧圭一・岡本政続・越井清美・天羽弘一・的場和弘

 本研究では、酪農経営で発生し、排水処理負荷が大きい廃棄乳の処理方法として、加温後、酸を添加することで起こる凝固反応を利用した水処理負荷の低減と、分離された脂肪やたんぱくを含む凝固物の堆肥化について検討した。本研究では、パイロットスケール処理装置の開発とその処理特性の検討(実験1)、および、そこで分離した凝固物の牛ふん尿主体原料との混合堆肥化処理(実験2)について検討した。その結果、実験1では、原料乳の16.8 %が凝固物として分離され、目開き5 mmのふるいで95 %以上が回収可能であった。分離後の上清は、原料乳中の乳脂肪や乳たんぱくの70 %が分離され、CODやBODも50 %以上の除去率であった。実験2では、凝固物を添加することで、堆肥化初期の原料温度が高く推移し、有機物などの分解率が高い傾向があった。凝固物の添加による堆肥化への悪影響はなく、良好に処理することができた。

キーワード:廃棄乳、酸凝固、排水処理負荷、堆肥化

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48巻2号(2017.06)

  • 研究論文
  • サーモグラフィを用いる豚の体表面温度変化の機械学習アプローチによる推定
  • 味藤未冴来・川岸卓司・水谷孝一・善甫啓一・若槻尚斗・久保田祥史

 養豚農家の繁殖作業において、繁殖雌豚の発情を見逃すと重大な損益となる。発情の確認には、多頭の豚を経験に基づき注意深く観察する必要があることから作業者への負担が大きい。定量的な発情確認の手法として先行研究では、この発情は外陰部表面温度の変化をサ-モグラフィを用いて温度計測することで確認できるとされているが、周囲温度などの外部環境の影響を受けやすいことが報告されている。そこで本稿では、サ-モグラフィを用い温度計測し、外陰部の他に臀部の表面温度、室内の温度情報や豚舎外部の気温などの外部環境要素5つを抽出し、これらの影響を除いた外陰部温度を推定する。外陰部温度の推定には機械学留を用いた3つの回帰分析を用い評価した。結果として、外部環境要素としては豚の臀部・豚舎の気温および豚舎の地域の気温を説明変数として用いることで、どの手法においても1.4 ℃以下の誤差で外陰部温度の推定を行うことができた。また本手法により、発情による温度変化を正しく推定することができることが示唆された。

キーワード:豚、サーモグラフィ、発情期推定、機械学習、線形回帰、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク

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  • ノート
  • 平成28年熊本地震による温室の被災事例
  • 森山英樹・奥島里美・石井雅久・土屋遼太

 2016年4月に発生した断層型地震である平成28年(2016年)熊本地震によって、熊本県を中心に一部の温室およびその栽培ベンチが被災した。熊本県において、フェンロー型温室、鉄骨ハウス、鉄骨補強パイプハウスおよび栽培ベンチを調査した。温室では、地震動および地割れによって、柱の傾斜および基礎の不同変位が発生した。2014年2月の大雪被害の際には、温室の屋根に設計荷重以上の積雪荷重が作用し、柱の転倒および屋根の陥没が生じた。一方、今回の震災では設計以上の水平方向の変位による柱の傾斜はみられたものの、軒以上の高さにおける屋根構造の有害な変形は限定的であった。ただし、液状化が発生した場合は谷樋をはじめ桁行方向の部材が大きく変形し、営農継続に多大な支障が発生した。栽培ベンチは、温室構造よりも地震動に対して脆弱であった。

キーワード:熊本地震、災害、温室、栽培ベンチ、柱の傾斜、基礎の不同変位、地震動、地割れ、液状化

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  • ノート
  • ナタネ精選技術と燃料品質の改善
  • 金井源太・澁谷幸憲・小綿寿志

 ナタネの精選の際や低品質粒由来ナタネ油のディーゼルエンジン燃料利用の際の参考情報を提供することを目的に、ナタネベルト選別による低品質粒由来ナタネ油燃料性状調査、活性白土による簡易な油品質の改善手法の有効性の検討、圧縮空気式と振動モーター式の粒径選別機の選別精度比較を行った。
 ベルト選別により得られた低品質粒を搾油、分析し、整粒由来の油と比較したところ、硫黄分、酸化、酸化安定度、リン含量、カルシウムおよびマグネシウム含量、灰分について燃料用ナタネ油の規格(DIN V 51 605)を満さない試料があり、低品質粒由来の方が燃料品質としても劣る結果であった。低品質粒には穂発芽粒や損傷粒などが多く含まれ、種子の皮や芽に含まれる成分が油側に溶出したと推察される。
 そこで、燃料利用が期待される低品質粒由来の油の品質改善のため、活性白土を重量割合で10 %、3時間処理を行ったところ、金属成分は処理前合計441 ppm、処理後に15 ppmまで減り、品質改善が可能であった。
 ベルト選別機を用いない選別方式についての検討では、処理量、ニュートン効率とも圧縮空気式の方が優れる結果となった。なお、要因として考えられる振動モーター式におけるフルイ目の閉塞は、振動モーターの振動方向の変更、振動の強化で解消できる可能性がある。

キーワード:ナタネ、精選、SVO、活性白土、選別機

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48巻3号(2017.09)

  • 研究論文
  • 温室環境における画像処理を用いたコナジラミ体の検出(英文)
  • 有働隼人・中林大樹・水谷孝一・海老原格・若槻尚斗・宇賀博之・久保田健嗣

 本研究の目的は、温室環境における画像処理を用いたコナジラミ体の検出に基づく、コナジラミ類の発生早期検知の実現である。コナジラミはトマト黄化葉巻病などの植物病を媒介する非常に小さな農業害虫の一種である。コナジラミは、その大きさから、人間の手による早期発見が難しい。また、その爆発的な繁殖力から、発生が確認された際には既に繁殖を繰り返してしまっており、農作物への被害が拡大するまで発生に気がつくことができないという大きな問題点がある。仮に、連続的かつ長期的に温室内のコナジラミの発生を監視し、発生を検知して温室の管理者に警告するようなシステムが実現されれば、温室の管理者は、コナジラミによる植物病の被害が拡大する前に農薬の散布などの対策を打つことが出来る。そのためには、農場内のコナジラミの発生を検知するシステムが必要となる。本研究では、カメラによる映像と画像処理アルゴリズムを用いたコナジラミ早期検知システムを提案する。映像からのコナジラミ検出処理には、最適化された空間周波数フィルタ、二値化、テンプレートマッチングを用いた。実際に撮影した葉の上のコナジラミの映像を用いてコナジラミ体検出実験を行った結果、検出率は90.6 %、未検出率は2 %となった。この結果から、提案手法を用いた映像からのコナジラミ体の検出は効果的であることが示された。

キーワード:センシング、画像処理、コナジラミ、モニタリング

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  • 研究論文
  • ポリイタコン酸-ポリビニルアルコール系IPNヒドロゲルを利用した植物育成に関する研究
  • 小林悠・田口絵梨佳・刈込道徳・木村隆夫

 ポリイタコン酸-ポリビニルアルコール系相互侵入高分子網目(IPN)ヒドロゲルを保水材または植物育成用の培地としてカイワレ大根および西洋芝の育成試験を行い、植物の生長に及ぼすIPNヒドロゲルの影響を調査した。IPNヒドロゲルを保水材として利用した試験では、土壌(黒ボク土または岩瀬砂)にIPNヒドロゲルを所定の割合で混合した培地で植物の生長を観察した。土壌に対するIPNヒドロゲルの添加量が増えるほど、カイワレ大根および西洋芝ともに、最大8日間延命させることができた。また、IPNヒドロゲルのみを植物育成用の培地として利用した試験では、IPNヒドロゲルに含まれるイオン種の影響を受けやすく、カルシウムイオンを含有するIPNヒドロゲルで植物の生長が見られた。

キーワード:相互侵入高分子網目(IPN)ヒドロゲル、ポリイタコン酸、ポリビニルアルコール(PVA)、保水材、土壌、培地、カイワレ大根、西洋芝、カルシウムイオン、植物育成

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  • 研究論文
  • カルシウム化合物微粉末を複合化させた生分解性マルチフィルムの試作と評価
  • 何海燕・鈴木里佳・刈込道徳・木村隆夫・丸尾茂明

 生分解性プラスチックにホタテ貝殻由来のカルシウム化合物微粉末や鉱物由来のドロマイト微粉末を改質材として加え、加熱混練機によって混練し、続くホットプレス成形により、数種類の生分解性複合フィルムを調製した。主成分がポリ乳酸とポリブチレンサクシネートから成る“テラマックTP-4071”を母材として選定した。得られたフィルムについて、90日間の加水分解試験および土壌埋設試験を実施した。これらフィルムの重量、媒体の全有機炭素含有量やpH、さらに走査型電子顕微鏡によるフィルム表面形態の経日変化を追跡し、生分解性を評価した。また、異なる改質材による添加効果の有意差を明らかにした。改質材を添加することで、生分解性プラスチックフィルムの分解速度が加速し、媒体に使用した土壌の酸性化の抑制に寄与することがわかった。さらに、改質材の種類や粒子サイズを変えることで、生分解性プラスチックフィルムの分解速度を調整できることもわかった。

キーワード:生分解性脂肪族ポリエステル、ホタテ貝殻、ドロマイト、微砕化、焼成、複合マルチフィルム、加水分解試験、土壌埋設試験

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  • ノート
  • 未利用竹材を用いたセルフビルド可能な農業用ハウス構造の開発(第1報)-三重県熊野市で建設された「熊野バンブーグリーンハウス」の事例-
  • 長野伸悟・小林広英・谷幸次

 農業者が自作できる低コストな農業用ハウスの開発を目的に、三重県熊野市育生町において竹を構造部材に活用した小規模(5×20 m)な農業用ハウス「バンブーグリーンハウス(BGH)」を試作した。建設作業に要する時間は、両屋根型ハウスを模したBGH1号では延べ364時間、アーチ型ハウスを模したBGH2号では延べ267時間であった。竹の乾燥程度や強度のバラツキもあり構造計算による評価は難しいが、建設後47か月以上経過した現在においても大きな損傷は見られない。部材費はいずれのBGH(1 a規模)においても16万円程度と、一般的なパイプハウスの約半分に減じることができた。ハウスの保温性については、冬季において同地点の外気温より日平均気温を2.5 ℃高く維持できることを確認した。
 以上から、今回試作したBGHはパイプハウスより資材費が安価であり、建設作業に関わる人件費やパイプハウスの耐用年数を勘案すると、農業経営上、有意性が認められる。小面積のほ場においても自作可能であることから、中山間地に位置する小集落での営農振興に役立つ可能性があると考えられる。また、地域内の放置竹林を伐採し竹材を調達することで、獣害の低減、里山環境の保全や人工林の保全にも寄与できるものと考えられる。

キーワード:竹、小規模農業用ハウス、セルフビルド、低コスト

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48巻4号(2017.12)

  • 研究論文
  • 堆肥発酵熱を高熱源とするバイナリ発電(英文)
  • 小島陽一郎・飯高佑一・西洋平・中西大・天羽弘一・阿部佳之・遠藤聡

 本研究は、堆肥化過程で発生する発酵熱をバイナリ発電の高熱源として利用するための知見を得るものである。発酵熱の回収は、堆肥の底部から空気を吸引して発酵を促進する吸引通気式堆肥化方式でおこなった。乳牛100頭規模の酪農家に設置された実規模吸引通気式堆肥化システムにバイナリ発電装置を接続して、堆肥化施設で得られた60 ℃程度の発酵排気を高熱源としたときの発電特性を明らかにすることを目的とした。その結果、発電前後で水を加温する施設レイアウトがより発電効率が高く、216 MJ/h(60 kW相当)の発酵排気熱量を用いて、最大で700 W以上の発電が可能であった。堆肥原料切り返し時の温度低下により発電が停止するものの、発電継続時間は堆肥の切り返し間隔3日間で60時間程度であった。

キーワード:バイナリ発電、堆肥発酵熱、牛ふん、エネルギ回収

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  • 研究論文
  • 奈良県の中山間地域におけるパイプハウス形状の調査とタイバーの適正な設置
  • 神川諭・梅本博一

 生産現場には様々な構造のパイプハウスが存在しており、積雪に対する強度について不明な点が多い。このことから、これらパイプハウスに用いられているアーチパイプの形状を調査するとともに、積雪荷重の対策の一つであるタイバーの適正な設置位置について応力解析を行った。各アーチパイプの形状での最大応力が発生した部位は、軒高1.2 mで接地部であり、1.5 mおよび1.8 mで軒部であった。屋根部よりも軒部にタイバーを設置することで最大応力は小さくなった。倒壊荷重は非設置の約2.3倍、屋根部の約1.6倍となり、設置位置はアーチパイプの強度に大きく影響することが分かった。また、アーチパイプに掛かる荷重および部材強度を調査したところ、最大引抜荷重が十分に大きいネジタイプ留め具が有望であった。

キーワード:パイプハウス、アーチパイプ、形状の差異、積雪荷重、応力解析、タイバー、設置位置、留め具

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  • 研究論文
  • 農業機械基盤技術の海外移転に関する考察-地方農業機械・施設メーカーの海外進出の事例研究-
  • 大橋勇一・佐竹隆顕

 本研究は、我が国における次世代の農業資源利用を支える農業機械基盤技術(以下技術)を維持・向上するため、地方農業機械・施設メーカー(以下専門メーカー)が有する技術の海外移転を通じて各メーカーの立地する地域の経済活性化に貢献する海外進出について考察する事を目的とした。最初に専門メーカーが有する強みが、地元主体の労働集約的な「研究開発」・「生産販売」・「雇用」の企業活動のリンクの総体であるネットワークとみなし、先行する専門メーカー経営史等の文献調査を行った。次に海外進出を果たしたメーカー等に各種調査を行い、海外進出事例や、意思決定要因等の情報収集や分析を行った。その結果、専門メーカーの海外進出には、現地生産化による現地従業員への技術移転を通じ、現地でソーシャル・キャピタルを獲得・拡大することが近道であると考えた。これは経営者の海外進出を通じ、進出国へ社会・経済貢献するというイデオロギーを優先した関係合理性の選択が、結果的に国内外での公共的資本獲得へと導くからである。他方、国内事業の空洞化を避けるため、より高度な新しい製品の研究開発や世界販売戦略等、新しい雇用層を創出する知識集約型企業活動への経営構造転換が、地域活性化を生み出す海外進出の一方策であるとの結論を得た。

キーワード:中小農業機械・施設メーカー、農業機械基盤技術、海外進出、ソーシャル・キャピタル、関係合理性、知識集約型企業活動

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